見出し画像

COMEMOセミナー「日本のAI導入は6年遅れ」

© super_murachan

COMEMOは5日、「世界デジタルサミット2018」に関連し、「COMEMOセミナー~AIが変える仕事・暮らし」と題したセミナーを開催しました。当日は約50人の方にご参加いただきました。セミナーの概要は以下のとおりです。

当日のプログラム

まずは世界デジタルサミットのDropboxドリュー・ハウストンCEOの中継後援を視聴しました。

・IPOは成功だった。投資家や、一般の方々から好感をもって受け入れられた。

・Dropboxのアイデアは、自分の経験から生まれた。スマホをなんとかしなくてはと思った。 コンピューターとスマホを同期させることが課題だった。

・Dropboxを使ったことがある5億人の個人ユーザーから、企業などに入り込むことができた。

・データを自分のインフラで管理することは難しい。データを安全に管理するニーズが大きい。セキュリティーに対する人々の考え方が変わった。以前はデータを預けることに不安を覚えていた。

・Dropboxは使いやすい。このため他社もこの分野に入ってきたが、いまでもリーダーである。

・「Dropboxペーパー」は、基本的なエクスペリエンスを変える可能性がある。

  従来製品はたくさんのボタンがあっても、コラボレーションのボタンがないと思った。

  Dropboxペーパーは、どんなクラウドコンテンツでも、共有することができる。

  新しいツールが出るが、統合化されていないのが問題。ペーパーは1つにまとめられる。

 多くの週末自宅ワーカーがいる。ペーパーを使って、家でも仕事ができるようにする

・紙ではなくDropboxを使うことで、金も時間もエネルギーも節約することができる

 家でも、出張中でも、移動中でも、仕事場と同じ生産性を得ることができる

・日本にはクリエイティブな国だ。ベンチャーキャピタルや学校などスタートアップの素地がある。

■講演解説「AIは働き方をどう効率化するか」 オレンジテクラボの宮崎淳CEO

宮崎 淳氏(オレンジテックラボCEO)1988年富士ゼロックス入社。R&D部門のグループマネージャを長年勤める。人工知能、特に深層学習を中心とした人工知能システムの設計、コンサルティングに従事。2016年5月に富士ゼロックスを早期退職し、17年5月にオレンジテクラボを設立。長年、シリコンバレーと日本を繋ぐ新規事業開発とインキュベーション、日本やアジアパシフィックでの事業化・技術マーケティングを担当し、シリコンバレーの歴史からテクノロジーの潮流に精通。

講演を受けて、オレンジテクラボの宮崎淳CEOの解説が始まりました。

司会 ハウストン氏からは「Robotic」という言葉が強調されていました。Robotic Process Automation、つまりロボットによる業務自動化ですが、分かりやすくご説明いただけますか。

宮崎氏 RPAとは、今まで人間が行っていた業務をソフトウェアロボットに置き換えることで、業務の自動化を行う仕組みであり、RPAを活用した業務改革により、人間はより付加価値の高い、利益を生み出す活動に集中することができるようになるとしています。

  RPAが求められる背景として日本の生産性が先進国のなかでもかなり低いことを指摘。生産性向上、競争力向上、人手不足への対応のため、RPAの活用による働き方改革が必要だ。

司会 RPAにAIを組み合わせた仕事の効率アップ。現状はどのあたりまで実用化が進んでいますか。

宮崎氏 導入事例としては「建築業における検索・加工」があります。これは、建設業の外注時に必要となる建設業許可番号と許可種別の確認を、発注都度、最新のデータと確認し、注文書を作成するものです。また、介護施設では、施設での出費種別ごとの利用明細から、利用者単位の利用明細を作成し、印刷出力までを自動で行っています。

司会 導入事例は増えているようですが、どうも日本ではAIに対する嫌悪感もある気がします。なぜでしょうか。

宮崎 日本のAI導入は米国などに比べて6年ほど遅れています。始まったばかりだから、まだよく知らないというのが実情ではないでしょうか。

続いては、SOINNの長谷川修・代表取締役CEOの登場です。

長谷川 修氏(SOINN代表取締役CEO)

東工大における研究成果を元に2014年にSOINNを創業。「人工脳」と呼ぶ脳科学的アプローチによる技術で、米軍やアメリカ科学財団(NSF)、インド工科大学など海外からも注目を浴びている。

■日本発の「人工脳 SOINN」 SOINN代表取締役CEO 長谷川 修氏

長谷川さんは、東工大における研究成果を元に2014年に創業。「人工脳」と呼ぶ脳科学的アプローチによる技術で、米軍やアメリカ科学財団(NSF)、インド工科大学など海外からも注目を浴びています。

この日は、日本発の人工知能、SOINNについて解説してもらいました。長谷川さんいわく、SOINNは、「学習型汎用人工知能」。自分で学習するAIで、ネットワーク構造自体が成長していきます。少量のデータを投入すれば自分で学習していきます。新人をトレーニングするように、現場のエキスパートが直接、教示できるそうです。

たとえば、従来はエキスパートが目視していた画像の認識・検査や、売上げ予測、出店計画、商品開発、不正・異常検知などが学習できるとのこと。ドローンや機器・装置の自動制御もできるということで、VTRでは、テレビ番組で池上彰さんが、ドローンが飛び方を独学している様子を紹介していました。

基本的な感覚や言葉を「経験」から学ばせることが特徴で、例えばあるモノが木製かどうかを把握するには「叩いて音を聞けば良い」と学習します。そして、そうした学習済みAIを使いまわす「移転学習」技術を確立しており、ロボット間で動作のスキルを移転させることも可能です。

講演ではディープラーニング(深層学習)とSOINNの強み、弱みの比較表も示されました。AIの思考判断の根拠や経緯が分からない「ブラックボックス」が問題になっています。ディープラーニング(深層学習)がブラックボックスといわれるのに対し、SOINNは答えを出した際のルールや判断理由が分かるのもメリットと強調していました。

すでに、ごみ処理発電の無人化や地下レーダーによる路面下空洞自動検知、ATM内の紙幣の増減予測精度の向上、ダムへの流入水量予測などでSOINNが活用され、スマホを使ったダイエットアプリも開発済みとのことでした。

安達 章浩氏(ALBERT執行役員 先進技術統括 営業推進部 部長)

自動車メーカー、コンサルティングファーム勤務を経て、1995年にデータマイニングを専門とした会社を設立し、代表に就任。以来約20年に渡り、大手メーカーを中心とした生産~販売~物流データの分析、流通・小売業を中心としたPOSデータの分析、飲食業を中心とした新規出店売上げ予測システムの構築を多数手掛ける。また、デシジョンツリー分析、サポートベクターマシン、ベイジアンネットワーク最適化など機械学習分野の手法を様々な企業に導入し、意思決定支援の効率化に寄与する。2013年2月株式会社ALBERT入社。同年4月執行役員 データ分析部部長に就任。2018年1月より現職。

■「データサイエンティストの育成支援がテーマに」 ALBERTの安達章浩執行役員

ALBERTの安達章浩執行役員には「AIの限界と将来展望」についてお話いただきました。AIは現在、2013年からの第3次ブームとなっていると話し、AI導入で見込める効果として

・受注数量を正確に予測できれば、過剰な設備投資や機会損失を回避できるため、経営インパクトが絶大

・広告と売上の関係を解明できれば、広告費の有効活用ができ、経営インパクトが大

・人や車、障害物を認識できれば、自動運転に近づくことができ、社会インパクトが絶大

などを挙げていただきました。

一方、「真のAI」実現に向けては

・現在は「個別の課題」を解説するAIがすべてで、汎用的なAIがまだない

・AIの性能を高めるためには膨大な量の学習データが必要

・AIを構築する「データサイエンティスト」が不足している

ことなどが壁となっている、とのご指摘でした。

ALBERTは100人超のデータサイエンティストを抱えており、自社の育成プログラムを充実させています。先月のトヨタ自動車との業務・資本提携でも自動運転技術に寄与するとともに、「データサイエンティストの育成支援が大きなテーマとなる」と話していました。

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

次回のCOMEMOイベントにもご期待ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?