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TEAM SHACHI という今一番熱いロックバンド 【112/200】

とても不思議だ。

TEAM SHACHI というロックバンドにもっとスポットライトが当たってもおかしくない。

書き出しから語弊があるので補足しておく。

TEAM SHACHI はロックバンドではなくアイドルだ。
でも、TEAM SHACHI はロックバンドなんだと、今回は書きたい。

2/20の豊洲PIT公演に参加して感じたこと、確信したこと、そして、多くの人に知って欲しいことを、今回は書く。


■うっかりデビューしたローカルアイドル

「ももクロの妹グループ」の一つとして、名古屋を拠点に結成された「チームしゃちほこ」。
ももクロバブルに乗ってうっかりデビューして、すぐに日本武道館公演を実現した。

僕が「チームしゃちほこ」にハマったのは、ロックバンドみたいだと感じたから。

もともとアイドルにまったく興味がなかった僕。震災後の2011年に、ももクロに落ちたものの、いわゆる「ももクロしか」であり、他のアイドルグループには引き続き興味がなかった。
次々に立ち上がった妹グループについても、応援はするけど、ももクロのようにハマることはなかった。
ただ、一組だけ、「チームしゃちほこ」だけが気になった。

「ももクロらしさ」を最も受け継いでいて、ももクロよりもロックでパンクな感じがしたからだ。

「らしさ」を受け継ぐのは短期的には成果が出るが、中期的には二番煎じ的な逆効果を生む。
でも、僕にはそうはならなかった。

ももクロはもともとアイドル戦国時代を勝ち抜いていく戦闘的なグループだった。
戦うフィールドも、アイドルシーンだけでなく、ロックバンドと対バンしたり、メタルのフェスに出演したり、常に攻める姿勢を持ち、音楽性もロックの要素を多く取り入れていた。
あっという間にスターダムを駆け上がり、2014年の国立競技場LIVEで百田夏菜子が「笑顔の天下」を宣言したときに、ももクロが戦う相手はもういなくなった。「大人がつくる壁」はもう存在しなくなり、トップを取った者として、広く世の中に笑顔と歌声を届ける使命と責任を背負う存在となった。
そこからのももクロも相変わらず好きだし、この先もずっと好きだろうと思う。
ただ、あの頃のももクロが持っていた魂というか、野心的なアティテュードみたいなものに惹かれていたのは事実であり、その成就の喜びと「笑顔の天下」への強い共感とは別に、渇望感とか夢に向かう強い意志とか、そういうロック的なものをこれから僕はどうしたらいいのか、寂しい気持ちを感じていたのだと思う。まるで、大好きだったロックバンドが解散してしまったかのように。

そしてそれを「チームしゃちほこ」が補って余りある存在になっていく。


■失速と改名と再出発

チームしゃちほこは、攻めるグループだった。
楽曲もアップテンポでアゲ系のものが多く、ライブパフォーマンスも観客を煽り、全力で拳をあげて叫ぶことができた。
不器用で、正直で、素直なグループだと感じた。
ステージ上で弱音を吐いて涙を見せるメンバーもいたし、それを見て他のメンバーがプロアイドルとして対応することもなく、ステージの上でもまるで部活の仲間のように、声を掛け合いながら活動していた。
プロ意識を持ちながら、プロ意識を感じさせない自然体。それはとても絶妙なバランスが必要だけれど、チームしゃちほこはそれをうまく体現していたと思う。

失うものがない子たちが、チームで目標に向かってがむしゃらにがんばる、学生チームスポーツや若手ロックバンドのような純粋さが魅力だった。

2016年のスターダストアイドルグループのフェスでパフォーマンスのバトルロイヤルが行われた。構図的には抜きん出た1強であるももクロに対して妹グループが爪痕を残せるか、というイベントだった。
全体的なマーケティング観点で見れば、モノノフ(ももクロファン)から妹グループへ兼任ファンが増えるとよい、というところだろうけれど、真剣勝負のコンセプトで行けば、人気・実力ともにももクロに勝てるグループはなく、結局ももクロ一人勝ちの予定調和が見えていた。
が、このイベントでももクロに唯一黒星をつけたのが、チームしゃちほこだった。
看板曲で「ももクロなんかに負けちゃいられない」と歌詞を変えて闘志を前面に出したパフォーマンスに、会場ファンの“判官贔屓”的な応援も獲得して、ももクロを上回った。
最終ラウンドでの再戦でももクロに敗退して優勝を逃したものの、イベント全体的に見ると予定調和を崩して波乱を起こし、最終決戦まで会場にドキドキ感をもたらしたしゃちほこは、明らかにこのフェスのMVPだった。

思えばこのイベントが、チームしゃちほことしてのピークだったのかもしれない。
2016年、幕張メッセ、日本武道館、横浜アリーナ、日本ガイシホールと大規模な会場を回る、勝負をかけた5公演は、興行的には惨敗だった。
音楽シーンの変化、ブームが下火になる流れの中、体調不良によるメンバーの卒業も重なってグループの勢いは急激に失速した。
その後、マネジメント体制の変更、グループで最も歌唱力のあるメンバーの卒業も発表され、チームしゃちほこは岐路に立たされた。

解散か継続かの選択肢を目の前にして、残されたメンバー4人と新マネジメントチームは「TEAM SHACHI」(読みはシャチ)への改名し、明るく元気なアイドルグループから、ブラスを加えたラウドでポップなガールズボーカルグループとして音楽の方向性を定めて再出発することを決めた。
新たに6人のブラスセクションのサポートメンバー「ブラス民」を加え、同時にファンの名前を「タフ民」、運営スタッフを「スタッフ民」と名づけた。
僕はこの「民」の名づけが、とても重要な発明だったと思う。


■「民」の発明と「TEAM」の概念

アリーナやホールで活躍していたチームしゃちほこは、観客動員数の桁を落としてライブハウスを中心に活動するTEAM SHACHIとなった。

人気だけの面で見れば、明らかに“落ち目”であり、全員20代となり年齢的にもアイドルグループとしての再起は厳しい状況にあった。

この状況で、”ラウドでポップでブラス"と音楽性を定めたことは、個人的には大賛成であり、実際、TEAM SHACHIになってからの方が、ライブのクオリティも満足度も高まった。

何せ僕はアイドルとしてよりも、ロックバンドとしてのシャチに魅力を感じてきたファンであり、TEAM SHACHIは僕が求める“胸を熱くさせてくれるロックバンド"そのものになった。

音楽面のプロデューサーにROCK'A'TRENCH/SKA SKA CLUBの山森大輔を迎え、ラウドでポップな骨太サウンドを軸に据えた。
前述のブラス民のホーンセクションは楽曲アレンジだけでなく、ステージパフォーマンスにも参加し、メンバーとともにダンスしながらブラスの生音を演奏に加える、というもの。これは本当に驚いた。

さらにTEAM SHACHIは攻める。

僕ら世代にはたまらないBEAT CRUSADERSのヒダカトオルからの楽曲提供に加え、ベーシストにMIYA、ドラムにTOTALFATのBuntaを迎えた「バンド民」とのバンド編成で夏フェスに次々に出演した。


音楽プロデューサー本間昭光&ポルノグラフィティの新藤晴一のタッグによる楽曲「Rocket Queen feat. MCU」では、KICK THE CAN CREWのMCUが「ラップ民」として楽曲制作だけでなくステージパフォーマンスにも参加した。


ちなみにファミコン好きのMCUとのコラボということもあり、ロックマンとTEAM SHACHIのコラボゲームまでつくってしまうスタッフ民の頭のおかしさ(褒めてる)は最高すぎる。

コロナ禍の逆境にへこたれず、在宅配信コンテンツや、クラウドファウンディングでファンを巻き込んだ無観客無料配信ライブ、廃校を活用したライブとエンタメ映像を融合したコンテンツ配信企画、謎解きイベントコラボなど、次々に打てる手を打ち出していくことができたのは、一度「底」を見たメンバーの地力と、様々な「民」たちとの協力によってつくりあげてきた「TEAM」の総合力の賜物だろう。


改めて、「民」の発明は素晴らしい。
ガンダムでいうコアファイターであるメンバー4人に、ブラス隊もバンドもラップMCも、ファンも運営スタッフもすべて「TEAM」になる。あらゆる「民」が加わることによって「TEAM SHACHI」は成立する。
「チーム」を読まない「TEAM SHACHI(シャチ)」はメンバー4人を指し、「チーム」まで含んで読む「TEAM SHACHI (チームシャチ)」はすべての「民」を含んだビッグバンド、コミュニティそのものを指す。

つまり、これからさらに新しい「民」が加わることで、「TEAM SHACHI」は変幻自在にその姿を変え、価値を拡大していくことができるのだ。
そのポテンシャルをもたらしているのは、「民」の発明に他ならない。


■豊洲PITで観た、今一番熱いロックバンド

音楽の話に戻る。

最新の楽曲は、海外トラックメイカーのサウンドを盛り込み、最新のビートサウンドとTEAM SHACHIらしさを融合した作品となっている。
もともとチームしゃちほこの頃からヘンテコ楽曲をシングルに選ぶなど癖のある音楽性のグループだったが、TEAM SHACHIになってから、それらすべてが融合し、結実してきた感がある。


ここまでの遍歴を見ると、初期のももクロにつながるコミカルなアイドルポップから、王道J-POP、ロック、ラウドロック、スカパンクなどを巻き込みつつ、EDMや現在グローバルチャートの主流となっているヒップホップなどビート中心のサウンドまで融合して、”This is TEAM SHACHI"といえる音楽性を実現したと言える。

一つのライブで、一つのグループなのに、ロックフェスを見ているかのような音楽の振れ幅と、統一した世界観の高度な融合。

2/20の豊洲PITのワンマンライブは、それをまざまざと感じさせてくれた。

万全のコロナ対策のためにライブハウスでも指定席仕様で1席ずつ空き席をつくり観客同士の距離を取り、座席列ごとの規制入場・規制退場、ステージセットもシンプルで演者はメンバー4人とバンド民3人。ブラス民は一部映像のみでの参加。観客は当然マスク着用で発声禁止。
今できる最大の構成だが、TEAM SHACHIのフルパワーから見たらまだ5割程度のスペックだろう。

それでも、すごい熱量のライブだった。

2部制で行われ、両部ともほぼ同じセットリスト、ライブ構成だったにも関わらず、2回見ても「見切れなかった心残り」を感じさせるほど、観たい要素に溢れていた。

ライブの詳細は信頼のナタリー民にお任せする。


今回のバンド民は、Tatsuya(Dr / Crossfaith)、MIYA(B)、 芳賀義彦(G)の構成。
これまでギターが最も多くのミュージシャンが参加しており、いずれもそれぞれの個性がTEAM SHACHIの楽曲の魅力を彩ってきた。
今回の芳賀義彦のギターも最高だった。
複数のギターを持ち替えながら、エレキギターでラウドサウンドを、アコースティックギターでポップサウンドを、自由自在に奏でる。
個人的には「かなた」のアコースティックギターと、「ピザです!」のレスポール・ゴールドトップの唸るギターソロがたまらなかった。

そしてリズム隊は安定のMIYAとシャチZEROに続いてのTatsuyaのコンビ。もう、最高すぎる。
女性ボーカルだからこそ、バンド全体としては低音が弱くなるわけで、この2人のリズム隊がラウドな低音を恐ろしいほどの安定感とグルーヴで支えることで、TEAM SHACHIのサウンドは驚くほどに進化を遂げた。

TEAM SHACHIは、女性ボーカル4人体制のロックバンドなのだ。

ライブの序盤、メンバーがフロントでパフォーマンスする時は、メンバーのアイドルとしてのビジュアルの美しさに目を惹かれる。
次のセクションでは、セットの階段をうまく活用してメンバーが踊らずに歌を聴かせる。アコースティックギターが引っ張るサウンドメイクがそれを引き立てる。
さらに次にメンバーがステージセットの上段に移ると、ステージは上にメンバー4人、下にバンド3人の視界となり、一気に観たい情報量が増える。
バンドメンバーの演奏が何しろかっこいい。
ロックバンド好きの自分としては、どうしてもバンドメンバーを観てしまう。メンバーだって観たいのに。
クライマックスを迎える後半はもう、説明のしようがないほど、観たいものだらけのステージだった。

5割程度のスペックでこれである。

これに、ブラス民の生音とダンス、そしてMCUのラップが加わっていたら、どんなことになっていたのか。
そしてさらに、ステージを彩るミュージシャン民は増やすことができる。

さらにさらに言えば、客席の隙間が埋まり、ステージを飲み込まんばかりのタフ民のコールが加わったらどうなるのか。

これだけ熱量の高いライブをやってのけて、まだ5割程度なのだ。

まだまだポテンシャルがあることがわかっていて、ライブに行けば必ず期待を軽く超える熱量のステージを魅せてくれる。

メンバーの秋本帆華がMCでこう言った。

「今が、一番楽しい」

僕も、まったく同じことを思っていた。

TEAM SHACHI は、今が一番熱い。


■日本武道館への試金石


本当に不思議だ。

TEAM SHACHI というロックバンドにどうしてもっと、スポットライトが当たらないのか。

僕と同じように、ロックミュージックが好きで、生活の中にロックが必要な人はたくさんいると思う。

その人たちに、TEAM SHACHI というロックバンドのライブを観てほしい。
いや、観るというより、TEAM SHACHI というロックバンドのメンバーになってほしい。
「タフ民」はファンでありつつ、ライブの重要なパートであるコールを担当するバンドメンバーでもあるのだ。
タフ民のコールは、アイドルに対する声援というより、ロックバンドとのコール&レスポンスなのだ。
「タフ民」のコールなくして、TEAM SHACHI の演奏は完成しない。

再ブレイクを果たして有名になってから後悔しても遅い。

TEAM SHACHI は今が一番熱いからだ。


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2021年10月24日、パシフィコ横浜。

TEAM SHACHI の次の重要な勝負のライブ。

ここで成功すれば、大きな目標である、TEAM SHACHI としての日本武道館が見える。

失敗すれば、どうなるかわからない。

「笑顔の天下」を一緒に実現するアイドルグループであり、夢に向かってひた走る今一番熱いロックバンドの、勝負をかけた真剣勝負のステージ。

4人のメンバーと、6人のブラス民と、3人+αのバンド民と、最強百獣ラップ民のMCUと、そして4,000人のタフ民のフルバンドで、パシフィコ横浜でラウドポップをぶちかます。

そんな夢のステージに向かって、今日も明日も、タフに生きようと思う。

noteを読んでくださりありがとうございます。 歌を聴いてくださる皆様のおかげで、ヤマカワタカヒロは歌い続けることができています。 いつも本当にありがとうございます。