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高いところから真っすぐに降ってくる音

前代未聞の災禍の下で情報を浴び続けていると不安になったり緊張を強いられたりすることが多く、最近はテレビを消すことが多くなりました。そういうときは音楽を聴きながら本や漫画を読んで過ごしています。動画もいい味方ですが、主に音楽を楽しむために使っています。そんなこんな近頃、古い記憶に属する音楽をYouTubeで見つけました。

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モーテン・ローリゼン Morten Lauridsen というアメリカの合唱曲を主に作曲する作曲家のCDを買うつもりで、うっかり同名のドメスティックな知名度しかないデンマークの作曲家のCDを買ってしまったことがありました。しかし、この間違いは結果的に人生の緯糸の一筋になってくれました。ラウリツ・ラウリツェン Laurids Lauridsen という前世紀前半の人のものです。洒落みたいな名前ですね。デンマークにはこういう洒落みたいな名前の人は結構いると思います。Morten Mortensen とか、Jacob Jacobsenとか。主に教会音楽の分野で活躍した方のようです。おそらくオルガニストでもあったと思います。デンマークの教会音楽はスコアが手に入りにくいらしいのですが、音楽を教会が抱え込んでいるケースが多いからだという話も聞きました。盲目でもあり(オルガニストには多いと思います)、生涯を教会に密着して過ごした作曲家ではなかったのではないかと思います。

YouTubeで出会ったのは、デンマークの讃美歌のバリエーションでおそらく礼拝の最後に弾かれるものではないかと思います。先入観も手伝っているのだとは思いますが、たとえば、フランスの教会音楽に感じる深み、というよりは、高いところから降ってくるような清澄な響きです。

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それから何年かしてデンマークに行ったとき、有名なグルントヴィークス教会の清澄そのもののような空間に身を置いて、静寂の中で密かに鳴らしたのはこの音楽でした。



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