【05話】小春麗らか、希(ノゾミ)鬱
第二話 掃除
2-1 諍い
小春何してるかな……。いや、授業中だから授業受けてるんだろうけど、何考えてるかな。俺はそんなことを思っていた。そう、思わずにはいられなかった。今朝、小春とちょっとした諍いがあったのだ。それで、色々思うところあって彼女のことを考えていた。
小春は小柄で小さな女の子だ。明るくて二年生の隣のクラスでもクラス委員をしていて、誰からも好かれるように振る舞える優しい女の子だ。それ故に抱えることも多いのだろうかと、そう思う。人はだれだって悩むし、葛藤する。病気でなくても、心は不安になるのだ。そんなことはあたりまえだ。人間だからな。誰でも不安だ。そしてだからこそ、俺は彼女が不安にならないか不安になるし、彼女の不安要素に俺がならないように努めなければいけない。そう思う。
俺はそうやってその日の朝のことを思い出していた。
その日の朝も起きれなかった。起き上がろうとすると、すぐに倒れ込んでしまう。睡魔が襲う。病的に、悪魔的に。今日も俺は普通に行けないのか。情けなく思い、悔しいけど、しかし勝てなかった。
「咲くーん、おはよー」
彼女は今日も来た。変わらずに、何も変わらずに、いつものとおりにやってきて、部屋のカーテンを開ける。時刻は八時くらいだろうか。それとも既に九時くらいだろうか。八時くらいならば、登校の門限には十分に間に合うが、九時では一時間目がすでに始まってしまっている。どちらにしても今日も二時間ほど格闘するのかと思うと、気の遠くなるような思いだし、やはり小春に迷惑だろうと思う。そう考えると、俺はどうしても小春のことが心配でしかたがなかった。俺のせいで小春を巻き込んで、学校生活に影響を及ぼしている。それは絶対に良くないことだし、健全ではなくて、俺が批難されるべきこと。小春の普通を壊していることを罪に感じていた。だから、俺はこんな事を言ったんだ。突き放すように。半分くらい本音で。
「なあ、もう放っておいてくれないか。小春」
「え? 起きた、咲くん?」
「今日は、起きれそうだからもういいよ。それと、明日からも来なくていいから。これは俺の問題だし、俺のことでしかないから。もう来なくていいよ」
もう来るな、小春。
そう、突き放した。
next第六話↓
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