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地に立つ。それは過去に立脚すること

衣真一郎さんの個展「積み重なる風景」を拝見した。

衣さんは、一九八七年、群馬県生まれ。東京造形大学絵画専攻を卒業したあと、パリ国立高等美術学校に交換留学を果たす。二〇一六年、東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了された画家だ。

絵のモチーフは、自身の生活の中で見てきたもの、身体的な感覚や記憶が元になっているという。それゆえ、衣さんが生まれ育った群馬の山や畑、田んぼなどの田園風景がベースになっている。

絵の中には古墳や埴輪などが存在していたりする。それらはその地に住む人々がリレーしてきた記憶たちだ。と同時に現代の人々、モノたちもパラレルに存在している。現代と過去は分かちがたく、土地や風景を通して結びついている。

都市に暮らすとなかなかそうした実感はもてないが、風景を一変させてしまうような大きな震災のあとの人々の苦悩などを見ると、身体の奥底にある二重に渦巻く階段が地中深く伸びて、居場所を失った記憶たちが、その階段を上って押し寄せてくるのかもしれないなと思ったりもする。

私たちの足元にある地は過去のフロントエンドである。私たちはそこに立つことで、意識することなく過去の上塗りをしている。

衣 真一郎「積み重なる風景」

KATSUYA SUZUKI GALLERY
2024年5月11日(土)〜6月2日(日)会期終了


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