調剤のアウトソースについて(規制改革推進会議WGの議論の整理)

令和3年4月20日の規制改革推進会議医療・介護WGでは、調剤業務を一つの薬局で完結するというルールを変更し、一部をアウトソースする、という提案がされた。
 
この議論について、現時点の提案内容と厚労省のスタンスについて整理した上で、予想される今後の展開について書いてみたい。

■議論の内容

 薬局での調剤は、その薬局で勤務する薬剤師が、同一薬局内で対応するのがルール(省令事項)だ。このルールは一か所で調剤を管理し、利用者の安全を確保することを目的としている。


 WGでは、このルールを変更し、薬剤師が服薬指導や服薬後のフォローにリソースを割けるよう、業務の一部について他の薬局に委託できるようにすることが提案された。

具体的には

①処方せん受け取り
②調剤
③服薬指導
④薬の受渡
⑤服用後のフォロー

のうち、

②調剤 と
④薬の受渡

については、ICT化と非薬剤師の育成に力を入れている他の薬局に委託できるようにしてはどうか、というものだ。薬局のあいだでの分業制のイメージだ。

 また、薬剤師が一日に処理する処方せん枚数(40枚)の上限を定めている省令についても、見直すべきとの提案もされた

これについて、厚労省は、業務のアウトソースについては①処方せんを受け取った薬局の責任で利用者の安全を守れるか、②アウトソースが服薬指導や服薬後のフォローなどの充実に役立つかどうか、考えてみることが必要としている。

■注意すべき点

 薬剤師が一日に処理する処方せん枚数(40枚)の上限については、あくまでアウトソースした場合の②調剤と④薬の受渡を行う薬局については、見直しを行うべきではないか、という提案がされている。

 いまのところ、すべての薬局について撤廃すべきという主張がされているわけではない。
 
 また、ICT化と非薬剤師の投入により、調剤業務の効率化を進めることが提案されているが、今のところ、薬剤師以外が調剤をしてはいけない、という薬剤師法19条の規定の改正については、検討課題に上げられていない。

 今回の提案は、アウトソース先の薬局はICT化と非薬剤師の投入によって調剤業務を集約化することをイメージしているが、これは非薬剤師が調剤業務にどのように関わることがありうるのかを明らかにした平 成3 1年4月2日の通知(0402通知)を念頭に置いていると考えるのが自然だと思われる。

■今後のスケジュール


 医療・介護WGでの提案内容がその後どのような流れをたどるかを整理しておく。

 例年の傾向ではその年の5月に規制改革推進会議の答申の骨子が作成され、6月に答申が公表、同じく6月に答申の内容が規制改革実施計画となり、政府の考えとして決定(閣議決定)される。閣議決定は「絶対にやり遂げます」と政府が国民に約束したものと考えてよいので、そこに書いてある内容はほぼ実施(少なくとも真剣に検討)されると考えていい。


 規制改革実施計画では、計画の中に入った項目について実施までのデッドラインを設定している。そのため、役所は自分たちではどうしようもない理由(役所としては法律の案をつくったけど、国会で可決されなかった等)がなければ、デッドラインまでにその項目を実現するために必死で頑張ることになる。

 また、規制改革実施計画の締め切りはかなりショートなものとなっている。
 例えば、オンラインで服薬指導をできるようにすることについては、平成30年6月の規制改革実施計画で「平成30年度検討・結論、平成31年度上期措置」という期限が作られていた。

今回もそのときと一緒の時間軸だとすると、「令和3年度検討開始・結論、令和4年度措置」というスケジュールで、調剤のアウトソースについてのルール変更が行われることがありえる

 結構近いうちに調剤のアウトソースが行われる可能性があるということになる。ひとまずは、6月頃にまとめられるだろう答申をチェックすることが今後を占う上で重要な作業となる。