職場で上司と話をしていた。その上司は、僕よりも1つ歳下であるが、職場での経験は2倍近くあり、すでに役職を持っている。彼女は、とにかく、仕事をこなす。すこぶる優秀な人であると僕は思う。
しかし、本人には、自身が優秀であるという自覚はないらしい。
というのは、上司は、自分は一生懸命に仕事をこなしてきただけなのだと、心から思っているようだ。つまり、それ相応の労力を使い、努力をしてきたという自負はあるが、それは自身の能力とは関係がないと思っている。
上司:「ちょっと仕事が多すぎるよね」
僕:「そうやね」
上司:「なんでかな?」
僕:「それは、上司に仕事を任せたら、やってくれると評価されているからでしょう」
上司:「そうか、仕事をこなせるから、仕事がやってくるんだ」
僕:「多分そうやと思う。こなせなかったら仕事はやってこないよね」
上司:「でも、仕事を任せられたら、どうにかして、こなさないと駄目でしょ。お給料をもらっているんだから」
僕:「そういう考えで、そこまでの量の仕事をこなしているのが、本当にすごいと思う」
上司:「いや、普通やろ」
僕:「いや、普通かもしれないけど、そんな人ばかりではないと思う」
お給料をもらっているから一生懸命に働く
「働くこと」=「誰かのニーズに応えること」だと僕は思っている。サービスや商品を必要としている人に、必要なサービスや商品を届けることで、価値が生まれ、対価が支払われる。
そして、その価値が高まれば、対価も高まる。つまり、いいサービス、いい商品を届けることで、よりいい対価を得ることが出来るようになる。
なので、いいサービスやいい商品を生み出せるかどうかが、自身の対価(収入)を決める大きな要因である、と僕は考えている。
しかし、上司は「お給料が支払われるから一生懸命に働く」と思っている。
例えば、それは自分が行った仕事がどれだけ価値を生み出そうとも、あるいは、どれだけ価値を生み出さなくとも、与えられた仕事を次々にこなし、一生懸命に働くということだ。
僕らの仕事の特性上、価値はお金で表れにくい。
けれども、表すことはできる。例えば、ある一定量の仕事をこなすためにかかる人件費について考える。
ある人が通常3人で行う仕事を、たった1人でこなせば、その人には2人分の人件費の価値があると言えるだろう。
しかし、僕の上司はそんなことは考えない。
与えられた仕事を一生懸命にこなすことが、働くことだと考えているからだ。何人分かの仕事をこなしていることなんて、考えてもいない。
雇用する側からしたら絶対に手放したくない人材
僕の上司は、サブスクリプションサービスみたいなものだと思う。毎月1000円くらいで聴き放題、見放題、読み放題、使い放題。
例えば、インターネットは月額数千円で使い放題であるが、ネットビジネスをする人にとって、月数千円のサブスクリプションサービスを使い、数十万円〜数千万円の利益を上げている。
使う側は、このサービスを評価する。もっと大事な役割を担ってほしいと考える。
使う側のニーズにめっちゃ応えているからだ。
そして、僕の上司は雇用する側のニーズにめっちゃ応えている。
けれども、上司のような人材ばかりではない。
誰しもが僕の上司のようにサブスクリプション方式で「お給料が支払われるから一生懸命に働く」とは思っていないからだ。
おそらく、働いた分だけお給料が支払われる、と思っている人が大半だと思う。
そして、「働いた分」はその当人の価値観で図られがちである。
つまり、「これだけ働いたから、このくらいの給料をもらえるだろう」と考える。
この考えの先にあるのは「このくらいの給料だったら、このくらいの働きで十分だろう」という誤った認識である。
マボロシを見ている人たち
何故、誤った認識なのかといえば、雇用されている多くの人は、自分の働きがどれくらいの価値を生み出しているのか、計算したことがないからだ。特に、官公庁で働いている人はそうだろう。
そして、「このくらいの働き」を判断するのは、雇用する側である。本人の「頑張り」や「一生懸命さ」さらには「労働時間」と、雇用する側の評価は一致しない。
また、働く人の価値を判断し、評価するのは雇用する側であるから、本人の認識の全てはマボロシに過ぎない。本人が自分の生み出した価値を計算したことがないのであれば、本当のマボロシだ。
マボロシは個人事業主を含む経営者の人には全く通用しない。当然のことながら、経営者は、自分が価値を生み出した分だけしか、お給料が支払われない。価値を生み出すために働き、経営しているのである。
話を戻すと、僕の上司はマボロシを見ない。だから、マボロシを見ている人のことが分からない。そもそも、上司の中にマボロシなんてない。
だから、一生懸命に仕事をこなす努力をしない人、つまり、「このくらいの給料だったら、このくらいの働きで十分だろう」というマボロシを見ている人のことが理解出来ない。だから、冒頭のような会話になってしまう。
ライフワークバランスだけは崩さないでほしいという部下からの願い
「お給料が支払われるから一生懸命に働く」この上司の下で働いていると、すごく勉強になる。仕事のこなし方が身につく。タスク管理やスケジュール管理、そして、書類整理の徹底など、僕の上司は仕事をこなすためのスキルの宝庫である。
そして、この上司は、そのスキルを自分自身で生み出していったようだ。つまり「仕事ができる人になる!」系のビジネス書やYouTubeで勉強したわけではない。
おそらく「ライフワークバランスを守るため」、簡単に言うと「定時退社するため」に、自分自身で考え、徹底して効率化した結果、仕事をこなす技術を身に着けていったようなのだ。
こないだ中田敦彦のYouTube大学でやっていた超絶仕事ができる人の仕事術『ゼロ秒思考』の解説動画を見たのだけど、上司は『ゼロ秒思考』の著者がやっている仕事術とほとんど同じようなことをやっていた。
この著者はマッキンゼー・アンド・カンパニーでその仕事術を身につけたらしい。A4用紙に簡潔にまとめてクリアファイルに入れ、タスクを管理するやり方である。上司も同じようにやっていて、マジでビビった。
とはいえ、次から次に仕事がやってきて、大変であることに変わりはないので、部下としては、ライフワークバランスだけは崩さないでほしいと願っているし、僕も崩したくないので、一生懸命に頑張っていこうと思っている。
最後に、僕自身は、「お給料が支払われるから一生懸命に働く」とは考えていない。かといって、マボロシを見ているわけではない。
自身がどれだけの仕事をしているのかを人件費ベースで計算するようにしているし、価値を生み出す努力をし、その価値を数値化するようにしている。
とはいえ、僕自身が何人分の仕事をし、どのくらいの価値を生み出しているのかを把握したところで、それはマボロシ以上現実未満であることは重々承知している。
働きの評価をするのは雇用する側にあることに変わりはないし、雇用する側は全く違う考えで価値を計算しているかもしれない。だから、あくまで、参考として、自分のモチベーション維持のためにやっているだけだ。
みなさんも健康に気をつけて、バリバリやっていきましょう。
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