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主要著作目録

令和3年(30歳) 001 「二時の砂嵐」 002 「ふしぎな英和辞典」 003 「雨宿り」 004 「おめでとう」 005 「出張の朝」 006 「魔法陣」 007 「おめでとう」 008 「出張の朝」 009 「魔法陣」 010 「ダイヤを転がせ」 011 「検温」 012 「集中」 013 「峠の店」 014 「妻の買い物」 015 「アンドー先生」 016 「振り付け」 017 「退勤の列車」 018 「吠える男」 019 「道の駅」 020 「求愛」 021 「夜の

    • 神輿

      「ご寄付をいただけませんか?」  青年であった。  爽やかな汗を流して、いま、近所を回っているといった様子なのだ。 「寄付?」 「神輿を買う、費用にさせていただきます」  神輿?  町内会の神輿のことか?  と、すると、青年は氏子衆の役員か?  しかし、見たことのない青年であった。 「ご寄付いただけませんか?」 「待ってください。神輿って、どこの神輿です」 「われわれの神輿です」 「は」 「われわれの祭りで使う、神輿です」 「われわれの?」 「はい」 「地域の神輿?」 「地域

      • 幽霊

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        • 演者

           どこかで、パーティが開かれた。  ぼくは、ラウンジで、コーヒーを飲んでいた。  そこに、男が来たのである。 「少し話をしてもいいでしょうか」  50歳くらい。  知らない人だ。 「はあ」 「では、失敬」  一礼すると、男は向かいに座った。 「私は、映画に出たことがありましてね」 「映画に?」 「もう、ずっと昔のことですが」 「はあ」 「ある日、郵便受けを開けたら、封筒が入っていたのです」 「封筒」 「はい、封筒」  あつかましさのない、ふしぎな柔らかさのある男だった。 「差

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        マガジン

        • ラジオ・ショートショートの時間
          35本
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        • 雑記(とりとめもないもの)
          13本
        • Ghost Zapper
          1本
        • 「植物」自選小説集
          9本
        • 真島先生の机
          12本
        • 「夏」自選小説集
          9本

        記事

          よるのおきゃく

           むかし、ふかい、ふかい、もりのなかに、いっけんのぼろやがありました。  ぼろやには、おじいさんがひとり、すんでいました。  いてつくふゆも、ひばりのなくはるも、なつもあきも、ずっと、ひとりでいきていました。  ある、つきよのばんでした。  おじいさんは、だんろのまえでつぶやきました。 「ああ、だれかとはなしをしたい。だれとでも、どんなことでもいいから、はなしをしたいものじゃ。もう、ずっとながいあいだ、わしはひとりじゃからのう」  そのとき、とぐちが、ばたん、とおとをたてまし

          よるのおきゃく

          だっれでも思いつく話 part.2

           史跡公園を訪れたノボルは、目をみはった。  小学生のころ来たときは、ずいぶんつまらない場所だったが――  いまは、住居が復元されていたり、遊歩道が整備されていたりして、かなり手が入っているのである。 「すげえや、これ」  ミツノリが指さしたのは、復元住居である。  地面を平たく、円形にうがった周りを、木材や藁の壁で囲った粗末なものだ。それでも、ひと家族は入れる広さがある。中には、薪が積んであった。 「入ってみるか?」  ミツノリがにやりと笑った。 「入ろうぜ」  だが、復元

          だっれでも思いつく話 part.2

          だっれでも思いつく話

           史跡公園を訪れたノボルは、目をみはった。  小学生のころ来たときは、ずいぶんつまらない場所だったが――  いまは、住居が復元されていたり、遊歩道が整備されていたりして、かなり手が入っているのである。 「すげえや、これ」  ミツノリが指さしたのは、復元住居である。  地面を平たく、円形にうがった周りを、木材や藁の壁で囲った粗末なものだ。それでも、ひと家族は入れる広さがある。中には、薪が積んであった。 「入ってみるか?」  ミツノリがにやりと笑った。 「入ろうぜ」  だが、復元

          だっれでも思いつく話

          mogwai!

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          熱いギフト

          「旦那、そこの旦那」  横丁で声をかけたのは、露天商の老人だった。老人は、座ったまま、上目づかいにぼくを見た。 「風呂敷、いらんかね?」 「風呂敷?」 「ああ、風呂敷じゃ。ほら、これじゃ」  なるほど。  風呂敷だ。  ただの、紺色の風呂敷であった。 「いらんか?」 「いりませんねえ」  風呂敷なんか、買い足したって意味がない。  だが、老人は言った。 「ただの風呂敷じゃないのだが」 「?」 「お前さんみたいな若い人でも、菓子折りだの、祝い品だのを包んで、人にやることがあるだ

          熱いギフト

          返金の男

           T事業所長のカワダという男が変わっている、という話は以前から聞いていた。  なんでも、並外れたいたずら好きで、本人の中でブームがあるのか、時期により、いたずらのタイプも異なるのだという。 「最近は、返金です」  社用車の中で、カワダの配下がぼくに教えた。 「返金?」 「ええ。なんでもかんでも、これは返金だと言って小切手を渡すんです」  意味がわからない。 「たとえば、飲み会の翌朝に、昨日はもらいすぎちゃったからと言って、三千円くらい返してくれるんです。ありがたいし、普通にく

          ラウンジの水

           空港のラウンジは、閑散としていた。  ウィークディの中途半端な時間だから、こんなものだろう。  ソファに座る。  飛行機。  空路。  本当は……  新幹線を使いたかった。先方がチケットを押さえてくれた手前、抗えなかったのだ。こうなれば、着いたら勝島に直行し、大いに羽を伸ばすつもりであった。  おっと。  薬。  酔い止めである。飴のタイプだ。  これがないと、リフトオフのとき、吐き気がこみ上がってくる。  かろかろと飴を舐めながら、ドリンクコーナーへ。  ジンジャーエール

          ラウンジの水

          映画を観ながら。

          映画を観ながら。

          柘榴の傘

           ちらりとこちらを見てから、ゆきかけたけれども、とまった。  また、ちらりと見て、なにか言いかけた。  それきり――去っていく。  私は、気にもとめない。  通り雨だ。   さっきからずっと、こうして、図書館の、庇の下にいるけれども――そして、傘立てには、いつもの傘が見えるけれども――私はじっと、雨雲が遠ざかるのを待っている。いつものように、じっと。  最初に見たのは、遠い昔のこと。  生徒玄関の傘立てに、柘榴色に、小豆色の玉を散りばめた、女ものの、大きな傘が置いてあった。

          おもちゃ

           出張先で、ぼくは百貨店のベビー用品売り場に立ち寄った。  おもちゃでも買って帰ろうと思ったのだ。  まだ首もすわらず、おもちゃで遊ぶ月齢ではないけれども――  このところ、仕事のため家を空けることが多くなっているし、その間、ひとり乳児の世話をしている妻への、アピールという目的もあったのだ。  売り場に入る。  広い。  新生児から乳児、幼児、児童といった段階にわけて、それぞれ膨大なおもちゃが用意されているのだ。  狂気――  いや。  おもちゃ売り場のことではない。  親の

          トー・トー・トー・ツツツ

           MFICUの家族待機室からは、病院に林立する棟が見渡せた。  かなり上階にいるために、どの棟をも、見下ろすような視界である。深夜だから、外来棟や外科病棟は、総じて暗い。その中に、僅かに、変光星がよろめいた光りを放つように、常灯している窓があった。ナースステーションらしかった。  窓の外を眺めるほか、することがなかった。  漫画を読んだり、仕事の原稿を書いたり、くだらない俳句を作ったりしたけれども、さすがに半日も待ちぼうけだと、疲れるし、飽きてしまった。日曜日は、もう間もなく

          トー・トー・トー・ツツツ