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カンパニュラ 【078/200】

ヤマカワタカヒロです。

2020年6月27日、下北沢LOFTにて「LIVE YELL 2020 〜Meet Asuma & We Love LOFT!!!」を無事に開催することができました。

観客数は限定定員のちょうど10名、途中2回の換気タイムを取り、新型コロナウイルス感染拡大防止の対策に取り組みながらの開催となりました。

◆セットリスト
1. Okaeri to my LIVE
2. Michelle
3. 慰めトレッキング
4. 12月の紫陽花
5. 雨音
6. 鈍色(にびいろ)
7. 鱗 〈秦基博 Cover〉(with Asuma)
8. 繋げ!〈三阪咲 Cover〉(with Asuma)
9. カンパニュラ (with Asuma)
10. Night swimming 〈R.E.M. Cover〉(Piano弾き語り)
11. 応援歌(Piano弾き語り)
12. 走れ
13. ひとつだけ
14. Compass(encore)
15. スターマイン(encore)

ライブハウスでのライブは、昨年末以来、実に半年ぶり。
「新しい生活様式」に合わせたライブは、できないこと、やり方を変えなければいけないこと、気を配らなければならないこと、たくさんありました。
ただ、歌を聴いてくれたお客さんの表情と、ライブをやり切った後の高揚感は、半年前と何も変わりませんでした。いや、ちょっと違う。むしろ、今回のライブでしか味わえなかった達成感が、ありました。
それはきっと、今回が「LIVE YELL」だったから、ということもあります。


「LIVE YELL」とは

LIVE YELLとは.001

「LIVE YELL」は、ヤマカワタカヒロのコンセプトライブの一つで、「ゲストと共演し、歌や音楽で表現することを通じて、がんばっている人にエールを送るライブ」です。
2019年から開始し、今回は2回目の開催となりました。
今回のゲストは、Asumaという16歳の若者で、ギターを練習し、ライブのステージに立ちたい、という内容でした。
Asumaとの出会いは、2019年7月13日、第1回「LIVE YELL」の会場でした。
その日「一緒にやろうよ」と話をし、少し経ってから僕の方から正式にオファーを出しました。
Asumaは「やります」と返事をくれ、そこから9か月間のギターと歌のレッスンが始まりました。


9か月間の努力

当初は、月に一度、スタジオで1回2時間の対面レッスンでした。
ギターの基礎知識から、家での練習メニューを教え、毎月の練習の成果を確認しながら、曲作りを並行して進めていきました。曲の一般的な構成、コードとは、メロディとは、歌詞とは。等々。

「誰のために、どんなライブをつくりたい?」
その問いに対して、彼は当初から明確なビジョンを持っていました。

「家族に対して、感謝の想いを伝えたい」と。

であれば、オリジナルでつくるのは、その想いを詰め込んだ曲にしよう。
コンセプトはすぐに決まりました。
歌詞のイメージを言葉に紡ぎ、整えていきながら、覚えたてのコード進行に合わせて鼻歌で作曲を進めていく。
曲作りの方は、伝えたいことがはっきりしていたこともあり、比較的スムーズに進行しました。

一方、苦戦したのは、ギターの練習でした。
ギターは色々な楽器の中で、音を出すことが比較的難しい部類の楽器です。
それは、片方の手の指で弦を押さえ、もう片方の手の指で弦を弾く、という、別々の動作を同時に成立させないといけない楽器構造に起因しています。

ここで一つ、引用したい投稿があります。
今回の「LIVE YELL 2020」のゲストであるAsumaのお母様が「LIVE YELL 2020」の開催決定を受けて、6/21に投稿されたものです。
Asuma本人&お母様のご承諾を得て、以下、転載します。
(一部、省略しています)

世界が変わって良かったこと。
Asumaがギターを弾けるようになったこと。
息子のAsuma(高2)には、生まれつき左半身マヒの障害があります。
靴ひもが結べない、食器がうまく持てない、体のバランスを取りにくい等の不自由があります。
その彼が、ギターをはじめるとは思っていませんでした。
なぜなら、いくら練習しても、健常者と同じように弾けるようにはならないからです。
昨年、Asumaは、ヤマカワタカヒロさんのライブに行って、ヤマカワさんやバンドメンバーの皆さんと知り合いました。
そこから、ヤマカワさんのサポートを受けて、ギターを練習する日々がはじまりました。
「ヤマカワタカヒロ LIVE YELL 2020 ~Meet Asuma & We Love LOFT!!!~」
に出演するためです。
世界が変わって、このライブに出演するかどうかを家族で話し合ったとき、学生時代にベースを弾いていたAsuma父は言いました。
「何の実績もない高校生が、LOFTに出られるってすごいことなんだよ。」
「ヤマカワタカヒロ LIVE YELL 2020」の会場である下北沢LOFTは、本日6/21から、営業を再開しました。
本ライブにおける収益の全額は、運転資金応援の目的で、下北沢LOFTに寄付されるそうです。
私はAsumaの親として、また、ヤマカワさんとAsumaの1ファンとして、このライブの開催を応援しようと決めました。
足を運んでくださるお客様、下北沢LOFTのスタッフの皆さん、出演者の皆さんにとって心に残る、未来に繋がるライブになりますよう、祈っています。


彼の身体的特性上、ギターで弾き語りをできるようになることは、簡単ではありません。
レッスンを始めた当初は、どのように練習をするべきか、そこから一緒に考えていきました。

左手の指で押弦が難しいため、必然的に彼は左利き用のギターを用意しており、右手の指で押弦し、左手の親指にサムピックを装着しての演奏スタイルを選びました。

サムピックというのは、その名の通り親指に装着するタイプのピックですが、通常、親指・人差し指・中指・薬指など、複数の指を活用して、単音ずつ弦を弾くスタイルの演奏で、低音弦をしっかり音を出すために使われるものです。よくあるジャカジャカかき鳴らすストロークスタイルの演奏には不向きで、特に、アップピッキングと呼ばれる、ピックを下から上に戻しながら弦を弾く動作は、とても難しい。
僕自身、サムピックでどうやったらやりやすいかを何度も試しましたが、手首のスナップをうまく活用しにくい状況で、弾き語りによく使われるジャカジャカストロークを安定して身につけることは、極めて難しいと実感しました。
試行錯誤の結果、結局は他に選択肢がなく、手首のスナップが難しいのを肘の動きでカバーするイメージで、彼独自のピッキングスタイルを練習していくことにしました。

普通、ギターの練習は、弦を弾く方ではなく、弦を押さえる方の指が動かないことでの挫折が多いわけですが、彼にとっては、押弦だけでなく、弦を弾く方での難しさを乗り越える必要があったわけです。

毎月の進捗を確認しながら、なかなかきれいに音が出ないことにおそらくストレスを感じていたと思いますが、彼は練習を怠りませんでした。
毎月、きちんと練習をしてきて、その成果を示し、次の宿題を持って帰る。
それを半年ほど続けた後、新型コロナウイルスの感染拡大が起こりました。
注意・警戒から、緊急自体宣言の発令となり、あっという間に外出自粛の世界が訪れました。
対面でのレッスンはできなくなり、6/27のライブ本番も開催できるかどうか、全くの白紙となりました。

それでも彼は練習を止めることなく、僕らのレッスンはスタジオでの月1レッスンから、オンラインでの週1レッスンに増え、この頃から、彼のギターは上達のスピードが上がりました。

対面レッスンと違って、オンラインなので、画面上ですべての身体の動きを確認することは難しく、肘や手首や指がどういう動きをしているのか、細かくは見えなかったけれど、彼の身体は明らかに滑らかな動きをするようになっていきました。

コードを押さえられるようになり、コード進行に合わせて指を移動させることができるようになり、歌詞とコードを覚えたことで前を向いて歌えるようになり、背筋が伸び、発声がよくなり、歌もどんどん上手になっていきました。そこからの上達は、目を見張るものがありました。

僕とは全く違うスタイルでの演奏だから、僕が教えられることはなく、彼が自分の身体と相談しながら、うまく動くやり方を導き出していくプロセスを伴走することに集中しました。


6/19の休業要請全面解除

Asumaが弾き語りを一通りできるようになり、オリジナル曲の歌詞・構成がほぼ完成した頃に、6/27のLIVE YELL本番をどうするか、いよいよ決断しなければならない時期が迫っていました。
毎日、朝夕のニュースを見て、スマホでネットニュースを何度も見て、感染者数の状況、医療現場の状況、休業要請解除の動向を見守ってきました。

6/11、翌日からの東京アラートの解除とともに、6/19からの休業要請全面解除の方向性が示唆されました。
これを受けて、6/27をどうするのか、関係者との相談を行い、まず僕は、ヤマカワタカヒロとして、下北沢LOFTの営業再開応援の目的でライブを行うことを決めました。そして、Asuma本人とご家族との相談をし、Asuma自身が出演を決めたことにより、改めて「LIVE YELL 2020」として開催することが決まりました。
16歳の少年の初ライブをこの状況下で行う、ということは、簡単な決断ではありませんでしたが、本人の強い意思と、ご家族の応援により、前に進むことで、一致しました。

ライブの開催決定を受けて、客席数の大幅削減やライブ中の換気の実施、対象者の把握など、各種ガイドラインに則した対応を盛り込んだライブ企画を練り上げ、告知を行いました。
それでも、やはりこのご時世。絞り込んだ客席数すら埋まるかわからない状況。
家族や職場やいろいろな関係上、応援したいと思っても、いざ現場に行けるかどうかは難しい。
その気持ちは、僕自身もよくわかったし、「安心して来て欲しい」と言えるわけでもない。
僕は僕でやるべきことに集中して、あとは、応援してくれる皆さんの判断にすべてお預けしました。


「LIVE YELL 2020」当日

梅雨空が続く中、6/27は晴れ。30度を超える真夏日となりました。
僕は朝から調整不足のソロ弾き語りの練習を自宅で行い、午後、サポートメンバーとのスタジオ練習に入り、その足で会場リハ入りしました。

セットリストは、2回の換気タイムと、6回のステージ上の配置転換を含む複雑なものとなり、ひとつひとつ丁寧にリハーサルを行う中で、開場は予定時刻より5分遅れました。

開場後、事前予約をしてくれていたお客さんが一人、また一人と集まってくる。

「今からライブをやるんだ」

会場の空気が、半年前に戻っていくのを、身体で感じていました。

開演してからのことは、来週末の7/5オンラインビューイングのネタバレになるので控えます。

ただ、「LIVE YELL 2020」は、開催できて本当によかった。
単純に、そう思います。

Asumaと一緒にステージに立つことができて、本当によかった。

そして、営業再開後の下北沢LOFTの後押しに少しでも貢献できていたら、と、心から思います。


カンパニュラ

「LIVE YELL 2020」でゲストのAsumaと一緒に作ったオリジナル曲のタイトルは「カンパニュラ」です。
「風鈴草」とも呼ばれるカンパニュラは、小さなブルーや紫色の花をたくさんつける可憐な花。
花言葉は「感謝・誠実な愛・思いを告げる」など。

Asumaは家族に向けて、主に、母親に向けて、この曲を書いたのだと語っていました。
僕は彼の想いを踏まえ、詞や曲を整えはしたけれど、メロディも歌詞も、彼の意思の元に生まれた、彼のオリジナル曲です。

歌詞の公開の許諾を得たので、ぜひ、読んでもらえたらうれしいです。
16歳の少年が、誰のために、何のために、この曲を書いたのか。
それを想像しながら、この詞を読んでもらえたら、幸いです。

カンパニュラ歌詞


終わりに


時間が、足りない。

昨日のLIVE YELL、そして、昨日までの9か月にわたるプロジェクトを通じて、もっともっと、伝えたいことがあるはずなのに、うまく言葉にできない。まとまらない。

でも、ライブって、そういうものなんだと思います。

だからこそ、ライブが必要であり、ライブを求めるのだと思います。

今後、僕自身の活動はまだ、白紙です。

少し、落ち着いてから、この後のことを考え、また動きたいと思います。

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最後に一言だけ。

Asuma、ありがとう。
君に会えて、本当によかった。
次は、もっともっと練習して、対バンしよう。
待ってるよ。


noteを読んでくださりありがとうございます。 歌を聴いてくださる皆様のおかげで、ヤマカワタカヒロは歌い続けることができています。 いつも本当にありがとうございます。