ただのお笑い好きが作ったコント➁いい人

舞台は都会から少し離れた場所にある定食屋
カウンター席とテーブル席が両方ある。
夫婦である幹夫と千枝の二人で切り盛りしている。
閉店15分前、仕事につかれた高橋が入ってくる。

千枝 いらっしゃい
高橋 まだ、大丈夫ですか?
千枝 ええ、大丈夫ですよ。
高橋 良かった、
千枝 もう今日は誰もいないからお好きな席にどうぞ
高橋 ありがとうございます。

高橋、席に座る

千枝 ここら辺にお住まい?
高橋 一応、実はこの辺に転勤になって、つい最近ここに引っ越してきたんです。
千枝 そうゆうことね?この時間いちげんさんってあんまりこないから。
高橋  そっか・・・そうですよねこの時間だと。なんかすいません。自分高橋って言います。
千枝  全然いいのよ。よかったら今後もごひいきにして。
高橋  こちらこそよろしくお願いします。
千枝  はい。あら、ごめんなさい。そういえばまだメニューも聞いてなかった。
高橋  ははは、確かにそうでしたね。なんかオススメあります?
千枝  そうねぇ、今日は・・・
幹夫  今日は魚だ。
高橋  え?
幹夫  今日はいいブリがはいってる。ブリにしろ。
高橋  あ、はい。
千枝  ちょっとあんた。・・・ごめんなさいねぇ、あの人ちょっとぶっきらぼうでね。悪い人じゃないんだけど
高橋  いいえ。全然。じゃあブリ定食一つ
千枝  本当にブリの定食で平気?
高橋  はい、お願いします。
千枝  じゃあちょっと待っててね。
高橋  はい

高橋、漫画を見つける

高橋  漫画置いてあるんですね。
千枝  うん、うちの人が好きでね
高橋  そうなんですね・・・へぇ~ジャンプ派なんですね。
千枝  そう。根っからのジャンプ派なの。
高橋  色々あるな、、、あ!男塾だ!
幹夫  ?!
高橋  これ兄が好きで、昔から読んでたんです。
幹夫  珍しいな今どき
高橋  友達に話しても全然わからないですけどね。
幹夫  俺が学生時代の頃に連載してたからな。
高橋  そうなんですね。どのキャラが好きですか?僕はずっと伊達臣人(だておみと)が好きなんです。
幹夫  あ~覇極流千峰塵(はきょくりゅうちほうじん)な
高橋  そうです!あの槍裁きがかっこよくて。
幹夫  まぁな
高橋  大将はだれが好きなんですか?
幹夫  ん?
高橋  キャラですよ。キャラ。
幹夫  ・・・赤石だ。
高橋  でた!一文字流斬岩剣(いちもんじりゅうざんがんけん)の赤石剛次(あかしごうじ)。渋くてかっこいいですよね。

幹夫、恥ずかしそうに微笑む

千枝  あれ、珍しく笑顔になっちゃって。
幹夫  う、うるせぇ!
千枝  高橋君どう?悪い人じゃないでしょ?
高橋  なんか段々とかわいく見えてきました。
幹夫  やかましいわ!
高橋  すいません。
幹夫  ったく。・・・できたぞ
千枝  はい、お待たせしました。ブリ定食です。
高橋  ありがとうございます。いただきます。

高橋何口か食べて、手が止まる。

高橋  (心の声)・・・おいしくない~!うそでしょ。まっず。びっくりしたわ、焼き魚がまずいの初めてだわ。(魚食べる)パッサパサじゃない。水分がゼロだわこれ。え~どうしよう。(ご飯を食べる)べちゃべちゃ~すごくべちゃべちゃ~。ほぼおかゆだよ。パサパサの魚とべちゃべちゃのご飯のコラボレーションじゃん。最悪だわ。
千枝  高橋君
高橋  はい、おいしいです!
千枝  あ、本当?!よかった。最近あんまり定食食べてくれる人いなくてうちの人不機嫌だったのよ。常連さんも結構いるんだけどお酒とかおつまみしか頼んでくれなくてね今日高橋君が久々に定食頼んでくれて、すっごいうちの人も喜んでくれてる。共通の好きな漫画もあるしね。ありがとう。
高橋  (心の声)奥さんすごくいい人だよ。笑顔を絶やさず不器用な旦那を支える奥さん。おしとやかの中にたくましさを感じる奥さん。言えないよ。まずいって言いたいけど言えないよこれは。
幹夫  おい
高橋  は、はい。
幹夫  しょうが焼きだ。作りすぎちまったから食いたきゃ食え
高橋  ありがとうございます。・・・(心の声)大将もめっちゃいい人だよ!ぶっきらぼうで第一印象はとっつきにくい印象をうける大将。しかし趣味である漫画で好きな作品が一緒である共通点を見つけたとき不器用ながらも心を開く大将。なのにどうしてこんなにまずいの・・・多分常連さんは二人の人柄で来てくれてんだろうな。(生姜焼きを食べる)・・・うまい。
千枝  おいしい?一番人気のメニューなの。他の物も頼んでほしいぐらい。
高橋  そうなんですね。・・・(心の声)これが一番マシなんだろうな。・・・そういえば昔なんかの番組で生姜焼きはだれが作ってもおいしいって言ってたな。
千枝  あ、よかったらカクテル飲まない?
高橋  カクテル?大将カクテルも作ってるんですか?
幹夫  作ってるのはこいつだ。飲みたきゃ作ってもらえ。
高橋  奥さんが作ってらっしゃるんですね。
千枝  そうよ。よかったら飲んでもらえる?
高橋  じゃあ、一杯良いですか?
千枝  ありがとう。ちょっと待っててね。

千枝、用具を使い素早い手つきでカクテル作る

高橋  すごい手つきですね。バーで働いてました?
千枝  ごめん今集中してるから
高橋  あ、すいません。・・・急に怖かった。
千枝  ・・・できたわよ。
高橋  ありがとうございます。(カクテルを飲む)・・・(心の声)バーを開け。定食じゃなくてバー一本でいけ。・・・めっちゃうまいじゃん。こっちでやっていく方がいいよ。
千枝  どう?
高橋  すごくおいしいです。
千枝  本当?よかった。他にも種類あるから今度また飲みに来てね。
幹夫  ここは定食屋だ、ばかやろう
千枝  私のカクテルの方が人気だもん。
幹夫  うるせぇ!
千枝  まったく、ごめんなさいね。
高橋  いえいえ。
千枝  あ、そういえば全然ご飯食べれてない。
高橋  ・・・あ、本当だ。・・・では、いただきます。

 高橋、必死に食べ進める。

高橋  (心の声)満喫のご飯の方がうまい。280円だった満喫のどんぶりのほうがうまいぞ。・・・ポテサラもスーパーよりまずい。・・・なんでじゃがいもが生っぽいんだ。ちゃんと柔らかくなってるか確認しなきゃダメだよ大将。

 高橋、完食する。

高橋  ごちそうさまです。お会計お願いします。
千枝  はい、お会計1000円です。
高橋  はい・・・あれ?でもカクテル飲みましたよ
千枝 合ってるわよ。定食700円とカクテル300円
高橋 (心の声)飯はまずいけどめちゃくちゃリーズナブル
千枝 ちょうどお預かりします。・・・高橋君。
高橋 はい。
千枝 こんなお店でよかったら、今後ともよろしくお願いします
高橋 (心の声)いい人~!もう次来るしかないじゃん。
幹夫 おい。
高橋 あ、はい。
幹夫 お前自炊はするのか?
高橋 出来る限りはしようと思ってます。
幹夫 そうか、ぶりが余ってるんだ。迷惑じゃなきゃもらってくれねぇか?
高橋 (心の声)いい人~!初対面で普通ここまでするか?
千枝 高橋君がよかったらでいいんだけど。
高橋 はい、すごく助かります。
幹夫 おう、ちょっと待っとけ。・・・よし、20切れぐらいあるから持ってけ
高橋 (心の声)いい人~!そしていい色~!一目見ていい魚だよ。ていうか20切れ?一人暮らしに20切れ?俺が定食屋やる勢いだよ・・・ありがたく頂戴します。今日は色々とありがとうございます。お休みなさい。

高橋、出ていこうとする。

幹夫 おい。
高橋 はい。
幹夫 ・・・俺は、ドラゴンボールとかワンピースの類も好きだ。
高橋 ・・・今度、語り尽くしましょう!

高橋、店を出る

高橋 いい人~!

fin

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