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#041 力を出したり抜いたり

内燃機関のことを調べていて、ヒットアンドミスエンジンというものを知った。ヒットアンドミス。他の言葉に置き換えると当たったり当たらなかったり、起こったり起こらなかったり。そんな感じ。

エンジンの場合は、爆発したりしなかったり。これは実際にその通りで、シリンダー内で爆発したエネルギーがピストンを押し下げ、クランクを回す。普通はそれがどんどん高まって大きな運動エネルギーになるわけだけど、このエンジンはある程度のところで爆発が止まり、そこからしばらく惰性で回転。で、その力がいよいよ弱くなったら着火し、再び回転が上昇。これを繰り返す。

もちろん昔々のエンジン形式で、機械の加工精度があまりよくなかった時代のものだ。回転を上げず、休み休み動かすことによって耐久性を確保。軽作業の動力源として使われていた。

現代では使い道がないものの、だからこそ愛好家がいるらしい。なんの目的もなく、エンジンに燃料を与えて、ただ回すだけ。その様を愛でるひとたちがいる。

なんか分かる。効率を求めず、低い回転数の中で力を時々出して時々抜いて。咆哮や絶叫に例えられるエキサイティングなエンジンもいいけれど、こういうのどかさもいい。

淡々と。粛々と。飄々と。物事を継続していくために必要なことだと思う。洗濯槽の回転方向が右回りになったり左回りになったり。アリの行列が速くなったり遅くなったり。焚火のゆらぎが大きくなったり小さくなったり。たぶんその感覚に近い。いつまでも眺めていられる心地よさがあるのだと思う。



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