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私が見つけた陸上競技の魅力...1つのチケットで2つの席

昨年の12月から、私は日本陸上競技連盟のマーケティングアドバイザーをしている。ミッションの一つが、今年の5月21日に日産スタジアムで開催されるセイコーゴールデングランプリ陸上2023の集客だ。

集客を考えるときに私がいつも気にかけるのは「その競技の魅力は何だろう?」ということだ。ラグビーワールドカップ2019の時も最初はそうだった。野球なら野球の、サッカーならサッカーの、バスケならバスケの、ラグビーならラグビーの魅力がある。そしてそれは競技によって若干違う。今回は陸上競技の話なので「陸上競技の魅力は何か?」をまず整理して、次に会場でお客様に見てもらうにはどうしたら良いか、その魅力をどのようにアピールすれば会場に見に来てくれるのか、それを考えていくというのがいつもの手順だ。

陸上競技の特徴とは?

では陸上競技の魅力とは何か?
最初から「魅力」というとどうしても力が入ってしまうので、まずは陸上の特徴とは何か?から考えてみることにする。

陸上競技の大会を勉強するために、私は昨年の6月に大阪の長居で行われた日本選手権を見にいった。そのときにスタンドに入ってまず感じたのは「随分と空いているな」だった。ヤンマースタジアム長居(長居陸上競技場)のキャパは47,816人。その日の観客数はざっと5,000人もいたかどうか。埋まっているのが約1割なので残り9割が空席である。この光景は悲惨だ。。。

メインスタンド側の席でしばらく見ていると、競技の進め方がだんだんとわかってきた。陸上競技をやっている人からしてみれば当たり前のことかもしれないが、陸上の大会では競技が同時進行で行われる。選手がトラックを一生懸命走っているときにフィールドでは投擲(とうてき。やり投げや砲丸投げなど)の予選が行われたりしているのだ。いろいろな種類のスポーツを見てきた私からみると、同時進行というのはとても新鮮だったが、一方で"困る"とも思った。きっと初心者はどこを見ていいかわからない(実際私もそうだった)、どの競技が重要なのかもわからない(アナウンスは陸上競技の人しかわからない言葉を発していた)。そもそもメインスタンド側から投擲や幅跳びが行われるバックスタンド側は遠いので、見ようと思ってもよく見えない。

陸上は競技が同時進行で行われる。これが私がまず感じた陸上競技の特徴である。そして、競技数が多く決勝種目を時間内にたくさんこなす必要があるプログラム進行の観点から、この同時進行というのはどうも動かせないらしいのだ。

陸上競技の魅力を発見した

そのときの大阪・長居での経験があったので、今回の仕事で陸連メンバーとの打ち合わせ中に、座席の種類(席種という)を決めながら会話の中で「座席の移動」という言葉を聞いたときにピンときた。

同時進行という陸上競技の特徴をいっそのこと魅力と捉えられないか?
そう、オフィシャルに席の移動を認めればいいのではないか??ということである。同時進行の逆手をとって、好きな席で好きな競技を好きなだけ自由に見られるようにすればいいのではないか?と思ったのだ。

陸連メンバーとのその後の会話はちょっと滑稽だった。なんと「すでにそうなっている」というのだ。席種間で移動の制限がかかっていない(きちんとチケットを見せて移動していない)ため、実際はみんないろんな席で見ているというのだ。

これまでは席種間の移動がなし崩し的に行われていた。特に陸連が発行する関係者パスを持った人たちは、ほぼ何の疑問もなく、好きな席に座って構わないと思っていたはずだ。どうせ空いているのだから。

これを今回のセイコーゴールデングランプリから改める。関係者パスを持っている人は関係者席以外には座れない。そして一般の方も関係者の方も、当たり前だがSS席のチケットを持っていない人はSS席には行けない。

その代わりSS席のチケットを持っている人はB席には行ける。これで100メートル決勝を見ようと思ってSS席のチケットを持っている人でも、好きなときに移動して、ゆっくり間近で(好きな位置のB席で)大手を振って幅跳びを見ることができるようになる。

ちょっとした見せ方の工夫

オフィシャルに席移動を認めること。会場内で移動の制限をきちんとかけること。そしてそれを堂々とアナウンスすること。なぜそうなったのか理由もきちんと示すこと。そうやって出来上がったのがこのチケットページの記述だ。https://goldengrandprix-japan.com/2023/ticket/

各チケットで移動可能な座席は以下のとおりです。
陸上競技はグラウンドレベルの様々な場所でレース・試技を行うため、B席にも移動可能としています。
世界トップアスリートの競演をぜひご堪能ください。

チケットページより
チケットページの中にこの星取表がある

上の星取表を見ていただくとわかるように、車いす席を除くと全ての座席からB席に移動できるようになっている(青のたて四角を参照)プレミアムシートの人も、SS席の人も、S席の人も、A席の人も、いつでもB席に行けるのだ。つまり1つチケットを買うと、2つ席が確保される。ちなみにB席とは席種の中で一番価格が安く、メインかバックかでいうと、バックスタンド側になる。メインスタンド側はスタート地点やゴール地点があるのに対して、バックスタンド側では幅跳びや投擲種目が行われている。


B席からは幅跳びや投擲種目が見やすい

チケットはただいま絶賛発売中だ。1つのチケットで2つの席が確保される競技なんて、これまで私の知る限りない。

ここからはお願いです

なのでこの機会に、スポーツビジネスに興味がある人、陸上に興味関心がある人、そして陸上競技初心者のみなさんも、5月21日の日曜日、日産スタジアムへ「セイコーゴールデングランプリ陸上」を見にきていただきたい。この大会は日本で開催される唯一の国際大会であり、世界のトップと日本のトップが競演する1日となる。これまでも世界と戦ってきた田中希実選手や三浦龍司選手、遠藤日向選手などの出場が発表されている。真剣勝負を楽しむと同時に、私と同じようにまだみんなが知らないような陸上の魅力をぜひ発見してほしいと思う。

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そして、何かみつかったらこっそり教えてください。

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