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ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!

本作は「ミュータント・タートルズ」関連としては7本目となる映画作品だ(このほかにもテレビアニメや配信アニメ、ドラマも作られている)。

一番有名なのは90年代に3作品が作られた実写版シリーズだろうか。

日本での興行成績的には2010年代にマイケル・ベイのプロデュースで作られたリブート版2作品の方が有名かも知れないが。

そして、2000年代には日本では劇場公開されなかったがCGアニメーション映画も発表されている。

本作は、CGや手描き、アメコミ風など様々なアニメーション手法をまじえて作った作品だ。最近では「スパイダーマン:スパイダーバース」シリーズでも採用されているやり方だ。おそらく、今年度の米映画賞のアニメーション部門は「スパイダーバース」シリーズ最新作の「アクロス・ザ・スパイダーバース」と本作のハイブリッド作品同士で争うことになるのではないだろうか。

また、最近の米国のアニメーション映画によくあるポリコレ視点で描かれているのも特徴だ。

ヒロインのエイプリルは黒人の女子高生、しかもメガネっ娘となっている。明らかにリベラル勢が嫌うルッキズム批判に対応した設定変更だ。

また、敵キャラも人間側のボスが女性、ミュータント生物側のボスも黒人っぽい感じになっている。敵も味方も権力を持つのは女性や黒人という描き方にしているのは、白人中年男性をあからさまな悪役にすると今度は白人観客の支持を失うから、だったら、いっそのこと、敵も味方も女性やマイノリティーにしてしまえということなのだろうか。

でも、おばさん虫キャラを気持ち悪いキャラ扱いしているんだから、この作品のポリコレ基準もよく分からないんだけれどね…。

作品自体は最近目立つ1990年代カルチャーのリバイバルという感じだった。NewJeansが中高年に人気というのも背景にはこれがあるしね。

NewJeansの若いファンが中高年男性のファンを性的な目線で見ているだけとか批判しているけれどそんなことはないんだよね。彼等は90年代の洋楽っぽいサウンドや洋画や海外ドラマを彷彿とさせるMVに懐かしさを感じてファンになっているだけなんだよね。ぶっちゃけ、若いファンよりNewJeansの音楽性を理解している。

本作もそんな40〜50代に刺さるような要素を持ったタイプの作品だった。

最初の実写版3部作の2作目の主題歌であるヴァニラ・アイス“Ninja Rap”は当時、コアな音楽ファンにバカにされていたけれど、同曲が本作で再び使われているのは、トレンドが何周かして、この曲が当時の空気感を伝える一曲と認識されたってことなんだろうね。

それ以外にもブラックストリート“No Diggity”とか4ノン・ブロンズ“What's Up?”などリアルタイムでこうした楽曲に接した人ならシンガロングしたくなるヒット曲もたっぷりと使われている。40〜50代にとってはNewJeans同様たまらない作品だと思う。

それから、日本のアニメやカンフー映画に対するリスペクトもかなり強いと思った。「進撃の巨人」に関する言及もあったし、「少林寺三十六房」の一場面も使われていたしね。

また、タートルズの師匠・スプリンター役(というか本作では明確に父親と呼ばれていたが)のボイス・キャストを務めているジャッキー・チェンに対するリスペクトもあった。
バトル・シーンでスプリンターがその辺にある椅子を使って敵と戦うのはジャッキー映画でおなじみの展開だしね。

ポリコレ要素と、ポリコレ要素を嫌う中年が好きなネタ。それをミックスさせた作品という非常にユニークな作品だったと思う。




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