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鳥のから揚げ、値上がりのワケ

世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。今日のテーマは『から揚げ』です。子供から大人まで人気。手ごろな値段で、デフレ時代のお弁当には欠かせない存在でした。専門店が相次ぎオープンしブームも。そんなから揚げにも値上げの波が押し寄せています。

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

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家庭で食べられるようになったのはいつ頃?

から揚げがいつごろから一般家庭で食べられるようになったかご存じですか。実はそれほど古くはなく1960年代後半から70年代だといわれています。戦後の食糧難を解消するため各地で養鶏が盛んになりました。鶏肉が安く買えるようになったことと、傷みやすい足の速い鶏肉を流通・保存できる冷蔵技術の普及がきっかけでした。

単身世帯や共働き世帯の増加に伴い、家庭で手間のかかる油ものを調理しなくなったこともあって中食用に2010年ごろから徐々に増加していました。そこに新型コロナの感染拡大によって外食が減少し、中食が増えたことによって爆発的に増加しました。

専門店は10年で10倍近くに

日本唐揚げ協会によると、今年4月時点の唐揚げ専門店の数は全国で推定4300店舗です。この10年間で10倍近くに増えています。
そのから揚げの価格が上がっています。消費者物価指数でみると、昨年秋から「から揚げ」の指数は上昇が続き、1年前と比べ7.1%のプラスになっています。

なんといっても鶏肉の値上がりが大きいです。主な要因はこちらです。

鶏肉も、エサも値上がり

これまで番組でたびたび取り上げてきましたが、ウクライナは鶏肉でも大輸出国です。鶏肉は主にEU向けに輸出していて、輸出量は世界7位でした。ロシアの侵攻で輸出がストップしてしまったので、EUはブラジルから輸入することになったのです。世界各国がブラジル産鶏肉を奪い合う状況になってしまい、値上がりにつながりました。
鳥のエサになる飼料も、原料のトウモロコシや大豆ミールの値上がりで大幅高になっています。

日本国内の価格も上昇、ブラジル産の業者間取引価格を見ると2月下旬のウクライナ侵攻後に急激に値上がりしているのが分かります。円安の影響もあり、年初と比べると40%以上高くなっています。
日本の鶏肉の輸入先はブラジルとタイの2か国で8割を占めています。タイは新型コロナの影響で加工場が人手不足になり、輸出量が減少しました。その影響でタイ産も大きく値上がりしています。
飼料の値段も上がり、国内の養鶏農家を直撃しました。
から揚げを販売している業者は企業努力で吸収してきましたが、食用油や電気・ガス代などあらゆるものの値上がりでそれも限界に。コンビニも値上げしています。セブンイレブンは今年2度値上げしトータル3割の値上げ。ローソンは発売36年で初めての値上げが話題になりました。

きょうの方程式です。
から揚げ値上げ=(ウクライナ侵攻+新型コロナ)×円安


東京都葛飾区のから揚げ専門店「丸武商店」で取材してきました。
72時間特製のたれに付け込んだ肉を低温でじっくり揚げた後、高温で周りをからりと揚げる、2度揚げ。こだわりの味が評判となり、遠くは北海道や九州から買いに来る人もいるといいます。常連客は「他の唐揚げ店より大きくて、めちゃめちゃおいしいです。多いときは週3,週4で来ます」と話します。
こちらの店では今年に入って2度値上げしています。年初は5個で450円でしたが、4月に5個500円にさらに7月に2個で320円になりました。1個あたりの単価で比べると7割以上高くなっています。2回の値上げで「たくさん買ってくれるファミリー層が50%減ぐらいまで下がってしまいました」と店長は厳しい表情で話します。

今年に入って経済活動の再開で外食需要が回復し、持ち帰り・中食の売り上げも減ってきました。原材料の値上がりでコストがこれまでよりもかかるようになって、多くの店舗が閉鎖しています。大手チェーン2社の閉店した店舗数を番組が調べたところ、今年に入ってから50店が閉店しています。
から揚げブームは終わるのでしょうか。今のところ、閉店しているのは都市部で過当競争になっている立地の店が多いようです。から揚げは人気のおかずだけに、かつてのタピオカ店のように急激に減ることはなさそうです。ただ、鶏肉、食用油などコストの上昇は続いており、販売価格の設定には頭を痛めそうです。


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