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英国出身のシューゲイズバンド、bdrmmへのロング・インタビュー

ザ・ビューティフル・サウスやエヴリシング・バット・ザ・ガールなどを生み出した、イギリスはハル出身の5人組bdrmmによるファースト・アルバム『BEDROOM』が、スクール・オブ・セヴン・ベルズやM83らの作品を輩出してきたシューゲイザー系の名門レーベルSonic Cathedralより届けられた。コーラスやフェイザーにより変調されたギターの流麗なアルペジオと、天から降り注ぐオーロラのようなシンセサイザー。幾重にもレイヤーされた儚げなボーカルは、深い森から聴こえてくるような、幻想的な響きをまとっている。ザ・キュアーやエコー&ザ・バニーメン、コクトー・ツインズといったバンドたちの持つサウンドスケープを正しく継承しつつ、それらの要素を絶妙にブレンドすることによって、bdrmmとしてのオリジナリティを獲得している。

* 本稿は、アルバム『BEDROOM』のライナー解説を執筆するにあたり、bdrmmのメンバー5人に行なったメール・インタビューです。文字数の関係もあり、ライナーには全てを掲載することができなかったのですが、今回Tugboat Recordsさんにご理解、ご協力をいただき全文を紹介します。メンバーそれぞれの音楽的バックグラウンドや、歌詞を書く上でのインスピレーション源、使用機材(エフェクター)など様々なことに答えてくれた、6000字超えのロング・インタビューです。

「今はシューゲイズ・シーンに居心地の良さを感じている」(ライアン)

──まずは、みなさんの音楽的なバックグラウンドを教えてもらえますか?

ライアン・スミス(Gt, Vo):最初に好きになったのはレディオヘッドで、今もずっと僕に影響を与えている。そこから掘り下げていく中で、ノイ!のようなバンドに出会い、反復ビートを基軸とするインストゥルメンタル・ミュージック、所謂クラウト・ロックが自分にとって最も重要なジャンルになったね。それからブライアン・イーノとスロウダイヴにもインスパイアされ続けているよ。

ジョー・ヴィッカーズ(Gt):僕もレディオヘッドをはじめ、ペイヴメントやザ・キュアー、エコー&ザ・バニーメン、ソニック・ユース、スリント、ティーンエイジ・ファンクラブ、マジー・スター、ギャラクシー500など80年代〜90年代のオルタナティヴ・ロックをたくさん聴いて育った。最近はダイヴやアイスエイジ、ガール・バンド、ヤックあたりが大好きだね。他にもマッシヴ・アタック、ユーリカ・スペイセク、エイフィックス・ツインなどに影響を受けているよ。

ルーク・アーヴィン(Dr):僕は11歳の頃にドラムと出会い、21歳でバンドを組むまではやったりやらなかったりを繰り返してた。その間、ザ・スミスやザ・キュアー、ニュー・オーダーなどを聴いていたけど、ストーン・ローゼズのレニのドラムを聴いて「こういうドラムが叩きたい!」と初めて思った。未だ彼の足下にも及ばないけどね(笑)。他にドラムスタイルで影響を受けたのは、プロトマーターやスロウダイヴ、ブラック・カントリー・ニュー・ロード、コクトー・ツインズあたりだ。

ジョーダン・スミス(Ba):僕は父親にレディオヘッドやスミス、アークティック・モンキーズなどを聴かされ、それが自分のベースになっていると思う。自発的に音楽を掘るようになってからは、ダスターやスコット・ウォーカー、スリント、ディアハンター、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ジョイ・ディヴィジョン、ボーズ・オブ・カナダ、チャールズ・ミンガスなどを聴き漁り、それが曲作りの基盤になっていると思う。

ダニー・ハル(Syn, Vo):僕はジョーと過去に怪しげなバンドを組んでいて、そのほとんどで「若き怒れるフロントマン」だったよ(笑)。

──バンドのメイン・ソングライターはライアンだそうですが、曲を書き始めたきっかけは?

ライアン:以前、組んでいたバンドで初めて曲を書いたのだけど、その時はボーカル・ブースに入って歌を録る直前に言葉をランダムに並べて紙に書き、それを歌っていただけだった。当時は歌詞よりも曲の方に重きを置いていたのだと思う。bdrmmを結成する頃には、当時よりも様々な経験を積んできたので、もっと意味や価値のある歌詞を書こうと思っているよ。

──bdrmmを結成したときには、何か音楽的なコンセプトは掲げていましたか?

ライアン:特にジャンルを決めて始めたわけでもないし、シューゲイズに特化したバンドにするつもりもなかった。初期のデモを聴くと、今よりももっとエレクトロの要素があったしね。ホームシェイクあたりを意識していたのかもしれない。なので「どんなジャンルの音楽をやっているの?」と聞かれるたびに混乱していたよ。バンドを結成してライブを重ねていくうち、自分たちのサウンドも徐々に進化して、今はシューゲイズ・シーンに居心地の良さを感じている。

ジョーダン:2016年に最初の音源『CRIKE EP』をリリースした頃は、ドラムマシンを流しながらその上でジャム・セッションを繰り広げる、今よりもっとローファイなサウンドだったと思う。その後ルークが加入し生のドラムがアンサンブルに入ったことで、bdrmmの音楽性がグッと広がった。爆音で演奏することと、複雑で緻密なアンサンブルを作ることとの間を行き来する感じだね。

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