中古マンション高騰 広がるリノベーション
世の中の様々な値段がどのように決まっているのかを解き明かす、値段の方程式。今回のテーマはこちら、「中古マンション高騰 広がるリノベーション」です。マンションというと新築の平均価格が東京23区では2年連続で1億円を超えました。相場のけん引役は都市部のタワーマンション。関電不動産開発が7月に販売を発表した「シエリアタワー南麻布」は70平方メートル強の2LDKで最低予定価格が2億8000万円超えです。もう億ションじゃなくて2億ションですね。新型コロナウイルスが5類に移行して1年あまりが経過。出社回帰の流れから、都心の物件の需要が高まり、新築物件は供給不足で高額になりました。そこで中古マンションの関心が高まっています。
中古の価格は10年で2倍
中古の価格はどれぐらい上がっているのでしょうか。不動産調査会社の東京カンテイが10月24日に発表した、東京23区の中古マンションの8月の平均希望売り出し価格は前月比3.9%高の7750万円でした。10年前の2014年9月は4216万円でしたので、10年で2倍になった格好です。埼玉県と千葉県、神奈川県を含む首都圏で見ても前月比2.2%高の4809万円でした。ただ、内訳を見ると千葉県は1.3%高、神奈川県は前月比0.2%高、埼玉県は0.1%安とばらつきも見られます。海外投資家の需要が旺盛な東京に比べ、実際に住む「実需層」が買い手となる、この3県は相場に力強さがないです。
リノベーションが進化
都心の中古マンション人気の理由は大きく2つあります。まずは新築よりも価格が抑えられること。特に選択条件として立地を優先した場合、新築は買えないが、中古なら手が届くこともあります。もうひとつは「リノベーション」の進化です。「リノベーション」とは暮らしに合わせて包括的な改修を行い、機能・価値を「再生」させます。住宅業界では似たような言葉に「リフォーム」があります。リフォームが壁や床材を張り替える、水回りを新しい機器に取り替えるなど目にみえる場所のリフレッシュなのに対し、リノベーションは部屋を柱や天井、壁などの骨格部分の状態にし、理想の間取りに生まれ変えさせます。リノベーションされた中古のマンションは新築と変わらないどころか、最新のトレンドが反映されています。
リノベーション費用が上乗せされているため、物件価格も高くなります。一般的にリノベーション費用に加え、買取再販業者が10〜30%の利益を見込んで販売するといわれています。たとえばリノベ前で8000万円の物件の場合、トータルで1億1000万円ほどになります。
中古マンション選びから、リノベーションの設計・施工までを一括で行うリノベるで取材しました。訪れたのは東京都港区表参道にあるショールーム。築53年のオフィスビルの中に作られています。玄関まではやや古い建物といった印象でしたが、内に入るとガラリと雰囲気が変わります。天井を高くすることで開放的な空間を演出。すべての部屋がつながった生活しやすい動線や、リモートワークのための空間も設けています。最新のリノベーションのトレンドが盛り込まれていました。
担当者によると、リノベーションにかかる費用は首都圏の60平方メートルで1400万円。2年前に比べて100万円上がっています。値上がりの中身について、首都圏PM部の斎藤高央部長は「資材費や人件費の高騰もありますが、暮らしを豊かにすることを求めているお客さんの要望が強まっているのが大きい」と話します。気の利いた収納や子供を見ながら生活できる間取りなど、豊な暮らしを求めていくと小上がりの下が収納になっていたり、リビングの隣にあり子供を見ながら生活できたりすることに価値を求めると、費用が今までに比べて高くなるといいます。
今後もマンションのリフォーム市場は拡大が続きそうです。斎藤部長は「今まで住宅を購入する選択肢は新築一本だったが2016年ごろから中古市場は広がっている。ただ、中古は内装が傷んでいるケースも多い。自分らしく暮らしやすいようにリノベーションする人が増えていくのではないかと思います。
ここで、きょうの方程式です。
「都心の中古マンションの高騰=新築の値上がりを受けた需要増×リノベーションによる付加価値」
リノベーションによって生まれる付加価値は2種類。1つはより良い暮らしが手に入る、住む人にとっての価値向上です。もう1つは資産としての価値。リノベーション済みのマンションは、部屋がきれいで、間取りが使いやすく見えない部分も含めて設備が一新されているため、マンションとしての資産価値が下がりにくいという面があります。