7週目と仮想音楽家レジデンス

フランスの自宅待機も6週目がそろそろ終わります。どんな毎日かといえば、あまり通常営業と変わらず、レッスン日にSkypeやZoomを使ったレッスン、そしてビデオ会議(これは通常時はない)、フルートの練習、運動といういつも通りの感じ。

元気かと聞かれたら未だかつてないほど元気。何せ夜家にいるんですから。通常ならレッスンや演奏の仕事で、21時台に家に着いていたらいい方。「ふつう」の時間にゴハンを食べて、朝も普通の時間まで寝れて、家事もできて、練習もできて、レッスンの用意は地獄のように時間を割き、疲れたら友人と一緒にやっているダンスエクササイズで一時間ほど踊ったりしている。

では何か?と聞かれた、ずっと宙ぶらりんな気分なのです。

どこを目指して行ったらいいのか。どこまで続くのか。いつ演奏できるようになるのか、いつ日本に帰れるのか。いつ家族に会えて、いつ友達に会えるのか。いつ、いつ、いつ。

多分欧州で自宅待機をしている人はずっとこんな感じなのかもしれない。フランスにおいては、許可されていない外出は罰金取られますし、許可書を持たずに外出を続けた場合は禁固刑になるほどの厳しさ。でもそれくらいしないと、治らない。身の回りの人もウィルスに苦しんだし、家族を亡くした人もいる。だから家から出ないことが自分と家族、そして隣人を守ることになるんだと。

でもやっぱり宙ぶらりん。私からフルートを取ったらただのモフモフ動物が好きなおばさんなのです。で、モフモフを生かすには、私はフルートで稼がねばいけない。幸い音楽院の仕事は、ビデオレッスンをすることでお給料が保障されているので、遠隔で難しくはあるけれど、生徒同士の多重録音のプロジェクトを立ち上げたりしてどうにかやっています。

でも、でも、やっぱり「演奏する」という私の生き甲斐を抜いては、私は抜け殻だなと今回感じることが多かった。だから水の中で浮力を失って沈んでいったり、また演奏して浮力を得て浮いてきたり、なんとなく宙ぶらりんな日々を過ごしています。

演奏する時は、そこに向かってもうチョロQのようにずどーん!!と向かっていく性格なので、どんなに小さな企画でも、二人住まいなのに10人用の大鍋でカレー作っちゃうくらいの勢い。その方が美味しいから。

そんな中、近年共演しているチェロ奏者の北嶋愛季さんの紹介で、作曲家のわたなべゆきこさんの主催する仮想音楽家レジデンスに参加させて頂くことになりました。約1分の作品を作曲家が書き上げ、それを演奏家が自宅で録音・録画していくプロジェクト。私はすぎやまかずこさん、そしてSeongmin Jiさんの2作品に参加させて頂きました。

すぎやまさんの作品はこちら
Kunnerekcikap アルトフルートとフルートの両方で演奏ができ、多重録音も可能という幻想的な作品。現代奏法は少ないのですが、間合いを読むような静と動が垣間見れる作品。フルートとアルトフルート、そして多重録音の3バージョンお聴き頂けます。

そして、Seongmin Jiさんは画家のパウル・クレーに捧げた Hommage à Paul Klee Ⅲ。様々な現代奏法が全て入っているものの、絵を描くように美しく音が飛びかう作品。綿密に書かれた楽譜だったので、少し録音しては相談し合い、Seongminさんのイメージするクレーの世界と、私の思い描くクレーの世界との掛け合いという時間。ぜひお聴きください!

やはり音楽家は創作していることで生かさなれる。自家発電されるそのように思います。Creation. それが我々の原動力。生きながらえて、また人々の前で演奏できるようになりますように!

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