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鹿島アントラーズ 2021→2022シーズンに向けて

2021シーズンの結果

清水との開幕戦を1−3の逆転負けで落としスタートに躓くと、8節で2勝しか挙げられず15位に沈み、ザーゴ監督を解任。後を継いだ相馬監督が最終的にJ1リーグ4位でACLプレーオフ出場権獲得の可能性を首の皮一枚残すところまで追い上げたものの、タイトルを誓ったチーム創設30周年のシーズンとしては失敗と評価せざるを得ない。

相馬監督も今シーズン限りで退任が決まっており、2020シーズンから取り組んできた「建て替え」は明確に失敗・後退した。2022シーズンはまたリスタートが必要になる。

これまでの鹿島のやり方

鹿島は、クオリティに優れた選手たちによるピッチ上の判断力と、勝利への執着による球際の強度で20冠ものタイトルを勝ち取ってきた。

今に至るまで編成や補強もそれが徹底されている。クオリティ=献身的に走れるメンタリティ、球際で戦えるフィジカル、局面で上回れるテクニック。総合的な能力値の高い選手たちを集め、そのレーダーチャートの広さによる対応力とオールラウンドさで勝負所を勝ってきた。

フットボールが選手の質で戦うもののままならば、質の高い選手たちが勝利のためにベクトルを一致させられる鹿島は強い。

ただ、モダンフットボールはセンシング技術とデータ分析技術の向上によってもはやロジックに分解されており、すでにフットボールは質での殴り合いから戦略ゲームへとその姿を変えている。

戦略=ゲームモデルに基づいて編成されたチームは、その成り立ちから必然的に戦い方が徹底され、その「徹底さ」は選手の質の差を埋めるばかりか上回ることも珍しくない。

当然鹿島もそれは認識しており、モダンフットボールへアップデートするべく、ザーゴを監督に招聘し「リフォームではなく建て替え」を断行したはずだった。

ただ、いきなりザーゴの理想の編成ができるわけではない。結局、現有の「総合的な能力値の高いオールラウンドな選手たち」では目指すゲームモデルの徹底にまでは至れず、不運なことにコロナ禍でザーゴがリクエストした選手たちの合流が間に合わないまま、プロジェクトは打ち切らざるを得なくなってしまった。

後任の相馬監督にとっても、当然スカッドはリクエストによるものではなく引き継いだものにすぎない。一時は降格圏もチラついていたチームをACL出場権が狙えるところまで引き上げた功績は大きいが、タイトルを誓った30周年の節目を無冠の屈辱で終えた結果は失敗だと言わざるを得ない。

つまり、監督の目指すゲームモデルに沿う編成を用意できなかった強化部の責任とも、与えられたスカッドでゲームモデルを確立させられなかった監督の責任とも、提示されたゲームモデルを実行できなかった選手の責任とも言えるわけだが、それは何も鹿島だけが何か不利な条件を課せられていたわけではないし、そもそもそう都合よく全部が揃うことなどない。

では来季どこから着手するべきか?

特定の監督に全権を渡し、スカッドの大半を入れ替えて理想のチームを作らせる方法もあるが、資金的にもフィロソフィー的にも鹿島にそれはできないだろう。

ジーコスピリッツとともに育ってきたユース出身選手や歴代のレジェンドたちから背番号を託された選手が新任監督の意向だけで無情に放出されるのはサポーターとしても耐え難い。

となると、基本的には現有スカッドをベースにしながら、彼らがその持てるクオリティを最大限に発揮できる組み合わせと戦い方を、ゲームモデルの雛形として仕立てられる監督・コーチングスタッフの選定が肝になる。

そもそも選手たちの質はリーグでも屈指なはずなので、その力をスペック通りに発揮できる型を構築して「徹底」さえできれば、川崎と言えども互角には戦えるはずだし、さらにその型の弱点を突く「戦略」を立ててくる相手に対する「戦略=プランB」のオプションを持てれば、そう簡単に負けることはないだろう。

そうして勝利を重ねていく中でこそ、お仕着せや付け焼き刃でない、チームの特性と自信に根付いた本物のゲームモデルを手に入れられるのではないだろうか。

次期監督は欧州から連れてくるという噂も出ているが、上記に長けた人物であることを期待したい。

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