ウィルスとは

現在、ウィルス感染症の世界的流行、いわゆるパンデミックが起きているという事になっていますが、そもそもウィルスとは何かを整理しておきましょう。

細菌とウィルスの違い
(細菌はミクロの単細胞微生物、ウィルスはナノの宿主を必要とする非生物)

細菌は単細胞の微生物であり自信で分裂し増殖出来、抗生物質により死滅させることが出来ます。一方でウィルスは細胞を持たず細胞分裂しないので、生物の細胞に寄生する事で増殖します。生物ではないので増殖が出来なくなることを不活性化と言います。

細菌の大きさは1~10umであり、光学顕微鏡で視認出来ますが、ウィルスの大きさは50~350nm(0.05~0.35um)とさらに小さいので電子顕微鏡でなければ視認出来ません。

ウィルスの歴史

ウィルスの存在は推定されていましたが、視認出来るようになったのは1935年に電子顕微鏡が発明されてからです。ウィルス感染症と思しき記述はギルガメッシュ叙事詩や旧約聖書(レビ記13章)にもあり、天然痘や狂犬病は古代からあった事が確認されています。人類は誕生以来、ウィルスと戦い、共生してきた様子が伺えます。細菌は17世紀に光学顕微鏡で確認され、細菌を病原とする感染症の原因が判明してきましたが、細菌より小さい感染性のある病原の存在は電子顕微鏡の発明まで確認する事が出来ていませんでした。1918年~1920年に世界的に流行したスペイン風邪の病原は、1997年にH1N1亜型ウィルス(Aインフルエンザの亜型)である事が判明するまで病原の正体は不明でした。

19世紀には細菌が通過出来ないフィルターを通過できる病原の確認がされたため、細菌より小さい何かが存在している事が判明していましたが、それが何であるかは説明出来ておおらず、病気を起こす要素の存在が認められていただけでした。電子顕微鏡の発明と分離技術の発展によりウィルスの存在が視認出来るようになったのは20世紀に入ってからなのです。

ウィルスは細胞を持たない非生物なので、生体に寄生する事でしか増殖出来ません。本来の宿主に寄生している状態では病的変化をもたらしませんが、他の生体に伝播し寄生すると病的変化をもたらす場合があります(感染)。

感染した生体は、その免疫システムが抗体を作って攻撃し、不活性化させることで終息します。ウィルスの種類は確認されているだけで3万種あり、亜型や新型が生まれています。ウィルスを絶滅させることは不可能ですので、人類はウィルスと共生しますが、免疫の獲得が病原としてのリスク回避になります。

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