プレゼンオバケ👻のその実力やいかに
友人や仲間たちが僕のプレゼンを聞いてくれることがあると、割と「話すの上手いねえ」とか言われがちなんです。で、何度も言ってるんですが、僕は基本コミュ障で人見知り極まるド陰キャで、こういうプレゼンの能力というのは後天的なもの、特に教員をずっとやってることで培われたものなんで、得意とか才能とかは思ったことないわけです。とはいえ、今回「プレゼンオバケ」という、大変名誉ある二つ名をいただいたので
CP+のタムロンブースで話した内容を、スライドと台本そのまま転載してみようかなと。タムロンさんから許可もいただきました。てことで、ここからは当日の僕の声とイントネーションで再生しながらぜひ読んでください。声の参考は、この方が撮ってくださってたこの感じで。
いつかTwitterでも書いたんですが、かなりライブっぽい感じで話しているのは、この台本まできっちり作り込んでるからっすわ。前もちょっとTwitterで書いたけど、
ライブ感を出すためには、実はきっちり作っておかないと破綻するんすな。で、以下からの台本は38分で終了する計算で作ってました。実際には両日とも40分ギリギリで終わったんだけど、押すことが予想されるので38分程度を目処に作ってます。で、台本には5分毎のタイムキーパーを入れてあって、それに合わせてトークを回していきます。
というわけで、ギッチギチに作ってるけど、でも内容はライブっぽくなってるはず。それはぜひ読んでくださいな!
てことでCP+2023タムロンブース、番外編始まり始まりー。
【タイトル】「ハンバーガーから鯨まで」あるいは「未来のレンズの新しさの方向性」
はい、というわけでTAMRONブースのトップバッターを努めさせていただきます、別所です。知ってくださってる方もそうでない方も、どうぞどうぞ、40分ほどお付き合いくださいませ。絶対損はさせません、だって今から40分のトークを聴き終わったあと、みなさんの「レンズを見る目」が変わるからです。
そしてその目で、今日から始まるCP+の新製品群をぜひ見てってください。そしたら、みなさんタムロンがこのCP+に持ってきてるレンズ群が、2023年以降のレンズ動向を先導していることがわかります。これ、誇張じゃないです。「レンズを見る目」が少し変わることは確かです。
てことで、タイトル見てみましょう。ハンバーガーから鯨まで。なんだハンバーガーって?って思いました。それはね、これが理由。タムロンさんのトップページ。
タムロンのトップページにね、ハンバーガー出てるんですわ。これ、僕が小笠原で出発前に急いで食べたお昼ご飯の一枚!この写真、シャレで提出したらこれが50-400のキービジュアルになってるんすよ。これ採用ってわかった時、まじタムロンどうした!?って思いましたよね。
でもね、でもこれ、一瞬ゲラゲラ笑った後、タムロンやるなーって思った。だって僕がこれ撮る前から思ってたことを、多分このキービジュアルを選んだ担当者、あるいはこのプロジェクトを担当していたチームが同じことを思ってくれてたから。それは何か、それはね…答えは….最後に教えましょ、今言ったら、みんなここで帰りますもんな。
まあまずは、ややこしいこと抜きにして、この50-400っていう、バケモンレンズが、いかにバケモンか、僕が撮ってきたベリーナイスな作例で見てもらいましょうよ。新作もカモン!!!
飛行機な。まあこれはな。いろいろあって、僕なぜか飛行機撮らんとあかんのですわ。どの会社も「別所さん飛行機とって」って言ってきはるんですよね。なので見飽きたかもですが、新レンズの性能見るのにここほどいい場所ないんですよ。ガリガリでしょ。ガリッガリ。
はい次、鳥!!僕ね、野生生物に一ミリも興味ないのに撮っちゃった!撮れちゃうの!
また飛行機!でもこれはなかなか撮れんで!!海に飛び込んで撮らんと!
季節モン?もうすぐこういうのがSNSに溢れますな!桜、桜、桜!ピンク過ぎって?サイドマックス?ちゃいます、これは河津桜!なのでピンクでも問題なし。まあでも、あわーいやつ行きます?サイドマックスしたらあかんやつ。これ!
はい、ソメイヨシノー、はい、十石舟、はい京都京都。いっつも京都は「京都どすえ」みたいな顔してますよね。滋賀県人の僕、この水路も琵琶湖の水ですよ。水マジで止めたいですよ、止められんけど。はい、鉄板ネタをかませたんで滋賀県人としての使命を果たせました。僕のトークこれで終わりでもいいです。でもまだ5分くらいなんで、35分続けますね。
はい、また飛行機。結局飛行機頼み、すまん飛行機。これ、山の上から撮るやつ!これは台湾でゲットした一枚っすね
はいさらにもう一枚、台湾から。千と千尋のアレっすね、親父が豚になるところ。ここ。僕も台北で食いすぎて体重5キロ増えました。豚になるのわかる。あれ多分宮崎駿の実感ですよ。台湾行ったら太る。
てことで、鯨!これが今回のタイトルであり、キービジュアルですね。ここまでの写真、ハンバーガーから鯨まで、全部一本のレンズで撮ってきました。そう、50-400。このレンズの未来性が、ハンバーガーとクジラに集約されている。あるいは小笠原諸島と台湾に集約されている、ってのが今日の話の一番ど真ん中のテーマです。
それをここから細かくお話しして、このレンズが今2023年に存在する意味を、今から皆さんにお伝えしたいと思います。ここからようやく本論!じゃ、いきましょ~
【前節】近年のタムロンを今一度、振り返る
本論と言いながらまた前説ですが、そう、今日はまず、久しぶりのオフラインCP+ってことで、この数年の間にタムロンがやってきたことを振り返りたいと思います。それがあると、50-400というレンズの持ってる意味が改めて浮き上がるから。
ちなみにこの写真は超懐かしい。僕がタムロンさんと初めて仕事した時は近年の伝説レンズ28-75/f2.8の初代のレビューを担当したんですが、そのキービジュアルがこれ。渋。なんでこんなあんまり映えない写真選んだんですかって思うんですが、まあでも好きな写真すよ。
そう、んでちょっとこの最初のレビューをちらっと見てみましょう。こんな感じのトップページで、文章の書き出しは、
これ。出だしこれ。僕のタムロンデビューこれ。「無人島に行くとして、一本だけレンズを持っていくならどれ選びますか?」からスタート。俺はアホかと。真面目にやってんのかと。で、よくこの文章通してくれたなって思います。だって仮にも、公式サイトの公式ブログ。完全にノリが宴会やないかと。でもね、大事なのはこの赤線部分です。
この時この文章、当時は煽ってなんぼじゃい!!って思って書いてましたねー。でもね、今振り返ってみると、この時の僕の「煽っていくぜー」っていう感覚、多分皆さんに伝わりづらいと思うんです。ていうか、いったいこの文章の何が「煽り」になるのか。
これね、当時、ちょうど今から4年前っすわ。この頃ね、タムロン以外のフルサイズの大口径レンズって、鈍器かっていうくらい重たかったんですね。レンズで殴ったら人殺せるレベルで重たかった。でもこのタムロンレンズは、フルサイズ大口径標準レンズで重さはなんと550グラムだった。
他の会社のF2.8通しのレンズが大体1キロだった時代に550グラムで出してきた。これが当時は凄まじい衝撃を起こしたんです。だからね、僕、軽さを思いっきり強調したんすよ。こんな感じで。
「小型軽量がもたらす大きなメリット」とかね、「本文中でも書いたことですが、何よりもまず軽さに感銘を受けました」とかね。実はこのレビュー、最初から最後まで、ほぼ「軽い」しかいうてないんですわ。ほんま、よくこんなレビュー通したなと。
でも、それが良かった。だって、この時、4年前は、この軽さこそが革命だったから。そしてその時革命を起こした異端的な軽さは、4年経ってどうなったか。「当たり前」になったんですよね。
もはやタムロン以外の全ての会社も、今やレンズの「軽量化」に躍起になってます。かつてはレンズの軽量化は革命だった。それがタムロンが2019年に業界に提示した偉業でした。「重いレンズってだるくね?」と、殴り込みをかけたわけです。
で、コスパの良さも相まって、爆発的に売れた。売れに売れまくった。その様子を見て他の会社も焦って軽量化に乗り出した。それが2020年頃から始まり、今に至ります。
ところが2023年現在の時点、もはやレンズの軽量化は革命とはいえなくなりました。それどころか
常識なんです。でも忘れてはいけないのは、今では「大正義」とも言える「レンズの軽量化」という常識を作り出したのが、2019年のタムロンだったってことです。それは言葉を変えるとですね、2023年時点で軽さを強調するレンズなんて、もはや周回遅れってことなんです。タムロンが2019年から果敢にチャレンジしてきた大口径レンズの軽量化は、今やもうレンズ業界の常識、当たり前のことになりました。
それはつまり、2019年以降、タムロンという会社は、レンズのトレンドをど真ん中で4年間引っ張ってきたってことも意味しています。2019年では衝撃的な軽さも、今では当たり前。その当たり前をタムロンが作ったんです。
ただ、そのトレンドが今や常識になった2023年以降、これからのレンズはどうなっていくのか、どうなっていくべきなのか。それが今日のテーマです。
で、今の状況をまとめておきます。2023年以降に出てくる全てのレンズって、スペック的には天井近くまできてるんですね。タムロンが先陣を切った軽量化は他社も真似し始めました。さらに、人間に触知できないレベルで解像しているし、人間では追えないほどの被写体をAFで捉えてくれる。そうなるとね、これから出てくるレンズ、ぶっちゃけ「何買っても大丈夫」なんですわ。この会場で売られている全てのレンズ、もうありえないほど高品質です。
こういうのって「コモディティ化」っていうんですよね。
全ての製品が取り替え可能な高品質な製品で溢れかえる状況。レンズだけじゃないっすよ、全てのこの世に存在するものがコモディティになっている、人間も含めて。
だから絶望的なこと言うんですが、レンズの没個性化、無個性化が同時に進んじゃった。どれもこれも、「最適解」みたいなところにほとんどのレンズがたどり着いちゃったわけです。で、そんな状況でまたもや再び「異端」になろうとしているメーカーが一つだけある。お分かりですよね、タムロンです。
ではその「異端性」つまり、他社と異なる際立った個性とはなんなのか。一言で言うと、タムロンのレンズは単に写真を撮るって言うだけではない機能を有しているんです。それは何か。これです、どん。
意味わからんですよね。僕も全く意味わからんのですが、ここからちょっとずつ具体的な話をしつつ、皆さんと一緒にこのテーマを探求していきたい。大学の講義スタイルです。
大学の講義って、先生も割と思いつきで話をしてるんですが、今日はそのスタイルで行きますね。そしてこのトークの最後には、タムロンのレンズが2023年以降の新しいレンズのスタイルを示唆していることを皆さんと一緒に確認したい。ここからようやく本当の本論!
【第一節】単純に画質えぐい、単純にAF速い
はい、まずはここから行きましょ。画質。50-400って、おそらくは高倍率に入る領域のレンズやと思うんですが、ガッチガチに画質いいです。それはね、これ見てもわかりますよね。
MTF曲線!左が50mmで右が400mmの時のレンズの性能表してます。表してるらしいです。詳しいことは僕もよーしらん、文系なんでグラフとか苦手。
まあ、早い話が、この表の中のグラフが上の方に線があればあるほど画質がいいってことっすわ。んでこのレンズ、倍率が8倍もあるズームなのに、50と400のそれぞれで強烈に解像している。
それはやっぱりこういう作例がわかりやすいんですよね。50mmのF8で撮影してます。もちろん手持ち。ちょっと拡大して見ましょか?
いわゆる高周波ってやつですっけ、線が細いところの解像感、エグエグのエグいのお分かりになりますか。
50mmだと参考になりませんか?みなさんやっぱテレ端欲しい勢?そうっすよね、超望遠っちゃー、テレ端ですよね。じゃこんなの行きましょ。はい、どん。鳥さん!
僕ね、生物にあんまり興味ないんですよね。人間も含めて。なのでこの鳥が誰なのかもわからないし、調べる気も起きない。でもそんな僕でも鳥撮っちゃうんですよねー、このレンズ。だって50から400まで一気に伸びちゃうから。
鳥が手すりに止まってて、400mmまで伸びたらね、撮る気がなくても手が勝手に撮りますよね?写真家の本能みたいなもんじゃないっすか、鳥に興味なくても。んでこれっすよ。めっちゃ解像してるんですよ、羽の一本一本まで。え、わからんですか?ほな拡大しましょか。どん。
鳥やば!そこにおるわ、これ。今にも動き出しそう!!っていうくらい、ガッチガチ。このディスプレイ150インチっすよ?その巨大さでも耐えてるでしょ?で、注目は後ろのボケもね。うるさくない。400mmでこの画質を見せてくれるんですよね。どんだけバケモンやねんって話ですよ。お前ほんまは単焦点が中に何本か入ってるやろ?って疑ってます。
で、ちょうど今超望遠なら遠いところ撮りたいって話をしたんですが、超望遠っていうとやっぱり動きものを撮るイメージありますよね。今回まさに50-400の作例撮影を依頼されたときに撮ろうと思ったのがこれでした。はい、どん。鯨。
鯨撮られたことある人います?手をあげてー、はーい。まあいらっしゃらないですよね、僕も狙おうなんてあんま思いませんもん。出るところだいたいわかってて、鯨がでっかいと言っても、海はやっぱ広い!
だからざぱーんと表に現れても、その0.3秒後には海の中に消えちゃってる。今回も撮れるわけねえって思ってたんですが、船乗りさんの勘で見事に鯨の飛び上がるタイミング、ブリーチを捉えることができました。
これが撮れたの、もちろん僕の腕、なんかじゃありません。全くないです、だって僕、さっきも言ったけど野生生物に興味全然ないので、今まで動物撮った経験ないんですね。だから僕の腕や経験のわけがない。
撮れた理由は、船乗りチャッピーさんの長年の勘と、このレンズのクイックなAFのおかげです。チャッピーさんのことはまたちょっと後で話しますね。そう、AFの方。これは最近アップデートも行われて、さらに俊敏になった。そのさらに強化されたAF、試してきました、台湾で。それがこれ、どん!
もうまさに、圧縮効果の作例!400mmって言えばこういうやつですよね。で、これめっちゃAF大事なんです。なんでか。
これ、割とほんとにギリギリなんすよ。この飛行機の頭がフレームの右端に入ってきたのは、12時29分42秒です。そしてこの飛行機のお尻がフレームの左端に出ていったのは、12時29分42秒と記録されています。
そう、Exif上は、この飛行機が画面の中にいた時間は、1秒にも満たない時間なんですね。そのタイミングで、右から飛び込んできた飛行機に合わせられるのがこのレンズのAFなんです。画質と合わせて、何このレンズ?ってなりませんか。リアルでバケモンです。
でもね、今日の最初の方の話を覚えてらっしゃいますかね。いよいよレンズの性能って、どの会社もめちゃくちゃよくなってて差がなくなってきた、みたいな話しましたよね。そう、画質もAFも、よくて当たり前の時代が来ちゃったんですよね。
そうなった時、画質をこの場で強調することの意味、AFの速さを見せる意味って、これまでよりもプライオリティが下がってると思うんです。ゼロじゃないですよ、もちろん大事です。でも相対的には下がっているのは確かです。じゃあ何の話をすべきなのか、レンズに関して。それこそがこれ、
【第二節】50から400、あるいはハンバーガーから鯨まで
はい、今日の本論の中の本論です。50-400、副題は「ハンバーガーから鯨まで」とつけてます。そしてこうして2枚の写真を無造作に並べてみると、じわじわと僕の伝えたいことが皆さんに伝わるんじゃないでしょうか。
そう、これ、この被写体の振れ幅って、これまで見たことありました?高倍率レンズって言っても、例えば24-105とか、あるいは28-200とか、いわゆる「大三元」でカバーする焦点領域を、倍率高めてカバーするような感じのレンズでは、この二つって同時に撮れないと思うんです。
鯨を撮るためには、最低でも300mmくらいはないと寄れないし、逆にハンバーガーを撮るためには50mmが限界です。そう、このレンズが今2023年に問いかけているのは、「レンズの焦点距離の区切りは、写真の撮り手の発想をも区切ってしまう」ということなんです。
僕らはレンズが区切ってくる焦点距離によって、いつの間にか、無意識のうちに「撮れるもの」と「撮れないもの」を区分けしてしまう。それはいわば、想像力の限界をレンズによって握られていると言っても過言ではありません。
でもね、逆の言い方をすると、レンズの焦点距離がこれまでと違う、変な区切り方をされた時、そのレンズの持つ可能性が新しい想像力を生み出す可能性があるということなんです。それはつまり、「新しい時代の表現と写真家を生み出す可能性を作る」ということなんです。
今日の冒頭で、50-400のキービジュアルをハンバーガーにしたタムロンの人、何考えてんのん、みたいな話したじゃないですか。それは多分、こういう問いかけをこのレンズはしたかったんだと思うんです。
今までの超望遠レンズでは、例えば飛行機やF1、スポーツや野生生物や鳥たちを撮ったことでしょう。そういう被写体を、超高画質の超速いAFで素晴らしい作品を、これまでの超望遠レンズは生み出してきたことでしょう。
でもね、おそらくなんですが、超望遠レンズで昼ごはんのハンバーガーが撮られたことは、おそらく、これまで歴史上一回もなかったはずです。少なくとも、メーカーが依頼する項目の中には「超望遠レンズでハンバーガー撮ってください」という案件は、一度もなかった。そしてこれこそが「発想の壁」「表現の壁」なんです。
超望遠レンズは飛行機やら鳥やらスポーツを撮るためのレンズ、というこれまでの予断こそが、表現の可能性自体を制限する壁だったのではないか。だったら、それ以外のモノでも撮れるようにしちゃおう、どん。
広角域を50mm広げたら、何が起こるだろう。そう、僕がハンバーガーを撮ってきました。
何回このハンバーガー見せるんやって話ですよね。特筆するような写真じゃない、だって何気なく撮った僕の昼飯だから。それこそ、まさにこれまで超望遠がカメラについてる時には、思いつきもしなかった行動のはずです。
これまでの超望遠だと、椅子に座ってハンバーガーなんて無理ってそもそも考えちゃうんですよ。数メートルは離れないと撮れないから。それを無意識で思ってしまう、そして可能性を自分から消しちゃう。でもこのレンズは50mmからスタートだし、その上最短撮影距離も短い。椅子に座って、テーブルの上のハンバーガーを撮ることができる。
そしてその本当に何気ない思いつきと行動が、レンズのキービジュアルになる。面白くないですか?いい写真が撮れるとか撮れないとか以上に大事なことがここに詰まってる。
写真家を「これまでのアタリマエ」から解き放ってくれるんです。そしてその代わりに何が生み出されるのか。それは今回の裏テーマと合わせて考えてみたいと思うんです。じゃあ裏タイトル、発表しますね。はい、これ。どん。
例えばさっきお見せした飛行機の写真は台湾で撮ったものだったんですが、他にもこのいかにも千と千尋っぽい九份の夜景も、
山登りの途中で見たこんな光景も台湾で撮ったものです。
異様にでっかいご飯屋さんと飛行機、これ撮るために2回山登りましたよ。
このレンズ持ち歩きながら、いろんなチャンスを捉えられたんですよね。
で、何が言いたいのか。このレンズ、軽いんです。あ、うそ、重たい。もちろん重たいっすよ、超望遠なんで。それは嘘つけない。でもね、これ、一本で50-400までいけるじゃないですか?
となるとね、例えばこれまでだったら70-200と100-400とかで埋めてた領域を、これ一本にしちゃえるわけ。そうなると何が起こるか。総重量が軽くなるんですよな。で、結局軽く感じるようになる。詭弁っぽい、でも詭弁じゃない。リアル。
小笠原という、船で24時間かけないと行けない場所にこれを持って行けたのも、
滞在中ずっとドチャクソ雨が降りまくってた台湾に持って行ったのも、これ一本で撮り切れる部分が想像以上にデカかったから。
ぎり天の川だって撮れちゃうわけっすよ。超望遠で天の川!
つまり50-400ってのは、二つの自由を撮り手にもたらしてくれる。
一つは従来レンズの焦点距離からの解放です。これによって、これまで超望遠で撮ろうと思わなかったセットを一緒に撮っちゃうような、「想像力の自由」が与えられたわけです。
そしてもう一つ、高倍率によってレンズが整理されることで、より機動力を増して各地に超望遠を持っていこうと思わせてくれた。小笠原と台湾をこのレンズだけで僕は撮りきったわけです。そんなことが可能な超望遠ってこれまでありましたか?それが2023年にタムロンが提示するレンズの新しさです。
この新しさはね、大事な大事な出来事を引き起こすんです。なんだと思いますか?
一人の写真家を生み出すんです。
今ここCPプラスの会場にはいない写真家です。その彼、あるいは彼女はまだ目覚めたばかりですが、ある時タムロンのレンズを手にする。
この50-400mmかもしれない、あるいは35-150mmや20-40mmといった、この一年余で出てきた「新しいレンズ」。彼らは特別な意識をすることなくこれらのレンズを選ぶ。CP+のこともあまり知らなくて、フォロワーは20人くらいで、写真友達もいなくて、今頃どっかでレンズを持って一人で駆け回ってるはずです。
その写真家は、35-150を持って野山を駆け巡り、ダイナミックな背景で人物を撮るかも知れない。
あ、これ35-150で撮りました。寄ったポートレートを撮ろうと思って来たのに、風景のダイナミックさに惹かれて、広くここを撮らせてくれた。
あるいは、その「新しい写真家」は20-40mmをもって、動画と写真の垣根を最初から全く意識せずに自分の作品を作るかもしれない。例えばこのあと登壇する市川渚さんがそうであるように。絶対皆さん、このあと見てください。
そこには写真世界の新しい風が吹いているから。僕はこのレンズまだ使ってないので作例ないです。なぎちゃんところから画像キャプチャしてきた。多分許してくれる!
あるいはその写真家は50-400を持って、ハンバーガーから鯨までを、たった1日で撮るフォトグラファーになるかもしれない。何回この写真使うんだって話っすね。
レンズが一人の写真家を生み出す。世界の知らなかった写真家を生み出す。それがタムロンのレンズに見る「これからの新しいレンズ」のありかたなんです。
超望遠なのにハンバーガー撮っちゃったり、小笠原と台湾っていう大事な旅を、それぞれ一本で撮りきれちゃったり。
そうしている間に、自分の頭の中に、知らず知らずの間に出来上がっていた「望遠レンズでは人を撮ろう」とか「広角レンズでは風景を撮ろう」というような固定観念が崩れ去っていきます。
多様なレンズの焦点距離の多様化は、それを持つ写真家の表現自体の多様化を生み出します。タムロンがやっていることは、そういうことなんですね。ほら、なんだかエモいでしょ。
ちょっと気分がえもくなったタイミングで、最後にちょっとだけこの人の話をさせてください。チャッピーさんのこと。
チャッピーさんは鯨撮影の船を操舵してくれた船乗りさん。ちなみに、これも50-400で撮影しました。
今回のこの小笠原での案件撮影、タムロンさん、軽ーくOK出してくれたけど、地上で最も遠い場所の一つっすよ。しかもメインは鯨って言っちゃったから、撮れ高の保証さえない。
そこに満身創痍の僕が行く。当時僕、絶賛最悪の体調でした、人生1くらい。でも撮れちゃったわけです。タムロンさんとのお仕事ってそういう側面あって、クリエイターの背中を押してくれるんですよね。少なくとも僕の担当の人はそうなんすね。
でもそれだけじゃ無理だった。チャッピーさんがいないと撮れなかったんすね。鯨って、最初も言ったけど海デカすぎて、どんだけ鯨大きくても、普通は探し当てられない。この写真にもクジラ映ってるんですが、わかります?
真ん中の小さいやつ、胡麻粒みたいに小さい黒い点がそれです。
大体毎度こんな感じでクジラ出てくるんです。撮れるわけない。だからこの鯨の写真、全部チャッピーさんに撮らせてもらったようなもんなんすんわ。でもそのチャッピーさんが昨年亡くなられました。海の事故だったそうです。
なんでこのCP+でこんなパーソナルな話をしているかというと、今回のこの話、ここで話したことの全部は、一本のレンズが生み出してることだと言うことなんです。あの日、鯨の写真を撮れた瞬間、チャッピーさん、大喜びで僕に言うてくれたんですよ。「別所さん、持ってるねえ!」って。
そんな全てを生み出す写真って、やっぱり良いと思いませんか?そして、そんな機会を、このレンズが与えてくれたんですね。カメラもレンズも確かにスペック大事なんですが、改めてそれは、「外の世界に向けられるもの」であることを実感します。自分と他者の関わり合いが、レンズを通して刻印される。
50から400まで伸びなきゃ、鯨撮ろうなんて思わなかったし、小笠原行かなかった。たらればたらればが繋がって、悲しいことも最高の瞬間も重なって、この一枚がある。その物語の幅全て、それこそがこのレンズの可能性の幅なんです。
レンズの説明の時言いましたよね、これからのレンズは、写真家の意識と行動を変えてくれるって。ほらね、僕の行動を変えたでしょこのレンズ。それが一人の写真家をまたちょっと成長させてくれた。焦点距離の拡大分だけ、写真家を成長させてくれる。
僕だけじゃないんです。最初の方で自己紹介しましたっけ、僕、大学で授業やってるんです。関西大学ってとこです。そこでタムロンとコラボしたんですね。学生たちは授業くる時点ではカメラ触ったことのない素人たち。その彼らに好きなタムロンレンズを貸し出しました。彼らが半月でどんな写真撮るかというと、
これとか、あるいは、、
こんなんです。これ、半年でこうなりました。彼らが初めてタムロンのレンズを手にした時の目の輝きをみなさんにお見せしたいくらいです。大学の24-70mmしか使ったことなかった学生たちが、35-150や20-40を手にして、自分自身の表現を、誇張ではなく数時間で変容させていく。
こちらは今年4年生になったカメラ歴2年の学生の写真、しぶ!!
彼は最初は本当に何が撮りたいのかよくわからない写真撮ってたんですが、タムロンのコラボを経て一気に写真が開花しました。
さらにこちら、
今年、東京カメラ部U-22の10選に選ばれた学生の写真です。
https://nikkor.tokyocameraclub.com/u22contest2022/results/
この学生は一度授業を終えたあとも残って、毎年授業のサポートをしてくれてますが、毎回タムロンのこのコラボにも参加してくれてます。その度ごとに自分の使ったことのないレンズに挑戦して、大きく成長してきました。それが10選へと繋がったんです。
こんなふうに新しい写真家を生み出す力が、タムロンのレンズにはあるんです。彼らの写真がそれを雄弁に語ってくれてます。僕が大学の教員を辞められない理由でもありますね。彼らの成長にこそ、僕自身がいつも教えられる気持ちになるんです。
てことでいい感じにオチがついたので、この辺りで終わりにしようと思います。ご清聴ありがとうございましたー!これ、小笠原のお見送り!
船が本州に向かうとき、送ってくれるんです。これが今日のラストの一枚、いい色出てるでしょ。タムロンらしい青!ではまたー!