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「永遠の831」が「ジョーカー」になれなかった理由

やっと、WOWOW開局30周年記念の長編アニメ「永遠の831」を見た。

劇場上映も決まっているので、録画したものを放置して映画館で見ることにしようかなとか、とりあえず録画したものを見たうえで改めて映画館でも見ようかなと思ったりもしたが、映画館で見る必要はなくなってしまった。

これは映画館でわざわざ見るような内容の作品ではない。

というか、WOWOWでの再放送だろうと、WOWOWのオンデマンド(配信サービス)だろうと、あるいは、将来、地上波で放送されることになったとしても、二度と見る必要はない作品だと思った。

そもそも、主人公を新聞奨学金制度を利用して大学に通う若者にしているのなら、このタイトルっておかしくないか。
大学の夏休みは一般的には8月31日では終わらないよね。

日本の政治や経済が8月31日に慌てて宿題をする子どもたちのような悪あがきだと言いたい気持ちは分かる。だったら、主人公は高校生でもいいのでは?そもそも、ヒロインは高校生なんだしさ。まぁ、高校生だと新聞奨学生という設定にはできないけれどね。

それに舞台となっている季節はタイトルからも分かるように夏なのに、ヒロインが着ている制服が冬服というのもよく分からない。暑くないのか?
というか、主人公は一瞬、ヒロインを見かけただけで、すぐにその後、ヒロインが通っている高校を探しあてたけれど、制服マニアの変態か?

夏休みの話はこれくらいにして本題に入ろう。

酷いと思った理由は、政治や経済、社会問題に関する言及がネトウヨやパヨクのSNSでのコメントみたいに薄っぺらいと感じたからだ。

主人公を新聞奨学生にしているけれど、本作の制作陣はまともに新聞を読んだことも、ニュースを見たこともないんじゃないのかとしか思えない。

偏った思想の連中によるまとめ記事やSNSをニュースソースにしているのでは?きちんとニュースを見ているのであれば、アナウンサーが“総理官邸”のことを“首相官邸”なんて言わないし、ましてや、事件報道で“目される”なんていう言葉は使わない。一般的には、“みられる”かな。

というか、主張があっち行ったり、こっち行ったりしすぎているんだよね。
つまり、ネトウヨっぽくなったり、パヨクっぽくなったりしていて論点が定まっていない。何が言いたいのだろうか?それって、聞きかじりの政治主張を適当に組み合わせて作ったからなのでは?

いくつか例を出してみよう。

●主人公の過去

スクールカースト上位の同級生の不正行為を指摘
→同級生とその彼女は主人公に対して見逃すように要求
→主人公はそれでも追及
→同級生は不正行為を行ったのは、主人公だと嘘の遺書を残した上で自殺
→主人公が悪者にされ、主人公の無実の主張は聞き入れてもらえない
→おそらく、これが原因で家族に対する陰湿な叱責が続き、父親が自殺

これって、野党のように正義をふりかざして真実を追及するとロクなことにならないぞと言いたいのか?
それとも、不祥事ばかりの与党を追及する野党の方を悪者扱いしている国民をバカな連中と言いたいのか?後者だとパヨクがよく上から目線で主張している内容だけれど。

●ヒロインとその兄の過去

この兄妹の父親は血のつながりはないものの財務官僚とのことだが、この官僚は消費増税をして国民の生活を苦しくさせた張本人としてバッシングされている
→実際は、(きちんと言及されてはいないものの)東日本大震災と思われる災害の復興にあてる予算を捻出しようと尽力していたが、政府が復興予算にあてるべき金をきちんと運用しなかったため、その穴埋めに消費増税をすることになった
→そのミスをごまかすために、政府側の人間が自殺に見せかけて官僚を殺害

震災復興特別税は民主党政権下で、2度の消費増税は安倍政権下で行われたもので、それをごっちゃまぜにしているせいで、視点が定まっていない。
まぁ、一般的に消費増税を批判するのはパヨクが多いから、この描写はパヨク視点なんだろうが、その一方で官僚の死に関して、ヒロインの兄がマスコミ批判のような言及もしていることから、そういう点だけを見ると、マスゴミという言葉が大好きなネトウヨのようにも見える。

●現在と過去の災禍

現在は世界中を襲った大きな災禍からかろうじて免れたばかりの時期という設定のようだ。
これに関しては、百歩譲って、登場人物がマスクをしていないのもよしとしよう。多分、ピークは過ぎたのだろうから。というか、はっきりと新型コロナウイルスとは言っていないので、その災害がウイルス性のものではい可能性もあるしね。

ただ、これと東日本大震災と思われるような災害からの復興の話をごちゃまぜにしてしまったおかげで何が言いたいのか分からなくなってしまっている。

東日本大震災発生時は民主党政権だし、その後、再び自民党が政権に返り咲き、コロナ禍に入った時は第2次安倍政権だった。

それをまぜてしまうと、焦点がぼやけるんだよね。大震災なら大震災。コロナならコロナに絞らないと、日本を舞台にした作品では何が言いたいのか分からない話になってしまう。

●ヒロイン兄の属性

ヒロインの兄は、限りなくテロリストに近い半グレ集団のリーダーらしい。しかも、普段は特殊詐欺で金儲けしているようだ。
政権批判する集団を凶悪な犯罪者集団として描いているのは、政権批判=犯罪と見る非常にウヨ度の高い描写と言わざるをえないと思う。

●テロリストの敵が女性

半グレ集団の標的は女性総理大臣だ。彼女が財務大臣時代にミスしたことに対する怒りがヒロインの兄のテロリスト行為の源となっている。

女性政治家を無能扱いするのは非常にネトウヨ的な思想だが、そうすると、パヨクが好きな女性政治家とパヨクのような政権批判スタンスの者が対決していることになるのだが、内ゲバって言いたいのか?  

それとも、最近、ネトウヨの間では高市マンセーが盛んだから、この女性総理大臣は高市なのか?つまり、パヨク的視点で高市を批判しているということなのか?

●ラスボスは米国

パソナをモデルにしたと思われる人材派遣会社を悪者にしているのはパヨク目線。

そして、その人材派遣会社を儲けさせているのは政府という主張が好きなのもパヨク。

さらに、日本政府や日本の大手企業が米国に操られていると主張したり、米国との関係は不平等だと言いたがるのもパヨクだ。

さんざん、パヨクっぽいのを悪者にしておきながら、ラスボスはパヨクが嫌いな米国ってどういうことだ?

本当、本作の政治的・経済的・社会的メッセージはとっちらかっている。
おそらく、制作陣が知っているというか、ネットで集めた情報を適当に切り貼りしただけなんだろうね。

「ジョーカー」のようなものを作りたかったけれど、制作陣がまともに新聞を読んだことがないから、こんな出来の映画になってしまんだよね。

ハリウッドや韓国と日本の違いはこれなんだよ。アニメだろうと、実写だろうと、きちんと新聞を読まない奴が監督したり、脚本を書いたりしているから、クソみたいな自称社会派作品が乱立するんだよ。左右問わずね。

そもそも、新聞奨学生って最近あまり見かけないよね。
学生側にはあまりメリットがないのでは?
自分の学生時代なんて、新聞奨学生をやっているせいで、つまり、配達が優先なので、ゼミの研修旅行に行けないという同級生がいたしね。何のために学校に通っているんだよって思ったからね。

そういえば、新聞代を払わない連中に政治家がいるとかいう描写も意味不明。そもそも、最近は引き落としがデフォルトだしね。

あと、一見、美談っぽく描いているけれど、配達されるのを家の前で待っている老婆はパワハラだよね。
それから、最近は雨の日は新聞にビニール袋をかぶせて配達するのがデフォルトになっているから、雨が降ってきて配達員が顧客に謝るというケースは少ないと思うのだが。

本当、政治経済のみならず、世の中を知らない連中が作った作品って感じだったな。

《追記》日本アニメにしては珍しくキャラがきちんと動くんだけれど(モブキャラですら)、セルルックだから不自然なんだよね…。まぁ、主人公が時間停止機能を持っているから、主要キャラ以外は止め画のシーンも多いんだけれどね。それは作画を手抜きできる言い訳設定だな。あと、人間でないものに関して時間停止中に動くものと動かないものがあるのは何故?


※画像はWOWOWのホームページより

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