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ブドウ、国産と輸入品の価格二極化へ 牛肉市場の再現か

BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」。本日朝の「値段の方程式」のコーナーで秋の味覚、ブドウを取り上げました。みずみずしさと甘さがたまらないですね。キャスターの天明麻衣子さんも大好きだそうです。

輸入品は格安

今、お店に並んでいる品種の値段をみてみましょう。種なしで人気のシャインマスカットで1房1500円前後、ナガノパープルや瀬戸ジャイアンツも1300~1600円くらいです。いずれもほぼ前年並みです。

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一方、輸入ものは……

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1房で400円前後。国産に比べ格安です。スーパーでも結構、売り場のスペースが増えています。
ブドウの輸入量はどうでしょうか。

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輸入量10年で5倍

2008年に7000トンだった輸入量が2018年は3万7000トンになりました。10年で5倍以上に増えました。輸入額も118億円と過去最高です。今年1~7月の輸入量も前年同期比で36%増えており、2018年を上回るのは確実です。

ブドウはどの国から輸入しているのでしょうか。

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TPP11で豪州産増える

米国が一番多いですが、近年、輸入数量が非常に増えているのが、オーストラリアです。チリを抜いて2位に。豪州は2014年に日本の輸入が解禁されました。さらに昨年12月にTPP11が発効し、関税が下がったためです。
豪州とチリは同じ南半球で日本には5月~7月ごろに入ってきます。豪州は船での輸送日数が2週間とチリの半分。鮮度の良さを前面に出して日本に売り込みをかけています。輸入ブドウはその安さから人気が出てきて「今年1~5月中旬の売上額は前の年と比べて13%増えた」(都内の中堅スーパー)といいます。

天明さんが「安い輸入品がスーパーなどで定着すると消費者としては嬉しいですが、国内のブドウ農家への影響などはどうなんでしょうか」と尋ねます。
日本のブドウ農家は「これ以上輸入が増えると国産品の販売量と値段に影響する」と警戒しています。主要産地は品質面で競争力を高めようと、高級路線を進めています。具体的には高価格が期待できる品種やブランドの販売を強化しています。

高級ブドウ市場をけん引するのが、いまやエースと呼ばれる「シャインマスカット」です。農水省の調査では2016年には1195ヘクタールと前の年に比べ20%増えました。ブドウ全体の栽培面積が減少する中で、「巨峰」「デラウェア」といった既存品種からの転換が進んでいます。

番組では石川県の高級ブドウ「ルビーロマン」を紹介しました。

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今年7月の金沢市中央卸売市場の初セリでは1房120万円の値段がつき、ニュースになりました。百貨店では1房1万円以上します。

ブドウの大産地、長野県は県独自品種「ナガノパープル」や「クイーンルージュ」の売り込みを強めます。山梨県は「ピオーネ」を種なしにしています。岡山県は県独自品種「オーロラブラック」や「瀬戸ジャイアンツ」に注力します。

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TPP発効を契機にオーストラリア産やチリ産など安価な輸入物の出回りがさらに増えています。国産は輸入品に比べて価格競争で不利。さらに農家の高齢化や後継者不足で生産量も今以上には増やしにくいです。単価を引き上げて収入を確保するしかないんです。
各産地が強化している品種に共通するのはおいしさに加え、「種なし、皮も食べられる」という点。消費者はより手軽にブドウを食べたいと思っており、種ありのブドウは敬遠されています。ただ、おいしい種なしブドウを栽培するのには手間もかかる。価格も高くなってしまいます。

ということで、今日の値段の方程式はこうなります。

ブドウの値段は「安い輸入品と 高級国産品で二極化する」

全く個人的な感想ですが、輸入品は国産に比べると甘味や香りという点で見劣りする印象です。牛肉は1990年代の輸入解禁で安い輸入牛と高級和牛というすみわけができました。これと同じ状況がブドウで再現されるかもしれません。


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