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FLY! /フライ!

原題英語表記プラス原題カタカナ表記というワケの分からない邦題は個人的には大嫌いだ(例:「NOPE/ノープ」)。原題英語orカタカナ表記プラス原題邦訳という邦題も理解できない(例:「PLANET OF THE APES/猿の惑星」)。どちらかでいいと思う。

本作はそうした頭痛が痛い状態の邦題よりもさらにクソなタイトルがつけられている。

原題はMIGRATIONなのに、これではまるで、FLY!が原題のように見えてしまう。原題は全く異なるタイトルなのだから、「FLY!」もしくは「フライ!」で良かったのでは。

勿論、「MIGRATION!/ミグレーション!(orマイグレーション!)」としなかった理由は分かる。国際ニュースを追っている人を除けば、日本人のほとんどはこの言葉を知らないからだ。

また、この言葉の持つ政治的な意味を避けたかったという狙いもあるのだろう。

migrationという言葉単体だと一般的には移住という意味で使われることが多い。本作は越冬のために移住するカモ一家を描いた作品で、こうした渡り鳥などの移動にもmigrationという言葉が使われる。

ニュースでよく耳にする移民という言葉を英訳するとimmigrationとなるが、このimmigrationも広義ではmigrationに含まれる。

本作では米国の地方に棲息していたカモ一家が楽園ジャマイカを目指す途中で人種のるつぼ、ニューヨークに迷い込んだことで多様性を理解し、動物をだまして食用にする人間をこらしめ(この描写、何かで見たのとそっくり)、最終的に楽園にたどり着くが、そこで出会ったペンギン一族を救うために南極に向かうといったところで終わる。

しかも、この鳥たちを騙す人間はジャマイカから連れてきたオウムを監禁していたので、これは奴隷制度というか不法移民が劣悪な環境に閉じ込められてブラック労働をさせられている現状に重ね合わせているのだろう。

そういう意味で非常にリベラルが好きそうな展開となっている。だから、どう考えても、移民差別撤廃、移民政策を進めようというリベラル・左派のプロパガンダ映画だと思う。

なのに、本作はアカデミー長編アニメーション賞にはノミネートされなかった。

まぁ、イルミネーションの長編作品でこれまでに同賞にノミネートされた作品は「怪盗グルーのミニオン危機一発」の1本しかないから、本作がノミネートされなかったとしても何の驚きもないんだけれどね。

基本、イルミネーション作品って個々のシーンは面白いのに全体では睡魔に襲われそうになるくらいテンポの悪い作品が多いんだよね。そりゃ、ノミネートされないよ。

というか、同じイルミネーション作品なら、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」がノミネートされなかった方が謎だ。

それにしても「マリオ」は日本で去年最もヒットした洋画だったのに、それに続くイルミネーションの新作である本作は字幕版の上映館数も少ないし、観客動員数もあまり伸びていないようだ。

米国では何とか興収1億2000万ドルを超えるヒット作品にはなったけれど、スタート時の成績はそんなに大成功というほどではなかったから、日本では当たらないと判断してしまったのだろうか?
それとも、「マリオ」や「ミニオンズ」シリーズに比べると洋画ファンに訴求する作品ではないから、ファミリー層にだけアピールしようと考えたのだろうか?
同じく動物もののファミリー層向けアニメーションの「パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー」が吹替版のみの公開でヒットしたから、パッと見で大人向けに見えない本作は吹替版中心の興行でいいやって思ったのかな?

ところで、予告編ではデスティニーズ・チャイルドの2001年の大ヒット曲“サヴァイヴァー”が使われていたけれど、本編ではオリジナルではなく、サルサ・アレンジのカバー・バージョンだった。ちょっと残念…。個人的には、デスチャ、ソロ含めてビヨンセのキャリアの中で一番好きな曲なんだけれどね。最近の楽曲はあまり良いとは思わない。というか、ビヨンセを評価しないと古臭い考えの老害ネトウヨと思われるから無理して、“すごい!”とか言っている音楽ライターやリスナーってかなりいると思うな。

ちなみに同時上映は「ミニオンズ」シリーズ(「怪盗グルー」シリーズって言った方がいいのか?)の短編作品「ミニオンの月世界」だった。バカバカしいけれど面白かった。ミニオンたちのことを黄色いガキといった差別的な言い方をする男が徹底的に懲らしめられていてある意味ポリコレ作品だなと思った。


《追記》
そういえば、シネコンの入口に日本語吹替版と書いてあったが、自分が見たのは字幕版だぞ。あと、映写も何か雑だった。久しぶりにTOHOシネマズ六本木ヒルズに来たけれど、やっぱり、ここは行きたいと思う劇場ではないね。


それから、「ミニオンの月世界」はそんなに、てんかんを心配するほど点滅する場面はなかったと思うのだが。というか、「FLY! /フライ!」でカモ一家がビルから落下しそうになる場面の方が高所恐怖症の自分には耐えがたかった。







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