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SAFeの生みの親が語る「我々が変わらなければならない理由」

こんにちは。@TakahiRoyteです。
2020/02/10にSAFeのSPC資格ホルダー向けイベントがあり、そこでSAFeの生みの親であるDean Leffingwellさんの講演を聞いてきました。イベントのオーガナイザであるScaled Agile Inc.の古場さんの表現ですが「仏陀から仏教を学ぶ」ような素晴らしい機会を通して学んだことを振り返ってみたいと思います(この表現がすごいツボ!笑)。今回の内容はDeanさんの「なぜ我々に変革が必要なのか」という話をベースに自分の解釈や日本の状況を加味していきます。

世界ではデジタル・ディスラプションの最中にある

突然ですがクイズです。世界最大の時計メーカーはどこでしょうか?

セイコー?カシオ?スウォッチ?ロレックス?

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正解は……Appleです!Appleは2017年にApple Watchの収益が49億ドルを超え、前年47億ドルで世界一だったロレックスを抜き去りました。ロレックスは1905年創立した企業です。それに対しApple Watchの初登場は2015年。100年の歴史が時計メーカーとしては2年とベイビー同然のデジタルウォッチに抜き去られてるのです。このようなデジタル・ディスラプション(デジタルによる既存構造の破壊)はあらゆる産業で起きています。

Tesla社の時価総額はいまやFordとGeneral Motorsを合算しても足りません。Facebookはイギリスで銀行業のライセンスを取得していますし、仮想通貨Libraを推進しています。Amazonは米国大手スーパーマケットのWhole Foodsを買収して生鮮食品とオフライン接点を獲得し、ロジスティクスにも幅を広げています。そもそもAmazonはEコマース抜きにしても巨大なクラウド企業ですよね。UberやLiftの登場はタクシー業界だけでなくレンタカー業界にも打撃を与えるレベルで成長しています。

デジタル・ディスラプションは日本にとっても例外ではありません。LINEが登場してから友達との連絡にメールを使っている人はどれぐらいいるでしょうか。世界的に見て先進的であったiモードは昨年新規受付を終了しました。あなたがTSUTAYAで最後にDVDをレンタルしたのはいつですか?

デジタル・ディスラプションの特性は3つあります。1つ目は変化の恐るべきスピード、2つ目は変化がボーダーレスであること、3つ目はすべてがソフトウェア・ドリブンであることです。裏を返すとこの3つの特性はデジタル・ディスラプションそのものに立ち向かうために企業が手に入れなくてはならない特性でもあります。もし、変化への対応が遅く、狭い視野を持ち、ソフトウェア開発への投資を怠る企業がそのままでいるとどうなると思いますか?

これまでのテクノロジー革命を振り返る

今後の変化に向けてどう対応すべきかは歴史を振り返ることで見えてくるパターンがあります。Carlota Perezさんの書籍、Technological Revolutions and Financial Capitalでは、人類におけるテクノロジー革命では順番に導入期、ターニング・ポイント、展開期というフェーズが存在するとしています。導入期では新たなテクノロジーとそれに投資される資本が産業構造そのものを変えるカンブリア爆発のような変革を起こします。ターニング・ポイントでは既存のビジネスが新たなテクノロジーに適応し生存するか、適応できず衰退するかの岐路にたたされます。最後の展開期では新たなテクノロジーをマスターし巨大化した企業が生産資本を投下し、ビジネスの状況が一変していくという流れです(下図参照)。

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我々は今まさしくソフトウェア時代におけるターニング・ポイントに居ます。すでに展開期に向けてGAFAMの様な企業はデジタル世界の支配を始めています。あなたがマーク・ザッカーバーグやジェフ・ベゾスの下で彼らのために働きたいならこの状況を放置していても良いでしょう(個人的にサティア・ナデラは就任してからMicrosoftをちょっと好きになれるぐらい変えてくれてるのでありかも?)。放置していたらディスラプションの波で既存企業は間違いなく衰退します。もしあなたがあなたの会社やあるいは自分が関わる会社を守りたかったり、アメリカの巨大企業に対して自国の産業が立ち向かえる力を持ってほしいと願っていたりするなら、変革は必須です。 私はGAFAM嫌いなわけではありませんし、私の生活を豊かにするために必要な会社だと思っています。ですが、その会社がすべてを牛耳ってしまう世界よりも多様な企業が存在する世界の方が楽しいと信じています。なので変革を推めるためにできることをやります。

変革のカギは組織の構造にあります。Deanさんと共にNokiaにおけるアジャイル化に取り組んでいたMik Kerstenさんは書籍"Project to Product"でこう述べています。

問題は企業が変革の必要性に気付いていないことではありません。本当の問題は企業が過去の技術革命から使われ続けている管理方式やインフラストラクチャを現在のビジネスにおいても利用し続けていることです。
-- "Project to Product" Mik Kersten

では具体的にどのような構造が求められているのでしょうか?

変革に立ち向かえる組織の構造

大企業はその巨体を維持するために、ヒエラルキー型構造を持っていることがほとんどです。部門単位に分かれており、安定した実行力のある階層型の組織です。

反面、新たな取り組みはネットワーク型構造の組織から始まります。自己組織的なチームがそれぞれのパフォーマンスを最大限発揮することでイノベーションが生み出せるのです。ベンチャー企業などの若い企業や、あなたが現在所属している会社だって最初はネットワーク型から始まっているはず。

中規模を超えるエンタープライズにおいてはヒエラルキー型とネットワーク型、どちらか片方だけでは立ち行かないでしょう。安定性だけあってもディスラプトされてしまうし、イノベーションの方向ばかり向いていては企業の基盤が揺らぎます。つまり、両方必要なのです。これについては書籍「企業変革力」を執筆しているJohn P. Kotterさんが述べています。

解決策は我々が築いてきたものを捨て最初から始めるのではなく、起業家たちになじみのあ第2のシステムを導入することなのです。つまり、デュアルオペレーティングシステムが必要なのです。
-- John P. Kotter

こういった舵切りが必要なことに気付き、行動に移している企業は国内でも多くあります。東京ガスでは新規事業のための分社化をしていたり、ヤマト運輸ではDXのため300人規模のデジタル専任部門を立てたり、電通では大企業×スタートアップのコラボを推進したりしています。この流れは個人的にも「何が出てくるんだろう!」とワクワクするので波及していけば良いなと思っていますし、私の力でお手伝いできる機会がくればいいなと思っています。

そういった変革を進める一つの選択肢として、Dean Leffingwellさんが考案し、Scaled Agile Inc. (SAI)とそのパートナーとで作り上げてきたScaled Agile Framework® (SAFe®)が存在します。

実証されたスケールするアジャイルなフレームワーク

SAFeはそのキャリアをシステムエンジニアリングに捧げてきたDeanさん(御年70歳!)のアジャイルに関する試みと知見から生まれたフレームワークです。2020年の1月にバージョン5.0が登場するなど、フレームワーク自体も顧客に使われながらフィードバックと時代の変化とともに改善と進化し=を続けています。

SAFeはフィードバックがあることから分かるように、その効果が実証されているフレームワークです。SAIによるとFortune 100企業の70%が大なり小なりSAFeを利用しているとのこと。すごくないですか?そしてそれらの事例から得た一般的な効果は以下の図で示されています。

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長くなってきたのでSAFe®についての詳しい説明は次の記事に書こうと思います。上の図にあるような目覚ましいビジネス結果の向上をどうSAFe®が実現しているのか、フレームワーク自体のビジネスモデルなども説明予定ですので、期待してお待ち下さい。

それでは、良きアジャイルライフを!

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