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中心の意図の重要性を感じた実体験

戸建てに引っ越したのですが、マンションの時にくらべて営業がくることがとても増えました。学習塾、保険、いろいろありますが先日はとある住宅設備の営業でセールスがきました。もともと興味はあった設備であるのと、営業トークもうまく、後日見積もりをもってきてもらうことになりました。そこでの一連の体験が前回書いた記事の「組織を芯からアジャイルにする、ということ」を思い起こさせるものだったので今回は記事にしていきます。

何に対して最適化されている営業手法?

こういった営業を受けることはそもそもこれまであまり無かったので、整理するためにも初回訪問時にセールスがどのような説明と行動を取ったかをまずまとめてみます。

  1. 「近くで工事を担当する担当会社です、ご挨拶に伺いました」と直接の目的である営業を伝えずにインターホンで説明をする。

  2. 「資料をお見せしたいので玄関のスペースを一部利用させて頂いてよいですか?」と聞く。

  3. 少しでも嫌だなと思ったら、断ってもらっても良いので、と伝える。

  4. 「○○導入して、長期的に使えばトータルの生活費が軽減できて、お客様にとって良くないですか?」と同意以外の選択肢がない問いかけをする。

  5. 次回の日程に夫婦での参加を依頼し、その場で日程を決める。

まず、1は端的にドアを開けさせるためのテクニックとしての方便です。住宅設備の営業と直接伝えると「大丈夫」と断られることが多いからでしょう。2と3もフットインザドアと呼ばれる心理テクニックです。相手に小さい同意を得てからだと、大きな同意、この場合で言えば次回訪問の約束をしやすくなるという次に繋げるためのテクニックです。これらは心理学的には一定の効果があり、実際にうまくいくのでしょう。ですが今振り返れば違和感が強いです。理由を開く前に、続いて訪問当日の大まかな流れを整理します。

  1. 信用たる会社であることを伝える。

  2. 先行きについて不安を煽る。

  3. それに対するソリューションを説明する。

  4. 見積もりを定価を示した後に割引金額を提示する。

  5. 今日この場で決めてもらわない場合、縁がなかったとしてこの価格で受けることはないと伝えてくる。

1〜3は違和感はありません。2についても、実際に未来のリスクの視点をひとつ得られたので不安を煽られようと自分的にはポジティブでした。ただ、4と5の組み合わせは個人的にとてもネガティブな印象になりました。相場もわからない数百万する買い物を「希少性の原理」で判断を鈍らせて契約を取ろうとしているように自分は受け取りました。実際問題、この契約が自分に得かどうなのかセールスの言うこと以外の判断基準がないため、納得いく判断をつけられませんでした。結果、その場でとりあえず契約は結んだものの、相見積もりを取り、価格を比較してかなり高く感じたのでクーリングオフをすることにしました。

何に違和感を感じたのか

セールスの営業手法やトークは洗練されていたと思います。ですが、その技が磨かれていくサイクルの中心にある意図は良いものを提供しようというところにあるのではなく、売上をあげることにあったのではないかと思います。事実、彼は同社で一番売上をあげている社員のところに自ら出向いて教えを受けたと話してくれました。それ自体は素晴らしい努力です。彼はしきりに「僕は社長になりたいんです」と私に伝えてくれました。その前向きな姿勢やそれを声に出していく姿には私も惹かれるものがありました。ただ社長になったその先で何をしたいのか、それが伝わりませんでした。私もその日はそこまで頭が周らず聞くこともできませんでした。

後日、相見積もりを出した別のセールスに話を聞くと、他にベターな製品の選択肢や、設置にあたり保険や周囲の家への影響などもあるので、よく検討したほうが良いという正直な話を聞くことができました。安かろう悪かろうではなく、高くて微妙な選択肢だったのです。営業手法の問題だけではなく、今ある技術の中でベストな提案をしていないことが、実態としてあることに残念な気持ちになりました。

良い回転を作るための問い

回転の中心にある意図と、その回転をつづけた先に待つ未来と。

良い回転を作るには、良い意図が必要で、そのためには上にあげた問いを自分自身や自分が所属している組織で問いかけることです。そうでなくては、売り上げをあげるだけのような今回私が体験した営業の実態を知ってしまえば、その組織に対するイメージというものは当然悪くなります。これの行き過ぎた例が少し前に世間を騒がせことを思い出してほしいのです。

「売上が大事」は行き過ぎると、「客にとってベストな選択肢でなくても、売る」、もっと行き過ぎれば「騙してでも売る」となりかねません。一時的な売り上げはあがるかもしれませんが、昨今のSNSの発展に伴いそういった行動が露呈することが増えました。一度崩れた信用は戻りません。一人のセールスでも会社の代表になるのです。これは自戒でもあります。一人のコンサルタント、アジャイルコーチである私自身も、時に自分の中心にある意図を問い直し、それ通りにサイクルが回せているかを見つめなおし続けます。

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