音楽というスペース Ⅱ 〜レッスンの巻〜

昨日の室内楽レッスンはピアニストに大越崇史さんをお招きしてのピアノ付きレッスン。歌科のレッスンには必ずピアニストがいるのに、なぜ管弦のレッスンはコンサートや発表会前しかピアノがいないのかと昔から不思議に思っていました。

勿論技術向上に対する奏法的な時間は必要なのですが、コードネームでいうCのドと、Fのドと、Dmのドは全く違うドなのに対して、それを識別する方法は和音を聴く事。慣れてくればスコアを読んで耳の中に音が響いてきますが、やっぱり百聞は一見(聴)にしかず。

ということで、皆さんモリモリのプログラムをご用意いただいて、ダマーズの演奏会用ソナタ、ゴーベールのファンタジー、タファネルのアンダンテパストラールとスケルツォティーノ、ヘンデルのハレソナタ2番と、大越くんに7時間弾きっぱなしという苦業をお願い致しました。このままハーフプログラムのコンサートが出来そう!

会場は2/16同様、中野のStudio RedBox。素晴らしいニューヨークスタインウェイとフルートにぴったりな飛ぶ音響

今回はプロの方も愛好家の方もいらしたのですが、皆さん本当にストイックに音楽と向かい合っていて、フレージングや抑揚や身体の使い方から声やダンスや音楽の真髄とは・・などいっぱいお話しました!

やっぱりプロアマ関係なく、音楽の真髄や体のこと、呼吸への意識、楽曲に対しての理解について話していきたい。だからレッスンにいらっしゃる方々はみんな物凄くストイックだし、本当に良く練習してされてました。こういうのって、お互い相乗効果だと思うんです。

分析や調性感についても、講師側が深く理解して噛み砕けば専門用語あまり使わずとも説明は出来るわけで、これは小沢征爾さんとマルサリスの音楽講座でも見て分かりますが、案外掘り下げた方が、理解が出来るのではないかと思っています。

最近は、時短や簡単にできる方法が流行りですが、そんなに人生シンプルじゃない。人間一人一人がシンプルではないように、音楽や文学だってそんなシンプルじゃない。確かに学生時代ラブレターに「好きです」と書いてあったら嬉しかったかもしれないけれど、誰かと暮らし始めたら「今日の漬物の漬かり具合は最高だね、生姜も入れた?いいセンス!」とintimate な一言が嬉しかったりする。いや、勿論「好きです」も嬉しいでしょうけど、その後ろにある繊細な小さなディティールがとても愛おしくなる。

あとレッスンでは私がピアノ好きなため、「ピアニスティックにフルートを奏でる」点を濃いめにお話しました。混じる音というのは音質を和らげる事のみではなく、倍音や息とピアノ和音との重ね方から入る事や、打鍵に近い腹圧や、物理的なこと、解剖学的なこと、そいういう点にも少しで良いから目を向けたい。

こう聞くと硬いレッスンに聞こえるけれど、私のレッスンの目標は「自由を掴むには」が一番。自由に生まれ育った私が「どうやってこの自由さをビジュアル化して教えていくのか」と悩んだ逆パターンなメソッドなのです。音楽は人生なので、仕事だからとか趣味だからとか区切らずに全力で音楽に恋してほしい。音楽は欲望と孤独との寄り添い。

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