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2021年9、10月の読書振り返り

10月1日から7泊8日で西日本行脚してたので、9月分を更新するタイミングを逸してしまい、今回は9月10月まとめて振り返り。今回は社会問題多め。


ラストエンペラー習近平

とにかく中国は地理的に近いので、影響が大きい。とくに経済、軍事の面は要チェックしておかないと思わぬ影響を受ける可能性がある。恒大がもし破綻したら世界経済に大きな影響がありそう。その影響が中国国内でプラスなのかマイナスなのかもわからない。影響の幅も。

対中包囲網を作るアメリカなどの国々、そして中国国内での方向転換(恒大破綻、アリババ締め付けなどなど)。何かと騒がしい習近平中国。そんな中国の政策の特徴、内情、周辺国の反応などがコンパクトにまとまった本書。この内容が全て正しいのか、そうではないのかわからないけど、中国についてはある程度多面的に把握しておく必要があるので、定期的に中国事情についてはキャッチアップしたい。

THE LONELY CENTURY なぜ私たちは「孤独」なのか

いわば新自由主義の真ん中にいる僕だけど、さすがにちょっと危機感を覚えている。ある程度の新自由主義的思想や資本主義自体には賛成なのだが、社会的、公益的な何らかな対応が必要だと感じている。本書第一章に次のような記述がある。

私たちを引き裂こうとする世界で結束するためには、資本主義と公益をもう一度結びつけ、思いやりと協力を中心に据えたコミュニティーをつくり、それを自分とは異なる人たちにも広げる必要がある。

そして「孤独」の問題も個人的には非常に興味のあるテーマ。孤独感から偏った思想、組織に近づいたりする事例は昔から知っていたし、本書でも詳しく書かれている。まだ自分なりの解決策は見つかっていないが、本書を読み終え、危機感持って考えていきたいと改めて感じた。

1995年のエア マックス

タイトルから、90年代中盤のスニーカーブームについて書かれた本かと思ったけど、それだけではなく、90年代中盤のスニーカーブームに至る過程から綴っている。エアジョーダンの誕生からエアマックス、ナイキに対抗する他社の動き、そして現代のスニーカーブームまで。歴史的なスニーカーの名品があちこちに登場するので、スニーカー好きには良いかもしれない。個人的には90年代中盤のことをもう少し書いて欲しかった気も。もっとノスタルジーに浸りたかった笑

日本型新自由主義の破綻: アベノミクスとポスト・コロナの時代

前述の「孤独」の本もそうだけど、ちょっと意識的に反自由主義の本を読んでいる。本書は羽田空港新飛行ルート、新型コロナなどの問題をふまえてアベノミクスを糾弾する内容。いかにアベノミクスは失敗だったか、新自由主義はどんな災厄をもたらしたのかが書き綴られている。

本書を読むとアベノミクス〜菅政権の問題を感じる。そういった指摘をあまり見てこなかったので新鮮というか、視点が広がったような気がする。この40年くらいの新自由主義世界に対して全面的に反対というわけではないが、やはり「いくとこまでいって」しまった気もする。とりあえず「ポスト・コロナ」を考える上で、本書のような視点も必要ではあるなと実感した。

後半の方に引用されていたジョン・ラスキンの一節を載せておく。

生以外に富は存在しない。生というのは、そのなかに愛の力、歓喜の力、讃美の力すべてを包含するものである。最も富裕な国というのは最大多数の高潔にして幸福な人間を養う国、最も富裕な人というのは自分自身の生の機能を極限まで完成させ、その人格と所有物の両方によって、他人の生の上にも最も広く役立つ影響力をもっている人をいうのである。

裏切りの大統領マクロンへ

歴史でド・ゴールを学び、学生時代にミッテラン、シラクを見てた(テレビ等で見てただけだけど)ので、サルコジ、オランド、そしてマクロンの「軽さ」を感じていた。本書はマクロンについてのものだが、軽さや世渡りの巧さなどが全編にわたって書かれている。その政策、立ち振る舞いは某日本の首相にも似た部分を感じた。「僕が失業者なら、すべて他人に頼ったりしないで、自分で戦いますよ」という大臣時代のマクロンの発言はまさに日本の与党。

伝統的に左寄りなフランスにおいて新自由主義的なマクロンは「異質」なのだろうが、フランスの高い失業率などの改善や若さに期待して大統領になったのだろう。しかし失業率、GDPなどの数値に改善は見られない(それはマクロンの前任者サルコジ、オランドにも言えるが)。

まぁとりあえず本書は反マクロンの議員であり、ジャーナリストのリュファン氏によって書かれたもので、その批判は辛辣かつストレート。日本人の僕からすると「これ、ただの悪口じゃん笑」みたいな記述もあり、それはそれで新鮮であった。

アンゲラ・メルケル: 東ドイツの物理学者がヨーロッパの母になるまで

マクロンを読んだからにはメルケルも読まないとなと手に取った一冊。4期16年に渡る長期政権の終わりがいよいよやってきた。ドイツ統一後、コール、シュレーダーと「いかにも男性的」な首相のあとに彗星のごとく「いつの間にか」首相になっていた。僕の印象はそんな感じだ。こんなに長い間政権を担うとは思ってもいなかった。

メルケルについては、その経歴、政策など全く知らなかった。本書を読んで、それらの一端を知ることができた。「調整派」という印象を持っていたが、実際にそうだったっぽいし、一方でコール、シュレーダーを陥れて政権を「奪取」したしたたかさを持っていたのは知らなかった。

ドイツという難しい国を率い、EUの盟主として振る舞った在任期間。山も谷もあったが、総じて安定して統治したのではないだろうか。そんな気はする。ただ、この後のドイツ、EUがどうなっていくのかは多少不安。

ジェネリック医薬品の不都合な真実

ジェネリック医薬品に関するドキュメンタリー。530ページある大容量。本書はジェネリック医薬品の製造における杜撰な工程、嘘が繰り返される現状、官僚的で正しい選択が取れない政府機関、内部告発者の不安な毎日…などなどかなり骨太な内容であった。ボリュームはあるが、ドキドキしながら最後まで順調に読めた。

最後の章を読み終えた時のバッドエンド感は言葉を失う。この本を読んだあとにジェネリックを選択する気持ちには全くなれないし、普段使っている先発品への信頼もかなり揺らいだ。あまりネタバレになるので書かないけど、インド、中国の業者を根本から是正するのは無理だと思うし、けどインド、中国を頼らざるをえない世界になってるのも絶望。読み終えた満足感と、どうにもならない絶望感が入り混じる読後感。

重要証人: ウイグルの強制収容所を逃れて

筆舌に尽くしがたい...酷すぎる...。これが21世紀の出来事というのが信じられない。そして現在も進行形なのが辛すぎる。生々しい描写で読むのが辛い人もいるかもしれないが、知る必要のある出来事だと思った。自分に何ができるのだろうか...と考えさせられた。


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