見出し画像

子どもは教室でも体を使って学んできた

小学校でのオンライン授業(自宅で授業が受けられるもの)への対応を求めるネットでの記事や声を見ていると、どうやら、小学校段階(特に低学年)での学習がいかに体を使って行われているかということが、そもそも認識されていないように思える。

昔、学部生を小学校(特に「体を使った学び」に力を入れているとかではない)に連れて行ったとき、「小学校の授業ってこんなに体動かすものなんですねー」と驚いていた学生がいたが、そう、いわゆる「教室での授業」に関しても、小学校では、立ち上がって腕全体を使ってひらがなや漢字を宙に空書きしたり、教室前方に集まって先生の話を身を寄せ合って聞いたり、教室の中を動き回っていろいろなものの長さを測ったり、この程度のことはごく普通かつ日常的に行われている。

「幼稚園もオンラインで」みたいな論調が(私が知る限り)出てこないのは、おそらく、人々のなかに、幼稚園=全身を使って周囲とかかわる、小学校以降=机に向かって勉強する、というイメージがあるからだろう。そうした人々もおそらく自身の小学校時代は授業でなんだかんだ体を動かしていたはずなのだが、どうやら、その後の中高などでの授業イメージによって、学校の授業はひたすら席に座って受けるもの、と上書きされてしまっているようだ(中高だってずっと座っていたとは限らないのだが)。そして、だからこそ、「だったら各自で端末に向かって行う学習で十分だよね(なんならそのほうが効率的だよね)」という思い込みが出てくる。

けれども、実際には、少なくとも小学校では、「教室での授業」であっても子どもたちはかなりの程度、体を動かしながら学んでいるし、それは必要なものでもある(興味があれば田中耕治編『戦後日本教育方法論史(上)』所収の拙稿「学習の身体性」を)。
ベテランの小学校の先生方が、オンライン授業の場合でも、自宅にいる子どもたちに、「先生の動きの真似をしてみよう」とか「窓を開けて外を見てごらん」とか呼びかけて、なんとか全身を使った活動を組み込まれようとされるのは、そのためだ。それでも、当然のことながら、別々の空間で個々が端末に向き合う状況では、なしえないことがある

オンライン授業をどのように活用するかという議論は必要だが、上記の点を認識しないまま、個々が端末に向かって操作をする学習で教室での学習を置き換えられるかのように考えるのは、あまりに安易かつ危険だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?