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フリー・ガイ

全興連が緊急事態宣言下における映画館の営業自粛要請に反発する声明を5月に発表し、これに芸能関係者や映画ファンが同調して国や東京都に猛反発したことから、“悪者”にされたくない国や東京都は6月以降映画館への自粛要請をやめるようになってしまった。

その結果、延々と緊急事態宣言が続いているにもかかわらず、一時期は感染者が急増したにもかかわらず、それまで新型コロナウイルスの影響で公開延期となっていた作品が続々と公開されるようになり、見たいと思う作品が同じ週に何本も封切られる状況が続くようになってしまった。

映画ファンが使える時間や金は無限ではないから、当然、見たい作品の全てを見ることは不可能だ。しかも、映画館が1日に上映できる回数も限られているから、同じ週に何本も新作が公開されたら1作品あたりの1日の上映回数も減ってしまう。

なので、本作も見る機会をずっと逃していたが、当初予定していた計画が狂って時間に余裕ができたおかげで、やっと鑑賞することができた。

まぁ、年間トップ5に選ぶような作品ではないが、笑えるし、感動するし、映画や音楽などエンタメの知識があればあれば楽しめる作品だから、見て損はなかったと思う。

WOWOWのHollywood Expressなどで本作の抜き映像を見た時は、何かVFXがいかにも合成って感じに見えて、コロナ禍になって、ハリウッドも制作スケジュールに余裕がないのかなって思ったりもしたが、本編を見ると、そんなに違和感はなかった。というか、ゲームの世界の中の話だから、いかにも作りものっぽいVFXでもおかしくないんだよね。

そして、ちょっと感動してしまうラスト・シーンも含めて、何か日本のアニメみたいな展開だなと思った。主人公の童貞っぽいところもアニメっぽいしね。まぁ、作中に渋谷の風景や東京メトロの入口の風景(いかにもな合成)が出てくるってことは、日本のカルチャーに対するリスペクトは多かれ少なかれあるとは思うけれどね。

日本では洋画や洋楽のシェアが減ってしまったので、米エンタメ界はすっかり、中国や韓国に視点を移してしまったと言われて久しいが、こういう作品を見ると、まだまだ、日本に興味を持っている人がいるんだなというのを実感することができる。

ところで、本作は自分がゲームの中のモブキャラだということに気付いてしまった主人公の話だけれど、自分ももしかしたら、そういう存在なんじゃないかって小学生の頃、よく想像したことあったな。

自分が生きている人生はもしかすると、ゲームやコミック、小説など創作物の中の話ではないのか?あるいは、誰かの夢や妄想の中の話で、本体は別にいるのではないのか?ってね…。
まぁ、それだけ、自分の人生がパッとしない。苦しいって小学生の頃から思っていたんだろうね。どちらかといえば、下層に近い生活だったしね。

とりあえず、「LEGOムービー」や「トゥルーマン・ショー」が好きな人はこの作品も気に入るのでは?

そして、何といっても本作の最大の魅力は映画や音楽に関する小ネタが満載なことだ。

「キャプテン・アメリカ」や「ハルク」、「スター・ウォーズ」に関するパロディが出てくるところなんて大爆笑ものだったしね。

まぁ、本作を手掛けている旧フォックス系の20世紀スタジオも、「キャプテン・アメリカ」や「ハルク」などのマーベルも、「スター・ウォーズ」のルーカスも今では同じディズニー傘下だから簡単にパロディをやれるってのはあるけれどね。

音楽ネタでいえば、主人公がアクション中に、工事現場のレッキング・ボールにぶつかりそうになるシーンで、マイリー・サイラスの大ヒット曲“レッキング・ボール”を使うというベタなこともやっていたが、これも音楽の知識がある人なら、大爆笑もののシーンだよねって思った。

そして、音楽ネタといえば、語っておかなくてはならないのが、マライア・キャリーの1995年の大ヒット曲“ファンタジー”だ。
ヒロインの好きな曲として使われているが、本作で改めて聞くと、この曲って、こんなに良い曲だったっけ?って思ってしまうほど使われ方が良いんだよね。
当時はラジオは勿論、テレビのBGMや店頭BGMなど至る所で、この曲が流れていて耳タコ状態だったから、そんなに良い曲には感じなかったんだろうね。

そして、改めて思う。1990年代半ばくらいのマライアってすごいなって。
“ドリームラヴァー”、“ヒーロー”、ニルソンらでおなじみの名曲カバー“ウィズアウト・ユー”などを収録した93年のオリジナル・アルバム『ミュージック・ボックス』。
いまだに、毎年、クリスマス・シーズンになるとリバイバル・ヒットする“恋人たちのクリスマス”などを収録した94年のクリスマス・アルバム『メリー・クリスマス』。
そして、本作に使われた“ファンタジー”をはじめ、2017年にルイス・フォンシ、ダディー・ヤンキー、ジャスティン・ビーバーのコラボ曲“デスパシート”に並ばれ、2019年にリル・ナズ・Xとビリー・レイ・サイラスのコラボ曲“オールド・タウン・ロード”に抜かれるまでは長らく全米チャートで最も首位滞在週数が長い特大ヒット曲だったボーイズⅡメンとのコラボ曲“ワン・スウィート・デイ”、さらに、日本では(特に女性の間では)何故か、“ファンタジー”や“ワン・スウィート・デイ”よりも人気がある“オールウェイズ・ビー・マイ・ベイビー”などを収録した95年のオリジナル・アルバム『デイドリーム』。
さらには、94年にはルーサー・ヴァンドロスとデュエットした名曲“エンドレス・ラヴ”のカバーもヒットしているし、本当、この時期のマライアはすごかったよね…。

98年リリースのベスト盤を除いた日本でヒットしたマライアのスタジオ・アルバムの上位3作品は上から順番に『デイドリーム』、『メリー・クリスマス』、『ミュージック・ボックス』だから、やっぱり、この時期は人気の面でも、楽曲のクオリティの面でもすごかったってことなんだろうね。

《追記》
米国人ってサングラスかけている人が多いイメージだけれど、米国人の間でも、サングラスしている奴は偉そうな連中ってイメージなんだというのが本作を見て分かった。
日本だと、芸能人とか、成り上がり経営者とか、いまだにバブルの時代に取り残された連中とかいった、いずれも自分はすごいと思っている連中がサングラスをかけたがるが、本作でもそれに近いイメージで下層民の主人公たちがグラサン談義していたからね。

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