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【1】わたしはなぜ、天然繊維を追求するのか/大量消費社会との決別


皆さま、初めまして。ファッションデザイナーの野口貴子と申します。
私は20代の前半から、かれこれ30年ほどアパレル業界におり、衣服のデザインに携わっています。

ファッションデザイナーという肩書きの方々は世の中にたくさんいらっしゃいますが、そのなかでも私が少し変わっているのは、「天然繊維」だけを扱い、追求していることです。
天然繊維とは、シルク、ウール、コットンなど、100パーセント自然由来の繊維素材のことを指します。

私を天然繊維の専門家と言ってくださる方もおられますが、学問として研究するというより、衣服の商品開発に日々携わりながら、素材そのものの活用法や特徴を探求することが本業です。

「なぜ、天然繊維なのか?」 と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。

確かに少し前の時代は、化学繊維の方が圧倒的にメジャーでした。
各アパレル量販店は化繊(化学繊維)の衣服を大量生産するスタイルが20世紀までの主流でしたから、多くの人はあえて天然繊維を好んで手に取ることもなかったでしょう。


ですが21世紀に入り、少しずつ、大量消費型ではなく上質でナチュラルなものを長く大事に使う価値観へと移行してきています。これは全世界的に起こっているムーブメントです。

加えて、今年の春から猛威をふるっている新型コロナウィルスの影響により、世界的にその意識が加速しているように感じます。
目の前に起こる危機に備えること、より持続可能(サスティナブル)な生活に変化させていくことの必要性を多くの人々が感じることになったのでしょう。特に被害が甚大な欧米諸国では、その意識が強くなっています。

一方で、ロックダウンの状況下で時間に余裕ができたことから、より上質なものを求め、自然由来のものを見つめ直す機運が高まったとも言われています。
たとえばイギリスでは、伝統的な天然染料による染物に興味をもつ人、自らすすんで染色を体験する人が増えてきているそうです。

そのような社会的事情もありますが、そもそも本質的に人間は自然が作った動物ですので、潜在的に"天然" "自然”で心地の良いものを求めている生き物であるはずと私は考えています。
危機的状況に陥ったときに本能的に望んでいたものに行き着くのは自然のなりゆきです。

世界的なパンデミックの危機を経験し、大量消費社会に限界を感じた世界の人々は、いまこそ本当の「心地よさ」に目覚めているのではないでしょうか。
天然繊維は今後ますます注目され、必要とされる分野になると私は確信しています。
この度のコロナ禍を経て、私の知っている情報をより多くの人々にお伝えしたいと感じ、「note」での連載をはじめることに致しました。

※初回は概要的なお話をしました。次回は、私の半生をふりかえりながら、天然素材を求めるようになった理由をお伝えします。

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