モサド
小谷賢著「モサド 暗躍と抗争の70年史」を読みました。著者は歴史学者、国際政治学者でインテリジェンスに関わる著作が多数あります。昨今のイスラエル・パレスチナ情勢の発端はハマスの攻撃でしたが、モサドがハマスの攻撃を察知できなかったのかなんて言うのが気になっていたものの、そもそもモサドについても良く知らないので手に取りました。
モサドはイスラエルの諜報機関で、アメリカで言うところのCIA、イギリスで言うところのMI6という解釈でよさそうです。日本で言うなら公安調査庁なのかと思いましたが、イスラエルにはこのような諜報機関がモサドのほかにアマン、シャバク、ナティーフ、外務省政治分析センター、警察公安部と6つもあるのだそうです。本書ではナティーフ、外務省政治分析センター、警察公安部についてはそれほど言及していませんでしたが、モサドとアマンについては度々縄張り争いのようなことが繰り広げられているようでした。
モサドの前身は、第一次世界大戦時に中東でイギリス軍を支えるために結成された情報組織と、1929年に設置されたパレスチナのユダヤ機関政治局情報部で、これらの情報機関はパレスチナにユダヤ国家を創設するために立ちあげられたとのことでした。そこからイスラエルが建国されモサドと名称が与えられるのですが、これは「情報・特務工作機関」を意味する「ハ-モサッド・レ-モディイン・ウ-レ-タフキディームー・メユハディーム」の中の「機関」を意味する「モサッド」に由来するそうです。
初期のモサドの功績として、ナチスのアイヒマンを捕獲するというミッションの成功が有名らしいのですが、それについても触れられていました。一方で、ミッションの失敗事例も多くあり、対象を間違えて暗殺してしまったなんて言うものもありました。意外とおっちょこちょいです。また、偽造パスポートで世界五か国から別々にミッションのメンバーが暗殺対象者のいる国に入国し、暗殺を見事に成功させたものの、その後、街中の監視カメラに映りまくってバレてしまい、ミッションを実施した国だけでなく、偽造パスポートを使用した五か国からも非難されるなんて言う、なんとも情けない事態もあったようです。そんな感じですから、ハマスの攻撃を見抜けなかったなんて言うことも無い話ではないのかもしれません。
中東近辺の方々のお名前が非常に読みづらかったです。「マフムード・アフマディネジャード」、「フムード・アル=マプフーフ」とかもう覚えられないし。そうした中で「ダヤン」なんて言う方が出てきたら、もう中日のダヤン・ビシエドが出て来てしまってなかなか集中できませんでした。
また、「射殺」、「暗殺」なんて言う言葉が出てくるのは予想できましたが、それに交じって時々「爆殺」なんていう言葉が登場するのも嫌な感じでした。日本は平和でいいな。
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