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初めての朗読劇発表会

先週末は「からだと声の朗読劇」(プレイバック・シアターラボ主催)の発表会だった。発表会といっても、それに向けて稽古を積んできたということではない。月1回だし、内容もその都度違っている。文章を読んだり、歌ったり、遊んだり、様々な角度から「からだと声」を感じ、楽しみながら表現するという体験を数ヶ月重ねる。そしていよいよ発表会が近づいてきてから、その準備に取り掛かる。

リハーサルは2回。講師の由梨さんが、ファシリテーターから演出家の顔になる。慌ててシャンと背筋を伸ばすわたしたち。にわか朗読劇団が生まれる瞬間だ。

ナレーションの立ち位置や、自分の役が変わることを意識しながら移動すること、重心を低くして声を出すこと等、人に見せるための動き方を教わる。「おぉ!こんな世界とは無縁だったわたしが、今、演出されてる!」と不思議な新鮮さを感じる。人生何があるかわからないものだ。

演出指導をする由梨さんの姿を見ていて、あぁ由梨さんは演劇や表現の専門家だったんだ、プロだったんだと、当たり前のことを思い出す。わたしたちみたいな素人を相手に指導して物足りなくならないだろうか?その高い専門性に見合うほどのものを、自分たちが持ち合わせているとは思えなかった。そう伝えたら、由梨さんは「わたしはこういうことがしたいの」と言い、市井の人から生まれる芸術の魅力について語ってくれた。

群読 平家物語「那須与一」

限られた稽古時間で、情景のイメージを共有し、互いの気配を感じ、音のリズム、強弱、スピードを合わせていく。いや、まだ息が合ってないんだけど、合わせようとしていく。

由梨さんは「今は息を合わせようとしている段階だけど、それがだんだん息が合っていくようになる。それを目指している姿を観客に見せたい」と話す。そうなんだ、そんな世界があるんだ。自分が声を発すれば、周りの人たちの声や呼吸や響きと合ってしまう、そういう世界があるんだなぁ。

本番では、ただただ一生懸命朗読する。隣にいるウララさんの声が一瞬自分の声と重なり合って、なんだかちょっと響き合った気がしてハッとする。もしかして、これ、互いの声が合っていくとすごく気持ちいのかもしれない、と瞬間的に思った。

ひとり朗読

それぞれが自分で選んだ作品を持ってきて、順番にひとりで朗読する。わたしは、ルーマニアで生まれ育ち、現在人類学者として日本に暮らすイリナ・グリゴレさんの自伝的エッセイ『優しい地獄』の中の一節を読んだ。おばあさんの神秘的な存在感について書かれた箇所だ。

大阪のフレル朗読劇団の発表会の動画を見たことに影響を受けた。不思議な会場で、不思議な人たちが、不思議な物語を語り、不思議な踊りを踊る。わたしは、スマホに映るその不可思議な世界に思いがけず引き込まれてしまった。自分がその不思議な世界に入っていたと感じたということに、驚いた。そして、わたしが読む一人朗読は『優しい地獄』にしようと、なんとなく心が決まった。

わたしが読んだ一節は、静かで神秘的で美しいシーンだった。その神秘的な時空間を観客も感じてくれるといいなと思いながら読んだ。

朗読劇 「すずめの恩返し」(アイヌ口承民話)

主人公のすずめ役をさせていただいた。観客の皆さんに、ハマり役だった、劇が終わった今もかわいいスズメに見えて仕方がない、と言われてうれしはずかし。

次にもし朗読劇をやるなら、セリフをしっかり覚えてみたいなぁ(今回は覚えてなかったんかい!って?いえいえがんばって覚えたんですけども、うろ覚えで台本を見ながらやりました笑)。頭で考えなくても口をついてセリフが出てくる時、何を経験できるのだろう?そこにはどんな試行錯誤があり、どんな世界が広がっているんだろう?入り口に立って、薄暗く霧がかった深い森の奥を覗き見たような気持ちになった。(いやぁしかし、実際そこまでセリフを覚えられるかと言ったら、それは結構ハードル高いわ〜・・・と、つい逃げ道を作ってしまうのだった。)

それから、今まであまり馴染みがなかった芝居を観客として見に行ってみたいな、とちょっと思うようになった。ささやかながらも演じる側に一度でも立ったことで、もしかしたら観る側になった時も何か感じ方が変わったり広がったりしているかもしれないと思うから。

未知の扉から、未知の風を感じる

わたしは元々、朗読や朗読劇に興味があったわけではなかった。ワークショップのファシリテーションを由梨さんについて学びたいという想いがまずあって、師匠がやることなら自分が関心があるかどうかに関係なくなんでも体験してみにゃいかんでしょ、という動機で参加したのだった。だから、もしそれが歌でも、書道でも、料理でも、わたしはやっぱり参加したと思う。

こういう風に新しいものに出会うのもいいなって思う。”自分の関心”という想定範疇を超えたところの扉が開かれる。朗読ってなんだろう?朗読劇ってなんだろう?自分はどんな体験をしていくんだろう?と思いながら参加するうちに、扉の向こうの未知の世界から吹いてくる心地いい風を頬に感じていた。

芸術やアートというとなんだか大袈裟な感じがするけれど、そういうものが身近な営みとして生活の中にあることは、いいもんだなぁ。


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