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【学び備忘録】新型コロナウイルスの現状②~PCR検査について~

前回まとめた話

covid-19の最新感染動向を知るために

前回の記事では主に「コロナウイルスやcovid-19とは何なのか?」「最近改正・施行された新型インフルエンザ等対策特別措置法とはどのような法律なのか?」という2点について簡単に触れた。

とかくいろんなニュースや記事が氾濫して、何を元に判断・行動して良いのかが不明瞭になっているように感じる。ここでは様々なその指針となりうる情報が一元的にまとまっているサイトを2つだけご紹介する(もうすでにご存知の方もいるかもしれないが)。

まず1つめは東京都が開設した『新型コロナウイルス感染症対策サイト』。基本東京都内の状況だけではあるが、陽性患者数や検査状況、相談窓口への相談件数などをグラフなどを使って視覚的にわかりやすくまとめている。そのサイト説明部分も引用する。

当サイトは新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) に関する最新情報を提供するために、東京都が開設したものです。
東京都による公式情報と客観的な数値をわかりやすく伝えることで、東京都にお住まいの方や、東京都内に拠点を持つ企業の方、東京都を訪れる方が、現状を把握して適切な対策を取れるようにすることを目的としています。

もう1つは『新型コロナウイルス対策ダッシュボード』。上記の都の対策サイトの開設にも携わった福井県鯖江市のソフトウェアメーカー「jig.jp」の会長さんが作成したものだ。全国でのcovid-19の患者数、感染症病床数、そこから導かれる病床の使用率などを全国・都道府県別にまとめたものだ。

情報が氾濫している世の中において大事なのは、情報量の多さではなく、こうした情報を適切にキュレーション(情報を選んで集めて整理すること。あるいは収集した情報を特定のテーマに沿って編集し、そこに新たな意味や価値を付与する作業。)できているかどうかである。自分1人でこうしたキュレーション作業をするのはかなり難易度が高いので、信憑性の高く、ある程度情報をまとめている情報源をいくつか確保しておくべきだ。

PCR検査とは何か?

僕自身もこのcovid-19の感染拡大で報道が増えるまで『PCR検査』などという単語は恥ずかしながら聞いたことすらなかった。巷では「PCR検査を積極的にしなかったから感染が拡大したのだ!」という批判の声や「意図的にPCR検査をしないで感染状況を隠蔽しているのだ!」という陰謀論めいた話まである。

こうした意見は冷静に検証する必要がある。そもそも論『PCR検査』とは何なのか?国立がん研究センターの「がん情報サービス」の用語集のページを見てみると以下のような説明がある。

遺伝子の検査に用いられる手法の1つで、特定のDNA断片(数百から数千塩基対)だけを選択的に増やして調べやすくするために用いられる遺伝子増幅技術です。例えば、がんに特徴的な遺伝子異常が存在するかどうかを調べる際に、採取したDNAが微量であっても、PCRによりDNA配列を増幅させることで判定が可能となります。

PCRとは『Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)』の頭文字をとっている。より正確に理解するためには「ウイルスって何?」や「そもそも遺伝子やDNAとは何か?」といったことも根気よく学ばねばならない。だがここではごく簡単に(僕も完璧に説明できるほどの知見を持ち合わせていない)。

以下の大幸薬品のサイトがわかりやすく「細菌とウイルスの違い」などを説明している。要点だけかいつまんで言うならば、「ウイルスは細菌と違って単独では増殖できないので、人の細胞に侵入して増殖する」のだ。余談だが、ウイルスはこの自己複製ができないので、厳密な意味では「生物とは言えない」と言う意見が強いらしい(生物の3要件を満たしていない)。

調べて気づいたが「遺伝子とDNAの違い」は中学3年生の理科で習うらしい。適当に勉強していて十数年後に後悔するとは思わなかった。DNAを構成する塩基配列のうち、全てが遺伝情報を伝えるわけではない。DNAの中でも遺伝情報を伝える領域を遺伝子と呼ぶ。

ようやく前提が整った。細菌と違って小さく自己複製できないウイルスは、肉眼で観察できない(細菌であれば、自己増殖が可能なので、寒天培地でコロニー(集落)を形成させるなどの方法を使い、肉眼で観察することが可能らしい)。そんな面倒なウイルスを検出する方法はいくつかあるが、そのうちの1つがPCR検査法だ。

簡単に言えば、ウイルスに含まれる特定の遺伝子を増やして調べる検査方法だ。患者の鼻やのどの粘液などから採ったウイルスから遺伝子を取り出し、試薬とともに検査装置に入れる。遺伝子を増幅させて測定することで、調べたいウイルスの有無を判定する。もう少し詳しく知りたい方は、下記のサイトでぜひ調べてみてほしい。

PCR検査はドンドン増やせない

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写真はistockより

このPCR検査について調べていたら思い出した小話がある。大学時代、友野典男さんの『行動経済学』という本で読んだ話だ。

かかる確率が1万分の1という恐ろしい感染症があったとする。その病気の検査を受けたら、何と陽性との結果が出た。検査は99%の信頼性がある。さて、あなたが実際にこの感染症に感染した確率はどのくらいか?

99%という数字に惑わされてしまうかもしれないが、答えは約1%だ。直観に反している気がしないだろうか?ただし理屈はいたってシンプルだ。かかる確率が1万分の1ということは、100万人いたらこの病気にかかっている人間(感染者)は100人となる。検査の信頼性が99%なので、この感染者100人のうち99人は陽性が陽性と診断される(逆に1人は感染者であるにも関わらず、間違って陰性と診断される)。

だが、同じことは「この病気にかかっていない」人にも言える。100万人から感染者の100人を引いた99万9900人の非感染者に検査をしたら、9999人は間違って陽性と診断される(なぜなら検査の信頼度は99%なので、1%は正しく陰性とならない)。つまり、「この検査で陽性と診断された人間」の数は、「非感染者なのに陽性と診断された9999人」+「感染者で正しく陽性と診断された99人」=10098人となる。

だがこの10098人のうち、「本当に感染している人」は99人しかおらず、その確率は「0.98%」、すなわち1%未満なのだ。この小話を載せている友野さんの本には、次のような進化心理学の言葉が引用されている。

人間は、確率を注意深く計算するようには進化していない。そうしなければならないような差し迫った必要はなかったからだ

大変失礼な話だが、この話を本で読んだ時は「なんだが机上の話だなぁ」と感じていたが、これはコロナウイルス感染のPCR検査で実際に起きている話だ。

上記の文春オンラインの記事にもある通り、現場で新型コロナウイルスと闘っている医師は、PCR検査をどんどん増やすことに軒並み反対だと言う。理由は先ほどの行動経済学の小話にもあったように、「本当は感染していても陰性と出ることがあり、陰性だから安心と勘違いした人が感染を広げる」可能性があるからだ。100%確実な検査など存在しない、という前提をしっかり頭に入れておく必要がある。

記事でも触れている通り、もちろん他にも理由はある。PCR検査のために病院に人が殺到すれば、人が密集した状態が生まれてしまい、病院が大きな感染源となってしまう(ましてや数多ある場所の中で病院がいちばん感染者があつまる可能性が高いのだから)。それに、一口に感染者といっても軽症者から重症者までいるわけで、軽症者が殺到すれば人的リソースや病床をそこに割かざるを得ず、重症者の治療に専念できないといった理由もある。

このBuzzFeed Newsの記事では、感染管理の専門家にインタビューして、もう少し詳しくPCR検査について解説している。行動経済学の小話ではざっくり「検査の信頼性」とまとめていたが、実際に検査の有用性を評価する指標は3つある。『感度』『特異度』『的中率』の3つだ。それぞれ要点をまとめれば以下の通り。

感度:その検査が、陽性の人を正しく陽性と判定できる確率
特異度:その検査が、陰性の人を正しく陰性と判定する確率
的中率:検査が仮に陽性だった場合に、どのくらいその結果が正しいか(=本当に感染しているか)を示す確率

現時点で、covid-19を引き起こすコロナウイルスのPCR検査の感度は、30~50%、高くても70%程度とのことです。なので、仮に感度を70%と想定しても、残りの30%の人は「感染者なのに陰性と判定(=偽陰性)」されてしまうのです。これをむやみやたらにやったら、むしろ感染が拡大しかねません。

上の記事で専門家も言うように、現状PCR検査は「COVID-19であることが臨床的に強く疑われる患者の確定診断のために実施」しているとのこと。

まとめ

前回の記事でも書いたが、「知は力なり」なのだ。最近聞きかじった言葉を乱用して、政府等を批判するのは簡単なのだが、「そもそもその言葉の意味は何か?」「どういう性質のものなのか?」を基礎に立ち戻って学び直すことこそまず大事なはずだ。

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