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2020年 俺的上半期ベスト・アルバム(その1)

早いもので気づけば2020年も半分が過ぎようとしています。

今年はもう初っ端からいろんな事があり過ぎですが、ありがたいことに音楽は素晴らしい作品が目白押しでした。そんなわけで、今回は上半期ベスト・アルバムを10枚紹介していこうと思います。それぞれの作品につき「まずはこの1曲!」という動画を貼っておきますので、それを聴いて気になった方は是非ともアルバム単位で聴いてみてください。ちなみに順不同です。

● 「Floatr」 Happyness

この作品は以前の日記で詳しく紹介しました。

ロンドンを拠点に活動するJon EE Allan(Vo, Gt, Ba)とAsh Kenazi(Dr)の2人組によるサード・アルバム。動画は今年1月にリリースされた、およそ3年ぶりのシングル「Vegetable」ですが、エリオット・スミス直系の歌声とメロディセンス、そしてダイナソーJr.ばりのギターサウンドに一発でノックアウトされました。アルバムも、時にイールズっぽかったり、時にティーンエイジ・ファンクラブっぽかったり、90年代UKインディ〜USオルタナ野郎のツボを刺激しまくり、捨て曲なしの大傑作です。


● 「Do You Wonder About Me?」 Diet Cig

ダイエット・シグは、2014年9月に米国ニューヨーク州ニューパルツで結成されたアレックス・ルチアーノ(Vo, Gt)とノア・ボウマン(Dr)の男女2人組。ハピネスもそうですが、ボーカル&ギターとドラマーのいわゆる「ホワイト・ストライプス編成」はマイブームなのでしょうか(笑)。ガチャガチャとかき鳴らされるギターと、パンキッシュなリズム、50年代ガールズ・ポップ直系のメロディを、めちゃくちゃキュートな声で歌い上げるという。ザ・プリミティヴズとかヴィヴィアン・ガールズとか好きな人にも響きそうな気がする。あ、あとメロディラインはヴァンパイア・ウィークエンドっぽくも感じました。


● 「925」 Sorry

ロンドンはカムデンを拠点に活動する5人組によるファースト・アルバム。彼らのことは、「ピクシーズの遺伝子」を引き継ぐバンドを紹介した記事でも触れました。

アーシャ・ローレンツとルイス・オブライエンによる男女混成ヴォーカルのオクターヴ・ユニゾンや、スケールアウトしたソリッドかつフリーキーなギター・フレーズがとにかくカッコいい。動画はもろピクシーズですが、例えば「Starstruck」とか、グランジやポストパンク、ヒップホップまでをもごた混ぜにしながら徹底的にクールで最高。特に後半、ブレイクのところ(1:45、2:00、2:40あたり)でアーシャが発する「妙な声」を聴くたびゾクゾクするんですよね。あれ、どうやって出してるんだろう。

● 「BRAT」 NNAMDÏ

ソングライティングはもちろん、プロデュースやレコーディングも全て一人で手掛けるシカゴのマルチ・インストゥルメンタリスト〜シンガー・ソングライターによるセカンド。2017年の『DROOL』も変態チックでなかなか良かったんですが、ここへきて完全に覚醒した感がありますな。冒頭曲「Flowers To My Demons」は、軽やかにかき鳴らされるアコギに導かれ、美しく静謐なウィスパー・ヴォイスでスタートしたかと思いきや、後半では幾何学的なドラミングと多重コーラス、壮大なストリングスがドラマティックに被さるプログレッシヴな珍曲。続く「Gimme Gimme」もどこか不気味なサイケR&Bだし、とにかく一筋縄ではいかない。おそらくフランク・オーシャンやモーゼス・サムニーあたりと比較されるのだろうけど、決して彼らのフォロワーではなく独自の道を突き進んでいて頼もしい。ラスト曲「Salt」も圧巻です。

● 「Fetch The Bolt Cutters」 Fiona Apple

Pichforkで驚きの10点満点を叩き出した、フィオナ・アップルの通算5枚目。フィオナは初期の2枚(『Tidal』と『When The Pawn...』)がとにかく好きで、それは『Tidal』(1996年)ではプレイヤーとして、『When The Pawn...』(1999年)ではプレイヤーおよびアレンジャー、ミックス・エンジニアとして参加していたジョン・ブライオンのセンスがツボ……っていうのも大きいです。なので、最初と最後の曲のみジョンが参加した『Extraordinary Machine』(2005年)や、ジョンが全く関わっていない前作『The Idler Wheel Is...』(2012年)はさほど熱心に聴いてなかったのだけど(もちろん、アベレージは軽く超える作品ではありましたが)、サポート・メンバーをヴェニスビーチの自宅に招き入れ、壁を叩き床を踏み鳴らし、家中のあらゆるものを「楽器」に見立てて(犬の泣き声まで!)レコーディングされたという本作は、フィオナが「神」と崇めるジョン・レノンの『ジョンの魂』を思わせるような、プリミティヴで剥き出しなアンサンブルが胸にグサグサとぶっ刺さります。リズム・セクションの音像やクワイアの配置などは、ブリタニー・ハワードのソロ作も思い出しましたな。

● 「Miss Anthropocene」 Grimes

GarageBandとオールインワン・シンセ1台のみで作った音源をひっさげ、颯爽とデビューを果たしたグライムスことクレア・ヴァルチャーは、その頃から僕にとって特別な存在。日本のアニメやゲーム、テクノロジーにも造詣が深く(上の動画は言うまでもなく『AKIRA』)、ジェンダーもジャンルも表現スタイルをも軽やかに飛び越え、ポップとエクスペリメンタルを行き来しながら活動する姿にいつも惚れ惚れしています。前作『Art Angels』から実に5年ぶりとなる本作は、環境問題をテーマに掲げてこれまでの作風と比べるとグッとテンポを落としてダークかつヘヴィな世界観をより推し進めています。トリップホップやアシッド・フォーク、ボリウッドにドリーム・ポップまでミックスした唯我独尊の境地。そろそろライブ観たいっすね。

● 「The Slow Rush」 Tame Impala

アルバムのリリースは今年2月だからまだ4ヶ月しか経ってないんですね。その間、コロナ騒動やら何やらで色々あったし、他にも素晴らしい作品がどんどん発表されてきたから随分昔のことのように感じる。でも、久しぶりに聴き直したらやっぱり最高。ひたすら「快感原則」に従った音のドラッグ。先だってWONKの新作を僕は「匂い」や「手触り」といった、聴覚以外の感覚を刺激されるサウンド・プロダクションと表現したのだけど、インパラの新作もまさにそんな感じ。

あと、以前僕はTwitterでこんなことも言ってますが、結構いろんなミュージシャンから「我が意を得たり」的な反響をいただきました。

さておきインパラちゃん。2018年のDESERT DAZEで観る予定だったのだけど、突然の嵐のせいでライブが中断しちゃったんですよね。その雪辱をフジロックで果たすつもりだったんだけど……(涙)。早くこのアルバムを大音量で浴びたいです。

● 「color theory」 Soccer Mommy

地元ナッシュヴィルの「Alex The Great」にてレコーディングされたセカンド。おお、どこかで名前を聞いたことがあると思ったら、スワンダイヴやマシュー・スウィート、デヴィッド・ミードなどを手がけた「オルタナ・カントリー」の重鎮ブラッド・ジョーンズがロビン・イートンと設立したスタジオじゃないですか。プロデューサーは前作『Clean』(2018年)に引き続きゲイブ・ワックスで、ミックスはラーズ・スタルフォース。基本ラインは前作の延長線上ですが、渋みが増したソングライティングが印象的。キュートで伸びやかな歌声には、そこはかとなく憂いがあって胸を締めつける。オーガニックなバンド・アンサンブルをサクッとシンプルに録ったように見せかけ、実は凝りに凝った音響的アプローチも聴くたびに発見があって楽しいです。

● 「Swimme」 Tennis

みんな大好きテニスの5枚目。文句なし。こういう、何のてらいもなくいい曲を、いいアレンジといいサウンドで聴かせられるともう言葉を失います。キャロル・キングやカーペンターズを彷彿とさせる「I'll Haunt You」で始まり、急激なテンポチェンジに身悶えする「Need Your Love」へと続き、切ないファルセットとシャッフルビートが心地よい「How To Fogive」へとなだれ込む。ビーチ・ハウスも「かくや」と言わんばかりのキラーチューン「Runner」も、ショートディレイのかかったピアノがビートリーな、ラストを飾る「Matorimony II」と、もう全てが愛おしいです。

● 「Printer's Devil」 Ratboys

シカゴを拠点に活動する4人組によるサード・アルバム。彼らのルーツであるカントリー・ミュージックを、90年代グランジ〜オルタナを通過したパワーポップなアレンジで聴かせているのですが、緩急の付け方やギターの歪み具合、アコギやコーラスの配置の仕方など、とにかくツボを抑えまくってて職人気質を感じます(まだ若そうだけど)。そして何より、ジュリア・ステイナーのちょっと舌足らずな歌い方がとてもキュート。

以上、今回は10枚紹介しました。気力が残っていたらあと10枚また紹介します。前にも思ったけど、最近またギターが「鳴ってる」音楽に気持ちが持っていかれているようです。


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