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2020年7月中旬の読書振り返り

暑いのは嫌い。夏早く過ぎ去って欲しい。そして件の「禍」も一刻も早く過ぎ去って欲しいと願うばかり。

張り切って「一ヶ月を3部作で」いこうと「上旬編」を書いたわけだが、Spotify本が読み辛くて時間を食ってしまい「やべ、中旬編、1冊しか読めないかも」と焦ったがなんとか3冊(+1冊)読むことができました。


Spotify 新しいコンテンツ王国の誕生

リモートワークになって家で音楽を聴きながら仕事をするようになったので、有料会員になったのがSpotify。そのSpotifyの謎に包まれた物語が綴られたこの本を購入し、読んでみた。

センテンスが細切れで、なかなかリズムがつかめず、全然読み進められない状況でしたが、なんとか途中から勢いつけて読み終えることができた。時系列が前後したり、伏線回収曖昧な部分もあって難しい本だったが、あまり表に情報が出てこないSpotifyの創業物語はとても興味深い内容だった。

これまで読んできた創業物語の舞台はほとんどアメリカであり、日本であるので、ヨーロッパのしかもあまり馴染みのないスウェーデンにおけるスタートアップの雰囲気が知れたのも良かった。わりと日米と違うなという印象。

音楽業界とのせめぎ合い、ジョブズとの戦い、ザッカーバーグとの連携などダイナミックかつ痺れる毎日をSpotifyは送っていたんだなと再認識。beatsのフレードリック・ヴィンノーのエピソードが悲しかった。

皇帝たちの中国史

Amazonだと評価高いけど、個人的にはそこまで…という感想。ちょっと前に同じ著者の本を読んでいたということもあり、重複した内容もあり(復習にはなった)物足りなさはある。「皇帝」にもっと焦点当たってるのかと期待してたが、そういうわけでもなく、通史として書かれている気がする。

現在「中国」と呼んでる領域は乾隆帝が征服した新しい地域が多く含まれていて、そこがいろいろ問題になってるわけで、それを知るには清朝に絞った本を読んだ方がいいかもしれない。まぁ清朝は満州族の国家なので清朝の領土=中国というのもアレなんだよなーという想いはこのくらいに…。

著者も評価しているが、僕も清朝皇帝は概ね優秀だし、特に康熙帝が優秀というのは完全に同意。日本では「貞観の治」で有名な李世民が名君として知られるが、総合的に見ると康熙帝の方が優れた統治者のように感じている。

オランダの文豪が見た大正の日本

著者のクペールスは1863年生まれのオランダの文豪。日本ではあまり馴染みが無いが、欧米とくに本国であるオランダでは歴史的な人物であり、その名を冠した博物館や協会など多数。オランダ勲章も2度も授与されるなど非常に評価されている。そのクペールスの最晩年、オランダの新聞社によって依頼された東アジア紀行執筆のために日本を訪れた。1922年春から夏に長崎に降り立ち、そこから東に向かい、東京まで旅をした。時は「大正デモクラシー」の日本。翌年には関東大震災が起きてしまうので、それ以前の各地の様子が細かに描写されているのはとても貴重な気がする。

著者の文章力なのか、訳者の力量なのか、はたまたどちらもなのか、とても文章としては素晴らしい。翻訳本は時に読みにくいこともあるが、この本はそういうことはなく、非常に読みやすい。また、著者の知識が豊富で、日本人の僕でさえ知らなかったような日本の文化、歴史を知っているのは感銘を受けた。一方で、当時の状況としてはやむを得ないのかもしれないが、一部で差別的な言動もある。100年以上前の言動に腹をたててもしょうがないし、当時はそういうものだよなーと思いながら読み進めた。

単に著者が差別主義だったというわけではなく、その根底には「神秘の国 日本」への期待値が高すぎたのも原因なのではないかと思った。文学や能、絵画、工芸、仏教、神道など様々なことを勉強し、知識を身につけ、さらに周囲のジャポニズム的な礼賛を横目で見ながらの来日。期待値は高まりすぎてしまうのはしょうがない。しかし、いざ訪れると「文明開化」真っ最中の過渡期の日本の様子に幻滅し、悪態の一つもついてしまう。著者は日本の古き文化を尊敬し、楽しみにしていたが、当時の日本は急激な西欧化の真っ只中で「上っ面だけの西欧化」にオランダ人著者は辟易してしまったに違いない。そもそも彼は西欧における近代化(物質主義)に嫌悪感を抱いているのだから。理想郷を求めてやってきた日本が、彼が嫌悪する西欧物質主義化(しかも上っ面)した姿をみて幻滅しないわけがない。なんかこれは現代でも思い当たるかもしれないな。

大正時代の日本の様子を率直な物言いで良い部分も悪い部分も書かれた本書は個人的には好きだし、読みやすく、多くの人が興味を持つ分野でないことは承知の上で、おすすめしたいと思う。

丸ごとPOG2020~2021 (週刊Gallop臨時増刊)

久しぶりにPOG本を購入し、時期外れ(2ヶ月ほど遅い)だが選んでみた。その辺については下記note(別垢)に書いてあるので興味のある方は。


今回はここまで。積読もまだあるので、連休を利用して読んでいきたいと思います。

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