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OSSのゆく道:Faker.jsの顛末

今日は技術支援のためチュートリアル的なものを作っていたところ、そこで使っていたfaker.jsというライブラリに異変が。faker.jsの機能でTwitterで表示するようなアバター画像のURLをランダムに生成するのだが、その画像がすべて403でアクセスできない。

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プロトタイピングにおいてfaker.jsはとても便利だったので、このままでは色々困っちゃうなーと思って調べてみた所、オープンソースの意義について考えさせる事実が見えてきた。

faker.jsの作者を襲った悲劇

他に同じ問題に遭遇している人がいないか、Twitterでfaker.jsについて調べた所、以下のツイートを見つけた。

なんと、作者のmarak氏が住むアパートメントが火事になり、ほぼすべてを失ってしまったらしい。paypalやBitcoinを通しての寄付を募っていた。これが2020年10月26日の出来事である。

OSSへの問いかけ

ただ、これだけではfaker.jsのavatarが使えない理由にはならない。やはりこういうことは本家のリポジトリを見たほうが良いと思い、Issueを調べてみると、またもや考えさせるIssueが作者のmarak氏によりあげられていた。

"No more free work from Marak - Pay Me or Fork This"、訳すと、「Marakによる無料の仕事は終わり、払うかフォークするかしてくれ」というタイトルを付けられたIssueだ。内容はストライキをするロボットの画像とともに、以下の文が添えられていた(カッコ内は私の意訳)。

Respectfully, I am no longer going to support Fortune 500s ( and other smaller sized companies ) with my free work.(謹んで申し上げるが、私の無償の働きでフォーチュン500s(そしてその他の中小企業)を応援するつもりはもうない。)

There isn't much else to say. (それ以上言うことはない。)

Take this as an opportunity to send me a six figure yearly contract or fork the project and have someone else work on it. (これを期に私に6桁ドルの年間契約を送ってくるか、このプロジェクトをフォークして他の誰かに作業するよう頼んでくれ。)

これが2020年11月9日のことだ。火事から約2週間後のことである。すべてを失ってしまっておそらく今もなお生活に困窮しているMarak氏。Weeklyで160万DLを超える人気ライブラリであるfaker.jsは、彼の生活の足しに一切なっていないのだと推測する。そしてまだこれでもavatarが使えない理由にはならないのだが、よく調べるとこれの余波かは分からないが画像を提供しているサービスuifaces.comがコストに耐えきれないためサービスを停止すると宣言していた。

OSSはそのほとんどが誰でも無料で利用でき、誰かの成果を無料で享受できる。その仕組みは素晴らしいものと礼賛される一方だけど、本当に困った時に助けてくれない仕組みだと持続可能な仕組みとはいえないのかもしれない。今回はMarak氏はフォークして使ってくれという選択肢を残しているが、それは彼の優しさでしか無い。

私は特定の立場を取れるほど見識があるわけではないが、同じスレッド内でFacebookの庇護(給与の支払いも含む)にあるJestメンバーは給与もあるのにスポンサーも多く支援者も多いことが批判されていた。JestのWeekly DL数は約990万と、faker.jsの約6倍。だが資金はおそらく雲泥の差があるという事実もある。

GiverとTakerという話はよく聞くが、皆が単なるTakerに終わらないことこそがOSSという文化が生き残る唯一の道だとは思う。

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