ごてやん

 稲盛和夫著「ごてやん 私を支えた母の教え」を読みました。先日読んだ秋山利輝著「人生を輝かせる『親孝行』の心得」を読んで、本書が思い出され再読することにしました。著者は京セラ・KDDIの創業者で破綻した日本航空の再建も果たした「経営の神様」と称される方です。残念ながら先般ご逝去されました。

 タイトルの「ごてやん」とは鹿児島の言葉で、「ごてる」が「ごねる」の意味、素直に言うことを聞かず、わがままを言って相手を困らせる子どものことを言うのだそうです。小学校に上がるまでの著者がまさにこの「ごてやん」だったとありましたが、読み進めていくと小学校に上がっても大変だったようでした。初日に母親と一緒に登校して、授業が始まると親は皆帰るのですが、著者は母親が帰ってしまうのを泣きながら追いかけたとありました。我らが塾長とは思えないエピソードですが、そんな「ごてやん」ぶりに手を焼きながらも、愛情たっぷりに育てた母親、そして父親、そして奥様への感謝のエピソードがたっぷりと書かれています。

 「父も母も、贅沢を望まず、必要なもの以外は持とうとしない人たちだった。寝る間を惜しんで家族のために働き、周りの人たちに非常に親切にしていた。」とありましたが、こうした姿勢がしっかりと稲盛塾長に受け継がれているのでしょう。お母様が平成4年に亡くなられ、塾長は多忙を極め海外にいらっしゃったそうで、臨終の場に立ち会うことができなかったそうです。そして、「もしも今、母が生きていたら―。」と想像をしていましたが、「不思議と私からは特に話したいことはない。ただ、田舎の家のちゃぶ台の前に座り、母が作ってくれる美味しい味噌汁や魚の干物を食べさせてもらえたら幸せだ。」とありました。本当に質素で無欲な方です。

 「最近、もしかすると自分が今、『お母さん』と言ったのは、妻のことだったかもしれないと思うときがある。」とありました。「私たち夫婦はこれという会話はしない。それでも、家でぐうたら過ごしている私の身のまわりによく気を遣い、着るものから食べるものまで何から何まで面倒見てくれる。」とありました。本書は2015年に発刊されたものですから、当時の稲盛塾長がぐうたらしていたとは思いませんが、2019年に盛和塾を解散され、その後は本当に肩の荷を下ろされて、失礼ながらぐうたら過ごされていらっしゃったのかもしれません。ご逝去されてしまい残念至極ではありますが、晩年を奥様とのんびり過ごされたのではないかと想像すると、盛和塾解散というご決断もとても良いタイミングだったのではないかと思います。

経営という枠にはまらず、人生とは?親とは?本当にたくさんのことを教えて頂きました。稲盛塾長、本当にありがとうございました。衷心よりご冥福をお祈りいたします。

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