見出し画像

散文:緑の葉の萌え出るが如く


その緑の葉が段々と色を濃くし、大きさを変えるのを俺は見てきた。生い茂る原生林、気分だけはそこに行った気になれるだろう、種が落ちるのは何年先のことか計り知れない。染めぬ黒髪の少女が強い日射しの髪の色を落とし、肌の色はさかしまに褐色の色合いを濃くしていく、思わぬほどの短命を彼女は己で惜しむだろうか。海の色は蒼く、緑の色は緑に濃い、強い日射しが葉を透かして零れ落ちる、掬い上げることなどできはしない、地には闇が蟠っていた。
名を呼ばれて正気にかえる、したたり落ちる汗はまた地に染みていく、櫂を漕ぐ手は昔はもっと華奢だった都市に住んでいたあのころには。平均寿命がいくつ永いばかりの生にどれほどの意味があるといきがるのは負け惜しみか、太く短く生きるとそう笑う奴もおそらく死ぬ時には己の命を惜しむ。
緑の葉のいずるがごとく生い茂る今の間に連綿と続く人の命を繋げることも出来ずに何を残す腰を振り動かしてそして命を残すか、女を取るか海を取るか、それは選べるようなものではなかったろう、強い日射しに格段に短い命の長さ、ころころと死に絶える新しい命は次々とまた産まれいずる、命の重さなどどこにもありはしない。

もしサポートをして頂けたら、とても嬉しいですし、そのサポートは他のクリエイターにも循環させたいと思っています。