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文豪が愛した旅館

静岡県浜松市三ヶ日町に、志賀直哉、里見弴、今村昌平、木下恵介などの数々の文豪や映画監督たちが台本を筆を執るために滞在した割烹旅館『琴水(きんすい)』がある。⁡

文豪が愛した旅館。

もう、その響きだけでテンション上がって、そこに泊まれば、文才が降りてくるような気がして、泊まりたい泊まりたいと思っていた。

今年の夏、その願いを叶えた。

東京でクリエイティブディレクターをやってる友達が仕事で浜松に来るついでに、遊んでくれることになった。そこで、「文豪の愛した旅館に泊まろ!」と彼女に懇願し、一緒に一泊することにした。

気取らない雰囲気の『琴水』は、奥浜名湖の畔に佇んでいる。浜名湖は遠州灘と繋がった汽水湖で、湖の南部つまり遠州灘側ではサーフィンやウェイクサーフィンなどアクティブなスポーツをしている人が多く躍動感を感じるが、奥浜名湖はとても穏やで、やさしく小さな波が寄せては返している。

夜、窓を開けて縁側に黙って座っていると、ゆったりとした、でも、途切れることのない小波の音が、私の脳と身体をほぐしてくれる。

その日はあいにくの曇り空だったが、霞んだ月が見えた。宇宙の光は、それ相応の宇宙空間を飛び越えて地球に届くという。ベガやアルタイルのように何光年もの時を越えて私たちと同じ空間で輝いているという。それらの星と比べると、月は地球の近くにあるので、そんなに長い時を隔てて私たちのいる空間にやってきたわけでなないが、月の光も現在の私たちのいる空間とは異次元のものだ。月の光に誘われて異次元に吸い込まれそうな気分になる。

はるか遠くの海とつながっている水の音、異空間からの光と隣り合わせになって「ああ、自然の中で生かされているのだなぁ。」と感じた。

自然を感じることができるのは、和室ならではの心地良さだ。山と湖の静かな自然に囲まれた場所で自然と調和する旅館に泊まることができて、とても幸せだった。

文豪の泊まった場所に泊まったからと言って、急に才能は、もちろん、降りてはこなかった。でも、心穏やかに素直に自分自身を見つめることができた。この歳になって旅館に泊まって、やっと、自分を見つめる術を知った。自然のことわりのように、頑張れる時は全力で頑張る、疲れたら休む、より良く生きることを続ける、などなど、いつでもどんな時でも、自分を見つめて、自分自身に問いかけることが大切だと思った。

夜の『琴水』
天竜の檜のお風呂
窓の下の目隠しは葛の和紙
朝の『琴水』
朝起きたてに「三ヶ日みかんジュース」
かわいいグラスで朝の水分補給
朝ご飯
穏やかな奥浜名湖
リフレッシュ中の友達
絶え間ない海の音








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