アメリカ大統領選完全ガイドブック


 西森マリー著「アメリカ大統領選完全ガイドブックーこれさえあれば100倍楽しく観戦できる!―」を読みました。著者はオランダ人の父と日本人の母から生まれたイギリス出身の翻訳家、映画評論家、ジャーナリストです。2020年のアメリカ大統領選挙の時に手に取ったのですが、読まず、ここで中間選挙が話題に上がってきたのでようやく手に取りました。

 まずは大統領の権限について書かれていました。首相に比べて権限が強いくらいのことしか知らなかったのですが、大統領個人が拒否権を発動することで、議会が通した法案を拒否できるのだそうです。拒否権覆すには両院で2/3以上の票が必要とのことですが、これは大変難しいということでした。大統領令という議会を通さずに下す令もあって、これを止められるのは最高裁と大統領、両院が阻止案に賛同した場合のみだそうですが、大統領は阻止案に対しても拒否権を発動できるということです。拒否権はワシントン初代大統領以来2015年6月までに2565回発動されており、覆されたのは110回、大統領令については最高裁が覆したのは数回ほどで、事実上止められるのは後任の大統領のみだということでした。そういえばハイデン大統領がトランプ元大統領の大統領令を悉く覆していた記憶があります。

 民主党と共和党については、至極簡単に民主党が大きな政府、共和党が小さな政府と言った解説でした。個人的には共和党の考え方に近いですが、どちらかに偏り過ぎてもよろしいと思えませんので、バランスの問題でしょうね。知らなかったのですが、投票するには有権者登録というものが必要で、それも民主党派、共和党派、無党派という登録ができるようです。「ようです。」というのは、この辺りの知識が前提で書かれており、詳細な説明がなかったため、理解ができなかったのでした。

 中間選挙についても、詳しく言及されていなかったのですが、中間選挙でも大統領選挙でも予備選挙というものがあり、これによって各党の大統領候補者が絞り込まれます。予備選にはプライマリーとコーカスの2種類があり、プライマリーは有権者が投票所に出向き無記名で1票を投じる通常の選挙と同じもの。コーカスは党員集会が行われ、投票者が会場に集まって数時間に渡って議論を戦わせた後に、支持数候補者を明らかにするというもの。どちらの手法もいろいろと問題点もあるようですが、どちらも平均の参加者が低いというところが一番の問題のような気がします。

 候補者が決まると、州ごとに有権者が支持する候補に投票してくれる選挙人団を選出します。選挙人は538人で各州とDCに割り当てられるということです。DCとはワシントンDCのことで正式にはワシントン・コロンビア特別区というのだそうです。そして、いずれの州にも属していないということでした。ワシントン州ってなかったっけ?と思いましたが、ワシントン州は東海岸、ワシントンDCは西海岸よりで全然違う場所でした。各州に割り振られた選挙人は、全員が必ず民主党か共和党のどちらかの党を支持する選挙人で〆られるので、得票数が多くても選挙人が少なくて負けるなんて言うこともあるようです。ちょっとまどろっこしい手法ですが、合衆国建国当時は交通手段は馬だった上に、通信機関も未発達で、合衆国全土で一斉に選挙を行い、票を集計することが不可能だったためにこのような方法になり、現在も続いているということです。

 もう少し選挙の仕組みに深入りしてほしいところでしたが、かつての選挙でのエピソードや、慣例的な話など、楽しく読ませて頂きました。もう一冊くらい、こんな感じ本を読んでみたいと思います。

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