絵本探求ゼミ(ミッキー絵本ゼミ)第4回講座 リフレクション


2022.7.25.(土)
第1期のオンライン受講としては今回が最終講義。私は今回も録画受講だ。残り1講義は8/6にリアル講座が開かれる。現地参加の予定なので、共に学んだ仲間の皆さんとやっと会える、一緒にディスカッションできる!と思うと、ワクワクである!

【第4回講義の内容】

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①グループワーク「読書年齢と絵本」
  絵本の持ち寄って討議する。
  絵本について「WHY」「HOW」の視点を持つことが大事。
②講義「読書年齢と絵本」
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さて・・・
 今回は、“絵本の中の技法や語りの手法が、読書年齢とどう関係があるのか、理論または実践例から説明する”という課題だった。
 子どもの身体的、また心理的な発達が絵本選びにも大きく関わってくることは、これまでの幾ばくかの勉強と子育て経験で体感していた。
 が、絵本をこれほど深ぼって「WHY」「HOW」で理論構築することはなかった。私の頭ではそのような整理に一挙にはならないが、新たな視点をいただき、再び考える機会になった。

 絵本の裏表紙を見ると、「○○才から」という表示のある絵本があるが、これは目安であって目安にならないなと思っている。
 ミッキー先生も前提で仰っていたが、環境や個性、興味関心、発達・成長の度合い、読んでもらう場によって違いがあるので、一概に言えるものではない、と私も実感している。
 が、このゼミに集う皆さんの絵本の知識や経験値が大きく、今回も皆さんのシェアが多くの事例を聞くこととなり、教えていただくことが大変多い。
 しかも、そのシェアされた数々の絵本に関して、先生の泉のようにあふれる専門的な解説とご経験の話が盛りだくさんなのである。

【シェアタイムに印象に残った本】


例えば、グループワークのシェアタイムにこんなことがあった。
お子さんが大好きだったと、ゼミ生のAさんの持ち寄ってくれた絵本『こねこのぴっち』。母子一体から母子分離への時期、外の世界への憧れや家族以外とのコミュニケーションが取れるようになる年齢にぴったり嵌る本である。1954年に岩波書店から出された小型版(縦書き・左開き)と1987年に出版された大型版(横書き・右開き)を持ってきてくださり、その違いも見せて下さった。

『こねこのぴっち』小型版 
ハンス・フィッシャー (著), 石井 桃子 (翻訳) 岩波書店; 改版 (1954/12/10)
『こねこのぴっち』 (大型絵本)
著者 : ハンス・フィッシャー 石井桃子  岩波書店 (1987年11月25日発売)


それに対する先生の解説では、小型版の2見開き分が、大型版の1見開き分に合体させて描かれていること、海外ものを縦書きに仕立て直した結果、進行方向に不具合が出て絵を反転(裏焼き)させたこと。絵の反転で思わぬ不具合が出てきたこと(例えば、『ちいさいおうち』では、車のハンドルの反転、月の満ち欠けの反転)、やはり絵の反転はよくないという結論に至っているとのことを学んだ。
子どもは絵の観察眼が鋭いので、この違和感も大人以上に感じるだろう。

【TEAM3で持ち寄られた本】


我がチーム3で出された「読書年齢と絵本」のために持ち寄られた絵本の数々!一つ一つの根拠に注目したい。

◆『めっきらもっきらどおんどん』
作: 長谷川 摂子 絵: ふりや なな
出版社: 福音館書店 1990年03月
… 4歳5歳が安心。ファンタジーの世界に入って帰って来られる安定の年齢。
◆『がたんごとんがたんごとん』
安西 水丸 作 福音館書店1987年06月30日
… お母さんも口ずさむと赤ちゃんも子どもも喜んでゆらゆら愉しむ。音の面白さがあり、母子一体の時期に相応しいコミュニケーション絵本。
◆『おおきなきがほしい』
作: 佐藤 さとる 絵: 村上 勉 出版社: 偕成社 1971年01月
… お父さんにも好評。憧れの世界に行ける。
◆『くまくんの絵本』シリーズ
作:渡辺 茂男 絵:大友 康夫 出版社:福音館書店
… 作者の渡辺茂男さんは、ご自身の次男三男の生活ぶりをじっくり楽しみながら観察し、そこから想起して絵本を作ったとの裏話あり。
◆『ころころころ』
元永 定正 作 福音館書店 1984年11月22日
… 首が座るころ。大人も子どもも音と絵の色を愉しむのによい。
◆『はやくはやくっていわないで』
作: 益田 ミリ 絵: 平澤 一平 ミシマ社 2010年11月
…言葉も内容も平易で幼児向け絵本とされているが、逆に大人に刺さる絵本。


【読書年齢~私の選書】

講座当日はリアル参加できなかったが、実体験から少々ピックアップした絵本を下記に記し、残しておきたい。

①『おおきなかぶ』

A・トルストイ 再話 / 内田 莉莎子 訳 / 佐藤 忠良 画 福音館書店 1966年06月20日

… 幼児から親子で愉しめる民話絵本だ。昔話は時間と場所が不確定だが、徐々に時間感覚や、大小の感覚が備わってくる就学前からがより理解して楽しめるようになる。我が子たちが、5歳・3歳・1歳という時期から3人一緒に「うんとこしょどっこいしょ」と掛け声をかけて本をゆらして遊び読みしていたので、本はもうボロボロだった。今は私は大人に読んでいる。高齢者には特に人気で、参加者の一体感を醸し出し、一気に会場内をアイスブレイクできる。言うなれば、全世代向きの魔法の絵本だ。

②『地球をほる』

作・絵: 川端 誠 BL出版 2011年09月01日


… 地球という空間認知と概念がある事、英語と日本語という国と言葉が違うことを認識できていることが絵本を理解する条件となるため、小学生向き。地球の内側には恐竜の骨が埋まっていることや、絵本を少しずつ回転させながら読み進めるスタイルであることが小学生の好奇心をそそるようだ。


③『ノンタンぶらんこのせて』

作: キヨノ サチコ  偕成社 1976年08月

… これは、わが長女が1歳半くらいから私の気を引くために「ママ、これ、おんで~」攻撃に使われた本。知育優先より、まず最初は親子のコミュニケーションツールだと思い知った絵本である。大人が”良書”としてリストしている絵本は、なかなか読ませてもらえなかったなぁ。

【つい先日の読み聞かせイベントで】

先日、親子と大人向けの読みきかせのイベントで興味深い体験もした。
主催者側から、「大人向けの絵本を選書してください」と言われたので、子育て中の若いお母さんたちに、今ここだけでも少し我に返る時間をプレゼントしたいと思い、ガチな大人絵本『最初の質問』を読ませていただいた。詩の形式の中にある沢山の質問を坦々と読むだけ、絵も色合いが薄い水彩画の絵本だ。

『最初の質問 』 詩: 長田 弘 絵: いせひでこ  講談社 2013年07月25日


 集まった子どもの年齢が予想よりかなり低め(2歳前後)、だったので、選書があまりにも大人すぎたなぁ、子どもは意味が分からないだろうな、きっと・・などと懸念しつつ、兎にも角にも読ませてもらった。
 せめてもの子どもへの声掛けを…と、
「この絵本は、みんなのだ~い好きなママに聞いてもらいたくて持って来た絵本です。ママと一緒に聞いてくださいね」
と一言添えてから読み始めた。
 すると不思議なことに、子どもたちは声ひとつ立てずにじーっと聞いてくれていた。私の読む言葉に反応して、自分ごとにしてきてくれている様子なのだ。

~あなたは、今日空を見上げましたか~
   「・・・うん、空見たよ」
~雨のしずくをいっぱい貯めたクモの巣を見たことがありますか~
   ・・・絵を指さして「きれいだね」
~ありがとうという言葉を、今日、口にしましたか~
   「・・・ありがとう、さっき言ったよね、ママ」

 中には、絵本をじっと見ているお母さんのお顔と、絵本を交互に見比べて、ママの様子をうかがっている子もいた。

 このような場は特殊だったのかも知れないが、私の中途半端な知識の大人が、年齢を鑑みて選書を制限するナンセンスを感じた一幕でもあった。子どもの順応性、能力って素晴らしい。絵本はコミュニケーションであり、子どもの世界を広げる媒体。そして子どもは、お母さんお好きな絵本は自分も好きなのだ、きっと。


『ベーシック絵本入門』の中に、印象的な記載があったので引用しておく。

生田 美秋 (著), 藤本 朝巳 (著), 石井 光恵 (著) ミネルヴァ書房 (2013/5/8)

絵本活動をする上で常に忘れないでおきたい、心に刻んでおきたい言葉たちだ。
 ■《子どもの発達に絵本が寄与できる3つの条件》①    子どもが読んで欲しいと思う絵本があること。②    いつでも絵本が手に取れる豊かな環境がつくられていること。③    絵本世界を子どもに開いてみせる大人がいること。


【次代の絵本の役割・・・大人へ】


 ミッキー先生の講義では、《哲学絵本》《現代絵本》ジャンルが目新しく、大変共感した。絵本を媒体にして自分で考える、哲学できる絵本なのだ。
絵本を共通言語にすることで外からの視点として受け入れてもらいやすい。そのため企業研修にもされるなど、大人にこそ読んで考えて欲しいもの。絵本の新たな役割だ。私が関わっている「絵本セラピー」はまさにその哲学ジャンルの絵本会と言えよう。
子どもは勿論絵本の第一ターゲットであるが、大人向けにも絵本の処方箋が求められる時代だと感じた。

【最終講座の日には、渾身のチームの学び発表が!】


間もなく来たる8月6日に、リアルで絵本ゼミの締めくくり講座が開催される。この絵本ゼミで知りえたこと、これから活かすべき絵本のアウトリーチをチームごとに発表することになっている。

我がチームは、これまで学んだ絵本の技法を駆使したオリジナル絵本づくりに取り組んでいる。チームメイト6人、それぞれの強みを生かし、協力し合って、今、世界でただ一つのデジタル絵本を完成させようとしている!しかも全世代に親しまれている『ももたろう』がベースだ。
ワクワクしながらチームを盛り上げ高めていく、学びを即実践にする、という意識に、また充実感を覚えている。チームFAとして、いかにマネジメントしていくかも学ばせて頂いていて、この絵本ゼミは知識だけではなく実践に繋げられる助走となっている学び場である。

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