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「自分の言葉>翻訳機」を体感させる授業びらき

新年度が始まり、授業びらきのシーズンとなりました。私も勤務している高校でいくつかの英語の授業で授業びらきを行ったのですが、今年ふと思いつきでやってみた活動・話が生徒からの反応が良く、とっっっても嬉しくなったので紹介したいと思います。
授業びらきのテーマは

①英語が苦手な生徒でも、自信を持って話せる雰囲気づくり
②AIや情報機器が発達した現代社会でも、自分の言葉で伝える意義、楽しさを体感してもらう

の2点で、紙1枚とペンがあれば気軽に行うことができます。

①英語を学ぶメリットを考えさせる

まず初めに、「英語が少し理解できたり、話せたりしたら将来どんないいことがあるだろうか」と問いかけます。生徒からは

・訪日外国人に道案内ができる。
・洋楽の意味がわかってより楽しめる。
・海外の人と友達になれる。

などの答えが返ってくるでしょう。英語が使いこなせると日常生活や仕事が少し便利になることは生徒もわかっています。

しかし!今の時代、スマホやアプリを使えば簡単に自動翻訳ができます。スマホの画面上で翻訳された英語見せ合うことで十分意思疎通ができます。このような世の中で、一から英語を学ぶ必要はあるのだろうか…とあえて否定的に問いかけます。

②様々なコミュニケーションの形を体験

その答えを考えるために、簡単な活動を3つ行います。

生徒同士でペアを作り、1分間日本語で、「昨日したこと」について自由に会話させます。ペアでじゃんけんをし、勝者が「昨日何しましたか?」と問いかけ、後は自由に会話させます。(じゃんけんと会話の起点のルールはなくても構いませんが、じゃんけんは意外と生徒が盛り上がりますし、会話の出だしでモタモタすると話しにくくなるので。)

②生徒が座席を移動し、新しいペアで同じく1分間、日本語で「昨日したこと」について話させますが、今度は紙とペンで筆談をしてもらいます。声を出すことを禁止します。

③生徒が座席を移動し、新しいペアで同じく1分間、日本語で「昨日したこと」について話させますが、最後はジェスチャーと口パクのみで会話をしてもらいます。当然、声を出すことを禁止します。

生徒は ①普通の会話 ②筆談 ③身振り手振り の3つのコミュニケーションの形を体験しました。ここで生徒に問いかけます。以下、実際の私と生徒の会話です。 

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T:教師 S:生徒

T:「この中で一番楽しくて、よく伝わったのはどれ?」
S:「①(普通の会話)!」
T:「では、次に楽しかったのは?」
S:「③(身振り手振り)!」
T:「意外と伝わったよね。では、②(筆談)は?」
S:「時間がかかる」「めんどくさい」
T:「そうだね。確かに、正しくは伝わるけど、モタモタするし、間が悪いよね。」

T:「では、これを英語の会話に置き換えてみるとどうだろう。①(普通の会話)は英語がペラペラで、何不自由ない状態。③(身振り手振り)は、英語が下手でも、なんとかジェスチャー込みで伝えようとしている状態。聞き手も頑張って理解しようとしたよね。」

T:「では②(筆談)は?これが、翻訳アプリを見せ合っている会話だね。正しいけど、間が悪いし、他に比べると少し楽しくなかった。これからグローバル社会になって、英語で会話をする中で、こんなコミュニケーションばかり取りたいかな。もちろん、仕事上の正確性が問われる時はいいけれど、楽しい食事の時や、遊んでいる時はどうだろう。」

T:「みんなの目標は、③(身振り手振り)ができるようになること。間違いを恐れず、単語をつなぐだけでも伝えようとする姿勢を身につけてほしい。そうすれば英語を楽しむことができるし、楽しくなれば①(普通の会話)を目指せる。そして、その姿勢は日本語でも活かせる。英語を学ぶだけではなく、英語を通じて「コミュニケーション」を学びましょう。授業中の活動でもそれを意識してください。」

S「先生、ちょっと胸に刺さったわ!」
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生徒が頷きながら真剣に聞いてくれました。

そして、この雰囲気のまま、最後にペアをかえて、1分間、昨日したことについて英語で話させます。当然、教師からの指示も全て英語です。生徒は一所懸命、身振り手振りと単語で1分間会話を続けました。笑い声とカタコト英語が軽やかに飛び交っていました。

③自分の思い

身振り手振りと単語を繋げて言えたらOK!なんて、英語教師が立てるべき目標ではないのかもしれません。しかし、誤りが許容され、伝わる成功体験をたくさん積んでほしいという思いが根底にあります。授業の最初、「英語が好きな人」と言う問いに3人しか手が上がりませんでした。自己肯定感が低く、すぐに諦めてしまう生徒もたくさんいます。そんな生徒たちが自信を持ってコミュニケーションを取り、その姿勢を社会でも発揮できるようにする。1年間、そんな授業を展開していきたいです。

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