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引っ越し料金上昇 人手不足解消にAI

世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。きょうのテーマは「引っ越し料金上昇 人手不足解消にAI」。引っ越しというのは頻繁にするものではないので、料金の上昇といわれてもピンとこないですね。こちらは引っ越し料金の比較サイト「引越し侍」を運営するエイチームライフデザインが調べた毎年10月の引っ越し料金です。10月は引っ越しの需要がそれほど高くないので1年間で最もお得にできる月なのですが、それでも徐々に上昇しているのが分かると思います。

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

今春、業界の半数で「見積額引き上げ」

新型コロナの流行で企業が引越しを伴う異動を抑制。大学もリモート授業などに伴い、引っ越しの需要が減少し料金は落ち込みました。コロナが落ち着き始めると需要も回復して上昇しています。引っ越し業界では今年の春、およそ半数の企業が見積額を引き上げていて、来年の春も多くの企業で引き上げを計画しています。

深刻な人手不足

上昇の背景にあるのが深刻な人手不足です。日本経済新聞のサービス業調査では引っ越し業界の60%が今年7月時点で1年前に比べ「人手が不足している」と回答しています。トラック運転手の残業規制が強化される「物流の2024年問題」は引っ越し業界にも関係していて、今後さらに人手不足は深刻です。大手のアート引越センターで取材してきました。田代憲・執行役員営業部長は「人件費や資材、原材料の高騰に伴う値上げがあり、結果的に単価が上がってきている」と料金上昇の要因を説明します。引っ越しは必要なスタッフの人数、使う車の大きさ、引っ越しする距離で価格が決まります。その全ての要因で価格が上昇しているのです。さらに頭が痛いのが「若者の車離れ」。運転免許を持たない人が増えたためドライバーの確保が大変です。アート引越センターでは免許の取得からサポートをして人手を集めようとしています。

需要が増えるのに対して人手は足りていません。仕事はあるのに受けられない状態です。業界では今年の春の異動期におよそ半数の企業で受注を抑制していて、来年の春も40.0%が予定しています。ある会社の場合、月3000件の仕事があるうち数百件は仕事を断っている状態。「引っ越し難民」という言葉が数年前にありましたが、来年以降も「引っ越し難民」が出てきそうです。資材の高騰では家財の梱包に使う段ボールが値上がりしています。製紙各社は2021年以降、原燃料高を受けて原料となる段ボール原紙の価格を複数回、引き上げてきました。現在までに3割高くなっています。

ここできょうの方程式です。

引っ越し料金の上昇=人手不足による人件費の上昇+燃料費・資材費の高騰

そもそも引っ越し料金には相場はありますが、「定価」というのがありません。最初に提示された価格から値引きされるケースもあり、わかりにくくなっています。引っ越しの際、各社から見積もりを取っても高い業者から安い業者まで相当なばらつきがあります。この見積もりが曲者です。人の目で荷物の量を判断しているので、どうしても担当者によって金額が変わってきてしまう。引っ越し業者にとっても荷物の量を正しく把握できないと、トラックに積み込みできずに再配車する手間などが余計にかかってしまいます。この問題が解消できれば、価格を抑えることに繋がります。

AIで見積もり作業を効率化

効率のいい配車に向けての取り組みで、アート引越センターが開発を進めているのがAIを使った自動見積もり。お客さんがスマートフォンを使って室内を撮影していくと3Dモデルが生成されます。3Dモデルを通してAIが家財の種類や量を元に見積金額を算出します。見積もり時の差がなくなり、客にとっても企業にとっても効率が良くなります。
この「引っ越し見積もりAIアプリ」(仮称)は来年2月からのサービス開始を予定しており、現在最終調整中です。気になるAIの精度も「単身世帯の引っ越しであれば、ほぼ誤差はない」そうです。
AI導入によって効率化は進んでいきますが、人手が少なくなる部分は出てくるとは思います。ただ肝心のトラックドライバーや引っ越しスタッフの仕事量が減るわけではありません。引っ越し料金の上昇傾向は続いていくとみています。

便利な見積もりサイトを使うと多数の業者から見積もりがいただけますが、安さだけで選んで失敗した人の話も聞きます。私も引っ越しでは苦い経験があります。5年前の夏の引っ越しの際、転居先のスペースの把握ができず部屋は荷物でいっぱいに、さらに一部が部屋に入りきらないという悲惨な経験をしました。もちろん引っ越し業者の責任ではないです。私は次回の引っ越しの際には荷物の量をちゃんと把握して快適に住み替えたいと思っています。












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