ライフラインとアコギとPC
YMOで音楽に目覚めながらも、ギターと歌で勝負してきた。
そのあたりのことは、30周年のとき書いた「ずっと、音だけを追いかけてきた」にも、今年35周年で書いた「続く、イエローマジック」にも詳しい。
新譜のインタビューをたくさん受けた。「今回打ち込みメインのサウンドになった理由は?」と必ず聞かれる。理由は色々あるので、毎回違った角度で答えている気がする。どれも正しい。
近年ずっとアコギの弾き語りを軸に活動してきた僕が、今回は何故打ち込みで作ろうと思ったのか?
1995年1月、阪神大震災の衝撃が日本を襲った。当たり前の日常が崩れ去る恐怖。友人知人も何人も被災し、大変な日々を過ごした。「ライフライン」という言葉を知った。そして、「もし電気が止まっても演奏できるミュージシャンになりたい」と強く思った。生き残るための道具として、「もし無人島に一つだけ楽器を持っていくなら、アコースティックギターを選ぼう」、そんなふうに思った。
四半世紀後の2020年、コロナ禍が世界を襲った。家を出てはいけない。コミュニケーションは「リモート」で。僕らは生き残るためにPCやネットのスキルを磨くしかなかった。どちらかといえばコンピュータが得意だった自分にとっても、それは試練だった。
慣れない作業に戸惑いながら、ふと手元のSSD(ソリッドステートドライヴ)を見た。YMOの「ソリッドステート・サヴァイヴァー」というタイトルを思い出した。
「ソリッドステート」を駆使してコロナ禍をサヴァイブする僕らこそ、「ソリッドステート・サヴァイヴァー」じゃないか、そんなふうにも思った。
1978年の古いタイトルが、予言のようにも感じられた。
新しいアルバムのコンセプトが無意識に刻まれたのは、その瞬間だったのかもしれない。
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