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【書評】江戸の市場経済 歴史制度分析からみた株仲間

本書は、歴史制度分析の視点から日本の近世経済史の見直しを試みることにあり、その中でも特に株仲間を対象に選定して分析を行っている。
株仲間を選定した理由は「株仲間が市場経済を支えて一つの制度と見て、株仲間の機能と存続のメカニズムを歴史制度分析の視点から分析するとともに、その機能をできるかぎり数量的に裏付ける」ことを試みた書である。

本書の著者

岡崎哲二著「江戸の市場経済 歴史制度分析からみた株仲間」
講談社刊、1999年4月10日発行

著書の岡崎哲二氏は、1958年東京都出身で、東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、東京大学経済学部教授。

本書の章構成

本書の章構成は以下のとおり。

はじめに
第一章 経済史の新しい見方
 1 新古典派経済学 市場の経済史
 2 マルクス経済学 市場と分配の経済史
 3 新制度学派経済学 制度と所有権の経済史
 4 歴史制度分析 ゲーム理論からみた制度と契約の経済史 
第二章 近世の市場経済
 1 経済発展の数量的把握
 2 社会的分業の展開と市場の機能
第三章 行政・司法制度と法
 1 徳川政権と制度の整備
 2 法と裁判制度
 3 相対済令
第四章 株仲間の歴史
 1 株仲間の成立
 2 天保の株仲間停止令と嘉永の問屋再興令
第五章 株仲間と市場経済
 1 株仲間停止と取引秩序の混乱
 2 経済成長率の低下と市場機構の機能低下
第六章 取引制度としての株仲間
 1 中世地中海の取引制度 グライフの分析
 2 株仲間による商取引契約の履行
 3 生産活動の組織
おわりに 市場経済と制度

本書のポイント

自然科学分野では「さまざまな要因を逐次コントロールした実験を繰り返すことによって、個々の要因の影響を特定するという研究手続きがとられる」。
社会科学の場合「自然科学で行われるような実験は一般的に難しいが、まれに歴史が疑似的な実験を提供してくれることがある」。
天保の改革によって停止された株仲間は、「まさにその典型的なケース」といえ、「歴史上のある時点で株仲間が停止されたとして、停止前と停止後の状態を比較することによって株仲間の役割を推論する」ことを、数量的な比較分析を含めて本書では行っている。

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