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VCが感じる株式投資型クラウドファンディング(ECF)の課題点

こんにちは。千葉道場の石井でございます。

私は2012年に教育系スタートアップを立ち上げた起業家だったのですが、M&Aを通してEXITし、現在は起業家コミュニティ「千葉道場」の運営および、コミュニティベンチャーキャピタル「千葉道場ファンド」の投資家として活動しています。

こういった立場ですので、こちらの記事に書かれている内容は「圧倒的なポジショントーク」であることを先にお伝えいたします…!(後述しますが、個人的には株式型に限らず、クラウドファンディング大好きおじさんです)

しかしながら、最近、過去に株式型クラウドファンディングで資金調達をしたことがあるスタートアップのDDを行った際に、社内で議論になったこともあり、その論点+αを(ご本人の許可を頂いた上で)公開させていただきます。

※まだ投資家としては半年程度のキャリアですので、間違いや修正点あれば、コメント・DM・メッセ等にてご指摘いただけると嬉しいです!

※2020年7月15日18:58追記:記事公開後、株式型クラウドファンディングを運営するイークラウド代表の波多江さんとお話させていただきました。個人的に本記事に記載した懸念点はかなり払拭できましたので、是非こちらもご覧ください!

■株式型クラウドファンディングの問題点

早速ですが、こちら思いつくままに列挙していきます。

①VCとして投資しにくい理由

日本国内での上場事例がなく、上場審査の際にどう評価されるのかが不透明。
個人投資家に反社会的勢力(+反市場勢力)が入り込んでしまい、株の譲渡なども難しい場合は、IPOはもちろんM&A、追加の資金調達も困難になる。

(某CFプラットフォームでは)個人投資家の反社・反市チェック及び排除は受付時点で行っているものの、それ以降の責任は取らないと契約書に明記されています。

そのため、万が一入り口で防げなかったりした場合、一発アウトというのはVC業を行っている以上、かなり厳しいなと言う印象です。

②管理コストについて

株主の数が膨大になるため、株主対応が大変。
もし資本政策上の問題で株主を整理する必要が出てきたときの対応コストが死ぬほど高い。

管理部門の方や、株主対応をしたことがある方は理解していただけると思うのですが、株主は増えれば増えるほど面倒な手続きが増えます…汗

自分も前職ではVC8社+エンジェル2名に投資いただきましたが、これだけでもかなりの負荷でした。個人投資家が数十名、数百名いるという状況は考えただけで吐きそうです。

③VC・エンジェル投資家からの調達と比べた際のデメリット

単純に発行手数料が高い。

例えば、手数料20%で3,000万円の資金調達をした場合、600万円+税を支払う必要があるので結構なコストです。

たまにFA(financial advisory:ざっくりいうと資金調達/M&Aのサポートをする人)契約しているスタートアップを見ますが、それでも手数料としては、調達金額の3-10%程度でしょうから、FAと比較しても20%というのは相当高額だなという印象です。

個人投資家の「応援したい」という気持ちは非常に嬉しいものの、いわゆるエンジェル投資家からもらえるような助言などは期待できなさそう。

やはり、エンジェル投資家から資金調達するメリットは、「経験豊富な先輩から、創業初期からアドバイスを貰えてサポートしてもらえること」だと思うんですよね。

自分も前職では現・上司である千葉さんや、夏野さんにご出資いただき、本当に貴重なアドバイスを頂きました。

「応援しているよ」という気持ち自体は、著名経営者かどうかに関わらず、起業家にとって非常にありがたく、夢を叶える原動力になるものですが、せっかく同じお金をお預かりするのであれば、付加価値は大きいほうが経済合理性は高いよね、というお話かなと。

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主にこれらが議論となり、やはりファンドとしては投資しにくいよね、という結論になりました。

一方で、(業務上は難しいものの…)個人的に株式型クラウドファンディングの仕組み自体は面白いなと思っていますし、海外ではIPO事例もありますので、今後日本でも盛り上がる可能性はあるのではないかなと感じています。

そこで、自分自身でも、どうすれば株式型クラウドファンディングが盛り上がるのかを妄想してみました。


■株式型クラウドファンディングを盛り上げるためには?

いろいろ考えてみましたが、やっぱり結論はこれでしょうか。

株式型CFを活用したスタートアップのIPO事例をつくる。

これを言ったらおしまい感ありますが…笑

VCとして投資しにくい理由は、反社・反市を排除できているかというポイントも重要ですが、やはり上場審査を通過するか否かのほうが大きいと思います。

結局は鶏卵問題なので、事例さえ産まれてしまえば、だいぶ投資しやすくなるのではないかなと思います。

また、先述した内容はあくまで自分たちのようなVCが投資しにくいだけで、出資するVCがいる可能性もあるし、エンジェル投資家・事業会社・銀行などからの資金調達については、株式型CFを行っていない他スタートアップと変わらないのではないでしょうか。

そもそも極論を言ってしまえば、VCや事業会社から資金調達しなくたって会社は成長できますし、IPOもできるわけですよね…笑(お前が言うな感はさておき…)


あるいは、こういった発想もあるかもしれません。

個人投資家とスタートアップを直接結びつけるのではなく、SPVのようなファンドをかませることで間接的に投資するのであれば、投資家管理や株主対応などを簡略化できるので、良いかもしれない。

ファンド参加にあたっての諸々の成約やファンドの管理報酬が発生するなどのデメリットはあるものの、個人投資家が一本化されているのであればVCとしても投資検討しやすくなるのではないかなと感じました。(反社・反市の排除にコミットいただくことを前提として…)


■最後に…

このように、株式型クラウドファンディングによる資金調達には、少なくとも現時点において、VCからの資金調達が難しくなる可能性が高いと感じています。(個人的にもどかしさは感じていますが…)

しかしながら、資金調達が多様化すること自体は素晴らしいことだと思いますし、このスキームが一般化したら面白そうだなーと感じています。

ですので、もし仮に自分が株式型クラウドファンディングで資金調達する(or した)のであれば、思い切って「前例がないのなら、俺たちが株式型クラウドファンディングでIPOまで突っ走り、俺たちが歴史を作るんだッ!」という少年ジャンプみたいな熱いストーリーを目指すのかなと妄想していました…笑(ちょっとやってみたい)

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ということで、今回は完全に勢いで書いてしまいましたが、普段はTwitterで色々発信しています。(なぜか、しょーもない投稿のほうが人気)

https://twitter.com/takaki_ishii

起業家の方からのDMも基本的には返信しておりますので、何かあればお気軽にどうぞ。また、フォローいただけると嬉しいです笑。

ではまた。


(2020.07.09 15:04追記)

ふと思ったんですが、別にIPOやM&Aを目指さず、配当目的での株式投資プラットフォームであれば全然問題ないかもですね。完全にスタートアップ村の発想しか持っていませんでしたね…汗

上場などを目指さない企業が、自社のことを応援してくれる投資家を集めたい!という場としては良いのかも。

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