個人でコーチングを依頼してみました
今年の4月から私はオンラインでコーチングを継続的に受けています。その効果を実感し始めたので、受けてみようと思った背景や、実際に何をやっているかを書き留めておこうと思います。
「一兆ドルコーチ」がベストセラーでエグゼクティブコーチとか流行り始めているようですが、エグゼから一兆光年くらい離れた私のような凡人でも小さな成長を実感してますよ、というお話です。(一般的な「コーチング」の概念からはズレるかもしれません。「ビジネススキルのコーチング」に近いかも。)
なぜ個人でコーチを依頼したいと思ったか
40代半ばともなると、スキルを磨いたり新しいことを学ぶ機会を自分から作りにいかないと、今まで積み上げた実務経験や関係性の価値(資産)を消費して生きていくことになります。
しかも困ったことに、実務経験が通用する期間がどんどん短くなってきたり、もはや不要になっていることすらあります。
私自身が感じていた課題は、「アウトプットの質が上がらないこと」。
仕事上でもいくつか悔しい思いをしながら、「今に見ておれ」と思い、ヤミ練をすることにしました(笑)
なぜ1対1の「コーチ」という手法をとったか。理由は3つあります。
1、今まで集合研修や本やオンラインプログラムや色々やってきたが、自身の課題にヒットしない部分も多く、投下時間の割に得るものが少ないと思い始めたこと。
2、娘が「オンライン勉強進捗管理お兄さん」を始めた効果が見えて、「私もやってみたい」と思ったこと(笑)
3、副業でキャリアコンサルタントを始めたことで、対話の技術を磨く必要性が出てきたこと
さらに、もともと依頼したい人のイメージはあったので、コロナの状況で「もしやオンラインなら時間をもらえるのでは?今がチャンス!」と思い、
アプローチしてみたら快諾いただけた、という次第です。
どうやって依頼したか
面識はあったのでダイレクトメッセージしました。
そのときは「久しぶりに雑談しませんか?」といいつつ、「なぜあなたに相談したいと思ったか」を書きました。
なぜ依頼したいと思ったかの理由は次の5つ。
①自分の課題としていることを、強みとして持っている人(今回でいえば、俯瞰と構造化が得意な人)
②複数の角度から物事を見られる人
③忙しすぎない(なんとなく、アソビがありそうに見える人)
④わからないときに、こちらが「わからない」と素直に言えそうな雰囲気を持っている人(人間関係を上下や権威で見る人の場合、私はどうも萎縮してしまって安心して話せないのです)
⑤リスペクトできる人
(ただ、私の場合はどんな人にもリスペクトできるところを見つけるので、その意味ではこの条件は無いに等しいかもしれません)
どのようにセッションを始めたか
初回と2回目は、自分自身が抱えている課題と「どういう状態になりたいか」を伝えました。
3回目以降は話したいテーマを持ち込み、それに客観的な意見やアドバイスをいただくという形で進めています。
1回につき所要時間は1~1.5時間くらい。今のところ週1ペースで実施しています。
ちなみに、自分の課題を洗い出す作業は気が重くなるので笑
「強み」と「課題」を両方洗い出すようにしたほうがよいです。
例えば私の場合、
「実務の細部には強いが、枝葉の話に入りすぎて俯瞰視点が欠ける」
「着手は早いが、重要かつ緊急度の低い案件が置いてきぼりになりがち」
「思いは強いが、メッセージが構造化されていないので伝わりにくい」
という課題がありました。(社会人1年目みたいなこと言っていてお恥ずかしいですが)
そのため、セッションの中ではこの課題に引き戻すような質問をよくいただきます。例えば
「その要素のつながりはどうなっていますか」
「それは前提条件ですか」
「そもそも課題に置いていたのは何ですか」
「それは全体から見てどのくらいのインパクトですか」
「意思決定に必要な要素はそれで網羅されていますか」
など。
それを自問自答してブラッシュアップできるようにするのが当面の目標です。
とはいえテーマとする話題は幅広く自由にリクエストしていて、
一度など「仕事上で起きたことで怒りが湧いて眠れなかったこと」について、自分でそのときの経緯と「どう捉えたか」を書き出し、話を聞いてもらったことさえありますw(もはやその回はセラピーに近い)
それはそれで「怒りの感情をどうコントロールしてますか?」みたいな話題を話せたので、私としては落ち着いてスッキリするとともに、コーチの守備範囲に感嘆しました。
実際のセッションの流れ
①事前に話したい内容とフィードバック欲しい観点を送る
「疑似提案の壁打ち」がケースとしては多いので、事前に「こんな話を持ち込むので、こんな観点でフィードバックください」と送っています。
例えば「それを初めて聞いたときに、客観的に何を思うか」「違和感や、伝わりにくいところはないか」など。
最初に取り組んだテーマは「市況が変わった中で、事業でどのような戦略をとるべきか」を提案する、というケースでした。
私自身はプレゼン資料の作り方も下手なのですが、このときはそれ以前にストーリー構成の段階で「つながりが見えない」「骨子に関連のない要素が入っている」と2回くらい足踏みしました。
一応の完成をみるまでに5回はかかったでしょうか。普段の業務と違い納期があるわけではないので、続けようと思えば延々とできるわけです。
「次回は新しいテーマに移ってもいいですかね」「そうしましょうか」と言われたときの解放感といったら!笑
コーチは「比喩」が秀逸で、あるときは
「要素はありますが、お客様に出せる状態になっていない。例えば、焼き魚定食だとしたときに、魚はあるのに生焼けである、というような状態ですね」
と評されました。相当凹みましたが、傷つくことはなくむしろ比喩が的確すぎて笑ってしまいました。
②次までのタスクや取り上げるテーマを決める
次に向けて何をするかは、自分自身で設定するようにしています。
コーチはあくまでアドバイスをしてくれるだけなので、指示はしません。
「これが見えるとよいかもしれませんね」「これはもう一段整理したほうがよさそうですね」「こういうアプローチの仕方もあるかもしれませんね」
という感じ。
アドバイスに沿って次にやることを決めることもあるし、それ以外に自分がやるべきと感じたことがあればそれを取り上げることもあります。
このあたりはコーチにとってはもどかしいポイントかもしれません。
(追記:と思っていましたが、もどかしくはないので大丈夫だそうです)
③録画でセッションを振り返る
セッションは録画させてもらっており、翌日には見て振り返るようにしています。録画を見るときは、
・なぜそのタイミングでその質問がされたか(質問の背景を考える)
・質問に対し、自身が答えられているか(ズレて回答していないか)
に注力して見ています。
実はこのことが、「対話の技術」を磨くうえでプラスになっています。
下記の記事を読んだときにとても共感したのですが、それを確認する作業をしているなと思いました。
④振り返りを文章にして送付する
その後、コーチに「何を話したか」と「そこから自分が何を捉えたか」を文章にして伝えるようにしています。
例を2つ上げます。
ひとつめは、5回かかってやっと仕上げた提案の最終回の振り返り。
【何を話したか】
◆聞く人が承認してよいと思える提案のポイントは何か?
・提案の内容に妥当性がある、根拠で裏付けられている
・見立てが妥当である
・ロジックに飛躍がなく辿れる(しっかり考えられていることがわかる)
【そこから自分が何を捉えたか】
・今回の課題進めるにあたり色々な基礎数値にあたりにいったので、自分の中に基準値が入ってきたかなと思います。自分で考えを整理しておくことで、受け身ではなく主体的に対応できると思うので、とても意義のある時間でした!
ふたつめは、怒りの原因を見つめたセラピー回(笑)
【何を話したか】
◆消化不良の出来事について、自分なりに「なぜそう捉えたか」を書き出し、フィードバックをいただいた
<役割の考え方と伝え方>
・「役割」を前提として物事を伝えると杓子定規になりがちなので、相手の状況を汲み取って伝える。
・担当範囲外の業務を受け取ったときに「降りかかってきた」ではなく「新たな経験ができる」価値を得る、と捉えると前向きにできるのでは。
【そこから自分が何を捉えたか】
・「怒り」を感じたときは注意深く感情の起点を観察し、「どの文脈のどの言葉や態度で自分の感情が動いたか」を見ることで、自分の価値観のどこにひっかかったかが見えてきます。ただ決めつける前に、誤解していないかどうかを客観的な視点で確認したいと思っていました。
・という意味で、今回の問題は私が初期に捉えた「当事者意識の欠如の問題」ではなく、「動き方を知らないことの問題」だったことに着地できました。誤解を解消できて解決できる問題だとわかったのでよかったです。
・もう一点、「人に対して怒ったり叱ったりすることができなくても、気に病む必要はない」と思えたことが収穫でした。「これをすれば相手がよりよい状態になる」が見えたときには、アドバイスする形で関わっていこうと思います。
コーチングを受けて変化したこと
①「重要だが緊急ではない」テーマについて考える時間を作れる
②考えたことを壁打ちさせてもらえることで、前進している実感と気持ちの安定を得られる
③いつでも打席にたてる自信がつく
普段の業務とは別に「重要だが緊急ではない」テーマについて考える時間を作れたため、テーマへの自分なりの見解を準備することができているように感じます。
1週間というスパンの中でセッションに持ち込むために頭の中で1割くらいそのテーマを常に考えていて、そのことが普段の業務に対する気づきや違和感をひっかかりやすくしています。
業務上ではその立場や役割ではなかったとしても、考えたいことを考え、壁打ちさせてもらえることでの気持ちの安定を得ることもできています。
普段素振りで練習しているから、いつバッターボックスに呼ばれても立てるよ、むしろ立たせてほしいよ、という感覚になっています^^
効果を最大化するためのポイント
まとめると、当たり前のようですが「準備」と「振り返り」が大事です。
ちなみに、準備の方法として参考にしたのは下記の記事。
これを社会人2年目で自分で考えて始めるとはすごすぎます。(私の社会人2年目はもっとフワフワしてました。20年前にこの記事に出会いたかった)
振り返りについては、「何を捉えたか」「どんな気づきがあったか」を自分の言葉で整理して伝えます。
これがコーチへの最大のお礼だと思っています。
例えばあなたがイベント主催者なら、参加者が満足したか気になるはず。
もし参加者がイベントに出た感想を伝えてくれれば、主催者は「意図通りの体験になったか、ならなかったとしたらどの部分だったか」
と次のイベントのヒントをもらうことになります。それと同じことではないかと思います。
さらに自分のために、「継続的に実施すること」を毎回1点取り上げ、積み上げるようにしています。
それによって、セッションの回を積むごとに「実施すること」が増え、それが習慣化したときに自分のものになったといえると思います。
依頼するときの心構えと落とし穴
忘れていけない心構えとしては、
「自分を変えることができるのは、他の誰でもなく自分自身」ということ。
コーチは鏡のようなものだと思います。
鏡を見ないと自分の姿には気づくことができないので、それを手助けしてくれる存在。化粧をしたつもりなのに、ピエロに見えているかもしれない。
「何が見えて、どう伝わるか」を率直に伝えてくれる存在です。
コーチはアドバイスをくれるので、自分の考えがまとまらないときに依存したくなるときがあります。
一つ思い出すエピソードがあります。
学生のとき、私はスキー部に所属していたのですが、そのときのコーチに言われた「忘れられない一言」があります。
「女子は1本滑り終わった後で、アドバイスをもらうためにコーチのもとに来て待つんだよね。けど男子は1回でも自分の滑走の録画を多くとるために
コーチの前を素通りして次の滑走にいったりする」
これは男女の問題というより、学ぶことに対するスタンスの問題だと思います。
そもそも義務教育から新入社員研修まで「教わるもの」と刷り込まれているので、結構根深く持っています。
「正解を教えてもらえる」という期待は、慎重に避けねばと思っています。
ちなみに今のコーチは「泣き言スルー」という華麗な技をお持ちで
私がまとめきれていない状態でアドバイスが欲しくて途中経過をお伝えすると、
「整理されたもので説明を伺ったほうが良いかもしれませんね」とさらりとかわされることもありました。
それはそれで「せめてコメントもらえるレベルまで考えねば」と奮起したりします。
ということで。
普段から「この人は自分が欲しくて、かつまだ自分が持っていない能力を持っている」 「この人とは安心して話ができそうだ」と思う人がいたら、それは貴重な出会いなので大事するとよいと思います、というお話でした。
「コーチング受けてみたいけど、実際どうなのかな?」と思う方のご参考になれば幸いです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?