法案の国会提出に権限を持つのはどの政治家か(LGBT法案の例)


政治関係のニュースは、難しいな、とつくづく思います。

断片的にニュースで情報が出るものの、それがどのような意味をもつのかを理解するには、政治家の役職の意味や政治におけるしきたりについての知識が必要です。

政治家の発言はそれぞれの主義主張によって、違ったりします。政治の背景を理解していないと、だれの言うことを信じればいいのかわからない、という状態が発生します。

LGBT法案は、6月16日に終わる国会での成立が目指されていましたが、おそらく国会に提出されることはないでしょう。その理由は、あるキーパーソンがその旨の発言をしたからです。

今回は、LGBT法案をめぐる一連のニュースを題材に、政策が国会に提出されるまでの流れを説明します。うえで、どの議員の発言を信じればいいのかを説明します。


■与党のプロセス


自民党では、国会に法案を提出する前にその内容を確認し、党の方針にその法律が沿っているかどうかを確認するプロセスがあります。そのプロセスは 3段階です。

①各省庁の所掌に対応した部会
 まず、自民党議員であればだれでも自由に参加できる部会で議論します。この部会は各省庁に対応して設置されたものです。自民党の意思決定は全会一致のならわしがあり、全員が次に進めてよい、と判断した政策しか次のステップに進みません。

ハフィントンポストによると今回のLGBT法案は、5月24日に「内容を成長審議会で議論する」ことなどを条件に了承されています。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/lgbt-law-ldp_jp_60ac1657e4b09604b525ea2f
 

②政調審議会
 政調審議会とは、各部会の上位に置かれる機関です。自民党はボトムアップの組織であるといわれています。部会で議論された内容を踏まえて、改めて政調審議会で検討がされます。政調会長が議長です。政調会長は、党としての政策の方向性を定める責任者といえるでしょう。ここも全会一致が原則です。

毎日新聞によると、LGBT法案は27日に政調審議会で了承されました。
https://mainichi.jp/articles/20210527/k00/00m/010/260000c

③総務会
 総務会で了承を得られれば、自民党としての意思決定が確定します。ここも全会一致がならわしです。議決権はないですが、幹事長や国会対策委員長など、国会でどの法案を議論するかを決めている議員も出席します。
そのため、総務会には、自民党の政策面での検討に加えて、国会の状勢等も踏まえて検討がされます。総務会で、全会一致が難しいときは、総務会長や党の実権を握る幹事長等に一任する結論が出されます。

一任する、という結論が出された場合、一任された人物が、反対している人を説得したり、内容を修正したりするプロセスが発生します。共同通信によると。

LGBT法案は今、党3役(幹事長、総務会長、政調会長)に一任したという段階になっています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4513fccb859c3622e40411d0458c92189681470b

■LGBT法案については一任を受けた党三役の発言が重要。

それでは、この知識を踏まえてNHKのニュースを読んでみましょう。(語尾等を改変しています)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210602/k10013064351000.html

「LGBT…法案について、自民党の下村政務調査会長は、自民党と立憲民主党の国会対策委員長の間で、今国会の提出は見送ることを確認し…た」と明らかにした。」

政調会長は法案の取り扱いについて一任を受けた一人です。法案の取り扱いを判断する権限を有する政調会長が、このような発言をするということは、今国会ではLGBT法案を審議しない、と自民党として判断したということになります。

「今国会の提出をあきらめていない」と発言している議員もいることはいますが、政調会長がそう発言した以上、今国会での成立はないと判断できます。

■まとめ

どの政治家が発言しているかに注意することは、政策の方向性を理解する上で、とても重要です。

このように、ニュースを読む前に基礎知識をいれておくと、その内容の理解が深まるだけでなく、今後発生するであろう出来事を予測することができることがわかっていただけたら幸いです。