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来し方二十三年の時の味。

2020年の5月は、ほぼほぼ家に閉じ込められていた。
それでもやってくるものは、やってくる。
いや、いつもよりのんびりと
愚息のバースデーワインを開栓したかもしれない。

開けたワインは、
SAINT-CHINIAN 1997 “Unfiltered” / CANET VALETTE
サン・シニアン / カネ・ヴァレット 1997

このワインは、フィルターを通していない。
だからか、かなりの澱があり
コルクには、キラキラ輝く結晶が付着していた。

コルク

16時ごろからデキャンタージュをして、
ゆっくりと開かせる。
なにせ23年も眠っていたのだ。そう簡単には起きてはくれない。

まずその香りに驚かされれた。
リーデルのグラスの中が、芳醇な香りで満たされる。
細かな分析など、所詮無理なのだが、
ひねた様子は微塵もない。
タンニンはそれほど強くなく、適度の酸がある。
いやでも身構えるほどではない。
ベリーやナッツのニュアンスも複雑に絡まっていて得も言われない。

しかしながら、飲み口には不思議なまとまりがあって
個性的な乱暴さはない。
躊躇うことなく味わえてしまう。
好々爺といった印象か。

愚息は、珍しいことに
かなり積極的にこのワインについてコメントしていた。
研究室の指導教授に連れて行かれる店で飲むワインは
緊張もあって、楽しめない。
きょうは、リラックス度も含めてかなり満足のいくワインだと。

愚息が二十歳を過ぎてから、
毎年一本ずつ開けてきた1997年のワイン。
彼がきちんと味わったのは
今宵が初めてだったような気がする。

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