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『失敗の科学』第一章 マシュー・サイド著

いま読んでいる、読み途中の本を読みながらレビューしています。
自分の読書の記録も兼ねながら、皆様にご紹介。

今回はこちら
ディスカヴァー・トゥエンティワン出版
『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』
著者 マシュー・サイド 訳者 有枝 春

久々に電子書籍で読んでます。
註釈に飛んで、また戻って、、、という作業がちゃんとできたのが良かった。電子書籍ベテランになってきたw。

第一章 失敗のマネジメント

医療業界の失敗
航空業界の失敗

どちらの失敗も、人の生き死にに関わる。
この両業界の具体的な失敗事例を対比しながら、「失敗」への姿勢、
「失敗」からなにをどう学ぶかが、未来の失敗の回避や進歩、成長へ
繋がる大切な要素だ、と教えてくれる。

と書くと、題名もあいまって「科学的で論理的な文章、とっつきにくそう、、、」と思うのであるが、出だしから著者の理論に入りやすく工夫されている。

最初は、平凡な4人家族の描写から始まる。家族のお母さんが鼻の手術をするため、病院に向かうところから「失敗」が起こるまで。お母さんが受ける手術は、一般的で難しくないという説明。執刀医はベテラン揃いでまず心配はない、という記述。幼い娘と息子と、手術前にたわむれている様子など平凡に幸せな瞬間が、この後起こるであろう「失敗」を予感している読者には、切なく悲しい場面に感じられる。ちょっとした悲劇の物語の序章のようで、その世界にぐっと引き込まれてしまった。

第一章では、医療の現場で起こる「失敗」つまり医療事故。と、航空事故の歴史を、数字や具体例を交えて紹介。両業界の「失敗」への態度、起こってしまった後の対応の違いを対比しながら、失敗の原因を追求し、フィードバックを得て、2度と起こらないように改善していくことが、進歩、ひいては人の命をヒューマンエラーで失わせないために重要だと語られる。

特に、アメリカの数字であるが、医療の現場で起こる事故で、「回避可能な医療過誤」による死者の数に衝撃を受けた。

つまり、ボーイング747が毎日2機、事故を起こしているようなものです。あるいは、2ヵ月に1回『9・11事件』が起こっているのに等しい。

P.177(電子書籍番号)

なぜ、そんなことが起こってしまうのか?の事例、説明もあるが、より身近に感じられ自分の身にも置き換えられる、学ぶことが出来るな、と思われたのは、「社会的な上下関係は、部下の主張を妨げる」という一文だ。

医療現場の事例では、ベテラン執刀医より、看護師さんの方が早く適切な処置に気づき、医師に声をかける。問題が起きた航空機のコックピットでは、機長に航空機関士が燃料切れが迫っていることを何度となく示唆している。
でも、強くは出れない。看護師さんが執刀医に処置方法を命令することはできない。機長を差し置いて、航空機関士がジャンボジェット機を操縦することはできないのだ。

これは、チームで仕事をしている方なら、何かしら身につまされる出来事があるのではないだろうか。上司が間違っていると分かっていても、強くは言えない。聞いてもらえない。

改善すべきは、人間の心理を考慮しないシステムの方なのだ。

P.509(電子書籍番号)

1979年に事故を起こしたボーイング173便の調査報告書の中で、改善策が示されている。
「クルー・リソース・マネジメント(CRM)」。現在の心理学の分野でも研究されているようだ。クルー間の効果的なコミュニケーションを焦点とした訓練方法。その具体的な方法も示されていて、おもわず自身の事例に引き合わせて考えてしまった。
例えば、こういう時こうすれば~...それかこういうルールを作っておくのが適切か...。

これを企業文化まで昇華・浸透させることができれば、航空業界のように、鉄の塊が飛んでも超安全な飛行手段にすることができる。

その他、いろいろグッとくる名台詞もぜひ読んで確認していただきたいが、
第一章の締めはこちらの言葉を引用して終わりにしよう。

かつて米第32代大統領夫人、エレノア・ルーズベルトはこう言った。
「人の失敗から学びましょう。自分で全部経験するには、人生は短すぎます」

P.433(電子書籍番号)


次回、【第二章 人はウソを隠すのではなく信じ込む】 へ続く....


気に入っていただけましたら嬉しいです。 もっと哲学と数学の話として還元します。